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なぜ、第6世代iPod touchのSoCはダウンクロック版「A8」なのか

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なぜ、第6世代iPod touchのSoCはダウンクロック版「A8」なのか
●パフォーマンスはiPhone 5sと同程度?
第6世代のiPod touchにはiPhone 6と同じSoC「Apple A8」が使われているが、一様に同じというわけではなく、ダウンクロック版が採用されているという。それはなぜなのか。ここで考察してみよう。

○iPod touchはなぜ「ダウンクロック版A8」を採用したのか?

今回の新型iPod touch発表にあたり、比較的驚きを持って迎えられたのが、そのメインプロセッサに「Apple A8」が採用されたことだ。「A8」はiPhone 6とiPhone 6 Plusで採用されている同社の最新SoCであり、どちらかといえば(コストを抑えた)廉価端末として同時期に投入されるiPod touchでは、それより前の世代、今回の例でいえば「A7」が採用される可能性が高いとみられていたからだ。以前のレポートにもあるように、AppleではiPod touchも含めてすべてのiOSデバイスで64ビット対応を進めているとみられ、少なくともA7以降のものが採用される可能性があるとは指摘していたが、このあたりは予想外だった。

ただし、A8とはいっても、iPhone 6では1.4GHz駆動しているものが、iPod touchでは1.1GHzまでダウンクロックされて動作しているといわれている。この状態でパフォーマンスはiPhone 5sと同等程度という話もあり、釣り合いがとれているのだとも思える。


●ダウンクロックは何が目的?
○ダウンクロック版採用の目的とは

ダウンクロックの効果は主に「省電力」の部分に現れていると考えられ、第5世代iPod touchと比較しても大幅にパフォーマンスが向上しているのにもかかわらず、バッテリ容量は第5世代の1030mAhから1043mAhに微増した程度で、オーディオ連続再生が40時間に動画再生が8時間という仕様も変化していない。

この省電力という部分はA7やA8を搭載したiPhoneと比較するとより明らかで、A7を搭載したiPhone 5sが1560mAhのバッテリサイズでオーディオ連続再生40時間/動画再生10時間、A8を搭載したiPhone 6が1810mAhのバッテリサイズでオーディオ連続再生50時間/動画再生11時間となっている。第6世代iPod touchはiPhone 6の6割弱程度のバッテリサイズしかないのにもかかわらず、それに匹敵するだけのバッテリ駆動時間を実現していることがわかるだろう(もちろんLTEモデム搭載の有無や画面解像度の違いはあるが)。

つまり、iPhone 6では本体サイズが4インチから4.7インチまで拡大したことで大容量バッテリの搭載が可能になり、バッテリ駆動時間を延ばすことが可能になった。だが一方で4インチのiPod touchがバッテリ容量を増やさずに薄型筐体のまま同等のバッテリ駆動時間を実現するには、A7採用でも素のA8採用でもなく、A8プロセッサのダウンクロックが最適解だったのかもしれない。

ここから先は筆者の仮説ではあるが、A8のダウンクロック版採用の背景にはもういくつかの理由があると考えている。1つの予想はA8を製造しているTSMCとSamsungの20nm製造プロセスの歩留まりが依然として悪く、選別品としてiPhone 6や6 Plusへの採用を見送られた「A8」をダウンクロックした状態でiPod touchに採用している可能性だ。TSMCの20nmについてはリーク電流増大など諸所の問題を抱えており、特に高性能を要求されるGPUの製造は同世代では見送られたとの報告もある。


同様のトラブルはSamsung側も抱えているといわれ、TSMCは16nm FinFET、SamsungとGlobalFoundriesは14nm FinFETへと早々に移行しようとしている。20nmの立ち上がりが遅れたということもあるが、ムーアの法則から考えれば通常2年サイクル程度で行われるプロセス移行が比較的短期間で行われることになる。TSMCの20nmに関しては、一部で話題になっているQualcommのSnapdragon 810のパフォーマンスや発熱問題の原因の1つともいわれ、意外と根深い話なのかもしれない。

●SoCを手がける2社
○iPod touchのマイナーアップデート版」が早々に登場?

ここでTSMCとSamsungの話が出たが、現在のAppleはiOSデバイス向けSoCの調達先をこの2社からのデュアルソースとしている。A8登場のタイミングでSoCの調達先をSamsungからTSMCに切り替えたという話も聞かれたが、実際にはSamsungからの調達も継続されている。Re/codeがIHSのアナリストAndrew Rassweiler氏のコメントを引用して伝えるところによれば、同件が報じられた2014年9月のタイミングでSoCの調達比率はTSMCとSamsungで6:4程度だという(SoCの種別は不明)。

後の2015年4月にKGI SecuritiesのアナリストMing-Chi Kuo氏が報告したレポートによれば、次期iPhoneに採用されるとみられる「A9」の発注比率はTSMCとSamsungで3:7となっている。つまり、Appleは1世代ごとにSoCの2つの調達先をメインとサブで交互に切り替えている様子がうかがえる。
台湾Digitimesは7月16日にTSMCとSamsungがA9の大量生産に入ったと伝え、このうちTSMCは16nm FinFETを採用していると報告している。

2社は新プロセスでの供給量の多くを当初はApple向けに振り分けるとみられるが、依然としてこのあたりの供給量や歩留まりに関する情報は錯綜しており、不明な点が多い。特に歩留まりやその他の事情(Samsungが自社向け供給を優先するなど)でAppleの要求を満たせない可能性も指摘されており、予断を許さない。もしA9でパフォーマンスや歩留まりに関する問題が発生した場合、次期iPhone製造におけるボトルネックの1つとなる可能性がある。

なお、第6世代のiPod touchのハードウェア番号は以前の第5世代の「iPod5,1」から一気に飛んで「iPod7,1」となっている。これはiPhone 6世代の「iPhone7,x」に合わせたとみられる。第6世代の発売はiPhone 6登場から1年弱が経過しているわけで、間もなくiPhoneの次世代モデルが登場することを考えれば、その意味では「1つ前の世代のもの」を採用していることになるといえる。また冒頭で「次のiPod touchは2~3年後までアップデートされない」と説明したが、先の仮説にもある事情で「A9世代のSoCを用いたiPod touchのマイナーアップデート版」が早々に登場することもあるかもしれない。

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