『ブラックシンデレラ』で女優デビュー、『ViVi』専属モデル愛花の“福島魂”
●『ViVi』初表紙も「すごく大きな経験」
ファッション雑誌『ViVi』の専属モデルとして支持を集め、4月に発売された6月号では初のソロ表紙を飾るなど、人気急上昇中のモデル・愛花(えりか)が、ドラマ『ブラックシンデレラ』で演技に初挑戦。「どうなるか分からなかったけれど、飛び込みました!」と語る愛花にインタビューした。
インターネットテレビ「ABEMA(アベマ)」で配信がスタートした同ドラマで愛花が演じるのは、有名美容ブランドのひとり娘として育ち、学園一の美女と謳われる香澄百合。莉子演じる主人公・神谷愛波(まなは)を敵視する難役で、初めてとは思えぬ演技を見せている。
そんな愛花に演技に挑戦して感じたことや、『ViVi』ソロ表紙の喜びに加え、地元が好きという自身に感じる「福島魂」を聞いた。
○■初めての演技に劣等感
――第1話の後半、百合サマの本性が露わになってビックリしました。しかも愛花さんは初演技。ミスコンが盛んな学園のトップに君臨する、意地悪な女子に挑戦したのはすごいなと。
オーディションで決まったのですが、私も「演技は初めてだけれど大丈夫かな」と不安でした。実際、現場ではみなさん演技が上手な方ばかりだし、囲まれて、劣等感がすごかったです。頑張りたい気持ちはあっても、なかなか追いつけないジレンマと、ずっと葛藤してました。
――最初に出されていたコメントでも、「劣等感がある」「悔しい」というお話をされていました。そうした気持ちを素直に口にできるのも素敵だと思います。
自分は喋ってしまうほうです。弱みも人に見せちゃう。ただファンの方が見てくれているInstagramなどではネガティブな方向に持っていきたくないので、言わないようにしています。
もともとネガティブなタイプではないですけど、こうしたインタビューでは、きちんと自分のことをお話しできたらと思っています。
――もともとお芝居に興味は?
すごくあります。知らない世界ってワクワクするし、なんでもやってみたいと思うタイプなので、今回のお話も、どうなるか分からないけれど、やってみたいと、飛び込みました。でも「あれ、私、場違いじゃないかな?」と思うこともあって。楽しさも感じましたが、もどかしさもあったので、演技の勉強もしていきたいです。○■好奇心とハングリー精神で突き進んでいきたい
――中盤以降は、百合のバックボーンも見えてきて、彼女自身も変化していくのでは?
そうですね。百合は、美の価値にすごく厳しいお母さんのもとで育ってきて、どこかずれているところがあるんです。それが、愛波と圭吾(神尾楓珠)、空(板垣瑞生)との関係の中で変わっていく。
本当の美しさとは何なのかにも気づいていけるキャラクターだと思います。
――莉子さんとは現場ではどんな感じだったのですか?
年下なので、最初は妹みたいな感じかなと思っていましたが、とても大人な考えを持っていて、学ばせてもらうことが多かったです。この作品をきっかけに、プライベートでの交流も始まりました。『ブラックシンデレラ』の女子グループみんなで仲良くなりました。
――神尾さんと板垣さんには取材したことがあるのですが、とても明るいイメージです。
現場でも明るかったです。ただ神尾さんが、『ViVi』での取材のときに、普段は結構クールなんだけど、現場では圭吾っぽく振る舞っていたとお話されていて、カメラが入っていないときでも、役柄を意識されているんだなと知って、素敵だなと思いました。
――神尾さんとは『ViVi』の6月号で対談されていますね。
そして愛花さんはソロで表紙を飾りました。
そうなんです。今回ドラマで初めて演技をしたことも大きいですが、それに加えて、『ViVi』で表紙を飾らせていただいたこともすごく大きな経験になりました。色んなことに挑戦するたびに、責任感が増しますし、背負っていくものも増えていますが、それに負けないくらい楽しいことが多いし、好奇心とハングリー精神で突き進みたいです。
――百合は表情で気持ちを見せる場面も多いです。モデルのお仕事とは、表情づくりも全く違いますか?
全然違いました。モデル業ではモデルひとりひとりも、スタイリストさんもメイクさんも、みんなが自分の持っているものをそこで出す感じですが、演技となると自分だけではなくて、監督だったり共演者だったりと、長い時間をかけてみんなでひとつのものを作っていくのだと感じました。だから表情も周囲の影響で変わってくる。
みんなで作り上げるという点は同じなのですが、作り上げ方、関わり方が違っていることが楽しかったです。
●東京理科大で「刺激されて、私も頑張っています」
○■将来はみんなに愛されるおばあちゃんになりたい
――これから女優としての活動も増えていくなら、どんな役をやってみたいですか?
最近、Netflixで『エノーラ・ホームズの事件簿』という映画を見たんです。シャーロック・ホームズの妹が主人公なんですけど、中世のヨーロッパで女性はおしとやかにと言われるなかで、エノーラは野性的で、すごく面白いんです。私も明るい役や強さのある役もやってみたいですね。百合も美に対するちょっと斜め方向の強さを持っていますが、今度は斜め方向ではないまっすぐな強さも演じてみたいです。
――百合を演じてみて、ルッキズムについて何か考えましたか?
これまで外見主義について考えたことがありませんでした。今回、セリフの中にも外見に関するいじわるなワードとかが結構あって、そういうのを目にするとすごく悲しくなるし、無意識にやっている人たちには、よくないことだと分かってほしい。高校生だけでなく、小学生や中学生にもこの作品のメッセージが伝えられたらなと思います。
――まだ二十歳ですが、学業とモデル業に加えて今度はお芝居もと、とても目まぐるしい生活かと。そうしたなかで何かビジョンはありますか?
数年後にこうなりたいといったものは、あまりないんです。そのときに自分のやりたいこと、例えば今回のように演技へ挑戦したり、その都度やっていけたら。もともと芸能界に入るきっかけも高校の時に受けたオーディションでグランプリをとったことで、そこからガラッと人生が変わりました。世の中、飛び込んでみないと分からないことのほうが多いので、今はいろんなことを吸収しつつ、挑戦していけたらと思います。先の目標としては、みんなに愛されるおばあちゃんになりたいです。
――まだまだ先の目標ですね。おしゃれをして街に出かけるようなかわいらしいおばあちゃんでしょうか。
はい。実際、私のおばあちゃんもおしゃれで、私がいいなと思ったリップをおばあちゃんにあげたり、今年の冬には、おばあちゃんのお譲りのコートを私が着てました。
――おばあさまのおさがりを?
おばあちゃんのおさがりを着ますし、もし自分に孫ができたら、同じようにしてあげたいです。私は、自分のベースが家族にあって、お仕事をするなかでツライことがあったら、家族に声をかけてもらいますし、FaceTimeで顔を見て話もよくしていて、とても支えになっています。○■競歩大会で鍛えられた福島魂
――家族がベースというお話ですが、愛花さんは、地元の福島を大切にされている印象です。
今年は震災から10年で、それこそ福島のことは気軽に聞いてはいけないみたいに思われてしまうこともありますが、こうしたコロナ禍でなかったら、本当はもっと観光PRもしたいんです。福島ってこんなに素敵なところがあるんですよって。もう散ってしまいましたが、鶴ヶ城(会津若松城)の桜とか、すごくきれいですし。でも今は足を運べないので、特産品でお取り寄せできるものをおすすめしています。最近のおすすめは日本酒です。
――二十歳になりましたし、飲めますね。
めちゃめちゃおいしいです。会津娘とか飛露喜とか。
――自分は福島の女性だなあと、福島魂を感じる瞬間はありますか?
中学から高校にかけて、競歩大会があるんです。白虎隊が飯盛山を超えて猪苗代にも行ったことにちなんで、40キロ歩くんです。雨や雪でできない年もありましたが、私も参加して、忍耐力を鍛えられました。それこそ会津魂ですね。たとえばモデルのお仕事ですごく寒い冬に夏服の撮影をすることもありますが、会津魂で乗り切ってます。
――東京理科大学に通う現役大学生でもあります。やることが多すぎて疲れませんか?
私、いったん止まると止まっちゃう性格で。大学と仕事に関しても、どちらもやっているから頑張れています。大学だけ、仕事だけとなると逆に怠けちゃうかな。大学のほうは今、オンラインのために課題も多いですが、忙しいのは私だけじゃないので。勉強もやりたいしお仕事も頑張りたい。頑張っている人たちに囲まれているので、刺激されて、私も頑張っています。
――最後にメッセージをお願いします。
百合は固定概念に縛られていましたが、愛波と関わることで変わっていきます。百合が成長していく姿を見てほしいですし、百合だけじゃなくて、みんなが愛波のパワーでどんどん変わっていくので、そうしたキャラクターたちの成長物語を楽しんでもらえたら嬉しいです。
■プロフィール
愛花(えりか)
2000年8月13日生まれ、福島県出身。2018年にファッション雑誌『ViVi』の専属モデルオーディションにてグランプリを受賞し、翌年、専属モデルデビュー。様々な表情を見せて人気を獲得し、2021年4月発売の6月号で初の表紙を飾った。「ABEMA」配信ドラマ『ブラックシンデレラ』で女優デビューを果たした。私生活では東京理科大学に通う現役の大学生であり、クイズ番組に出演するなど、活躍の幅を広げている。公式Instagram(@hi_erica_)
望月ふみ 70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビュー取材が中心で月に20本ほど担当。もちろんコラム系も書きます。愛猫との時間が癒しで、家全体の猫部屋化が加速中。 この著者の記事一覧はこちら