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アニメ「PSYCHO-PASS」の変形銃「ドミネーター」が"動く"まで (後編)

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アニメ「PSYCHO-PASS」の変形銃「ドミネーター」が"動く"まで (後編)
●「もっとすごいアニメグッズ」を実現
アニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」に登場する拳銃「DOMINATOR(ドミネーター)」を、家電ベンチャー・Cerevoが再現した電動玩具「DOMINATOR MAXI(ドミネーター・マキシ)」(※開発コードネーム)。作中同様、なめらかな動きで自動変形する様子が公開されたと同時に、アニメの中の動きを"完全再現"したと話題になっている。

インタビュー前編では、ネット接続家電を手がける同社が「ドミネーター」を開発したきっかけを語っていただいたが、後編では、自身もアニメを愛好しているという同社の岩佐代表が、今回の製品をはじめとした「スマートトイ」、ひいてはアニメ業界のグッズ展開にかける思いについて迫った。

――動くものは今回御社が発表したものが初めてですが、ドミネーターはすでにさまざまなメーカーが製品化しています。価格帯でいえば御社のものが最も高額ですが、差別化に際して工夫されたことはほかにありますか?

工夫、という部分ではないかもしれないのですが、価格ではなくクオリティを追求したことが、何よりの差別化だと思っています。

僕自身、すごくアニメが好きなんです。そうした趣味がある場合、決してお金持ちではないにしても、いわゆる社会人をやっていてある程度の収入があるとなったら、本当に好きな作品のためであれば、5万円でも10万円でも出そうと思ったら出せる、という気持ちを持ったファンの方は多くいらっしゃるのではないかと思っています。

例えば、15万円前後のBlu-ray BOXが販売されているアニメ作品はいろいろとありますし、アイドルものアニメの等身大ポップがひとつ2万5,000円で、それをメンバー6人分そろえたら合計10万円、みたいな商品展開もあるわけです。
要は、欲しい人はお金を出しても良いものが欲しいというニーズがあるのだと感じています。

ですが、アニメ関連事業に限らず、メーカー側がそういう事業構造になっていないのでしょうけれど、いわゆるアニメ作品の関連グッズって、何と言ったらいいのでしょうか…。

――おっしゃるような高額商品は少数派で、ストラップやタオル、缶バッジなど、作品種別を問わず同じような低額商品が展開されがちですね。ライン化しているというか。そうです、ライン化しているのと、参入している企業が基本的に限られているためでしょうね。もちろん、そうした状況を否定するものではないですし、僕もキーホルダーとか好きで集めていたりするので、それはそれでいいんです。その一方で、家電業界の費用感と技術で、もっとすごいものができるんだということも知られてほしいと思っていました。

近年、ハードウェアスタートアップが増えているのは、少ない開発費と小規模なロットで、高機能な製品を生産できるような土壌が整いつつあるからです。


今回のドミネーターも、モーターが中国の部品メーカーから簡単に購入できるようになったこと、500台~1000台から組み立てを受けてくれるEMSと言われる工場が出てきたこと、製品化に際してCPUを入れるのですが、社内で開発しなくても、デジカメやスマートフォンに入っている物と同じ高性能なチップを、メーカーから買って組み込めるというような状況があって実現しました。その上、各ソフトウェアもある程度オープンソースで配布されています。例えば顔認識だったら、シビュラシステムの開発のご質問の時にも挙げたOpenCVなどのライブラリが有名です。

要するに、家電業界では「いつでも来い!」と言えるような状況が整っているものの、コンテンツ業界、そして玩具やプライズなどの周辺産業がなかなか追いついてこなかったんですね。そんな中で、このドミネーターが「こんなこともできるんだよ」という、フラッグシップ的な製品というか、ひとつの実証にはなるのかな、と。

――既存の展開にはないモノを実現したかった、ということですね。

繰り返しになるのですが、既存の製品展開が悪いという話ではないんです。僕らは逆に、そうしたメーカーが得意とする、大量生産して原価を1円、あるいは1銭単位で下げて、利益を回収していくみたいなやり方は苦手なんです。
自分の好きなアニメのグッズが、500円のものから10万円のものまであるって面白いじゃないですか。

こうした製品展開の例としては、一時期話題になったマスターレプリカ社が製造した『STAR WARS』の「FXライトセーバー」があります(注:現在はハズブロ社が販売)。ライトセーバーのおもちゃって、トイザらスで2,000円くらいで売ってますけども、マスターレプリカ社の物の価格は約2万円でした。完全に「大人のためのライトセーバー」ですね。本来、ライトセーバーは1m以上ある竹刀みたいなものですが、子供用のものは輸送費を低減するために、刀身の部分は組み立て式になっていたり、伸縮式になっていたりするんです。

一方、大人用のそれは箱がやたら大きいことで有名で、つまり輸送コスト低減をとらずに、刀身をきれいに再現することを優先したんです。しかもLEDがたくさん入っていて刀身が満遍なく光り、衝撃センサーと加速度センサーが入っていて、つばぜり合いや回転という動作でそれにあった音が鳴る。アメリカの"いい大人"がこれを2本くらい買って、家に飾って自慢げにしているのをよく見ていたのですが、STAR WARSが本当に好きな方にとって、1本2万円というのは、そんなに驚くような値段じゃないという感触がありました。
この製品の発想のルーツのひとつといえると思います。

翻って、日本のアニメゲームの作品を見ても、大人用のライトセーバーにあたるものってほぼないなと思ったんです。ガンダムには一部近いターゲットの商品ラインナップがありますが、買っている人たちも楽しそうだし、作っている側も楽しいだろうなって思うんです。どっちも幸せそうにやっている感じがして、そういうものを会社として組織的に作って、事業としてちゃんと成功することはできるんじゃないかっていうのが発想の原点ですね。

●代表自らコスプレした理由/今後の販売予定
――発表にあたって、メインキャラ・常森朱に扮したコスプレイヤーが同機を構えるデモンストレーションを実施されていましたね。会見でのコメントでも、岩佐さんが電池の持ちは「撮影会に耐えるぐらい」と回答されるなど、対象ユーザーを想定した展開が印象的でした。コスプレでの利用をメインに想定されているのでしょうか?

いえ、一番多くなると想定しているのは、趣味で買って家に置いておくという使い方をされる方なんですけど、その次にコスプレイヤーの方が多くなってくるだろうなと思っています。なので、コスプレを楽しむ方のご意見やユースケースにある程度お答えできるように作ろうと考えています。


コスプレの撮影にかかる時間はまちまちで、平均を取るのが難しいのですが、ある一定時間動いて、レイヤーさん自身が容易にバッテリーの交換や充電をできる構造にできればと想定しています。

――発表会の場では、岩佐社長ご自身が宜野座伸元のコスプレをされていましたが、普段からコスプレもされるのでしょうか?
弊社の中にコスプレが好きなメンバーがいて、当日会社に来ると、全てが用意されていたという…(笑)。僕はどちらかと言うと撮影をする方なので、撮られるのはあまり得意ではないですね。今回配信したプレス用素材も、撮影はすべて僕が行いました。

宜野座をチョイスしたのもそのメンバーです。僕が普段から眼鏡をかけているからでしょうか。ただ、ドミネーターを持ってデモをするにあたって、狡噛(狡噛慎也、同作1期の主人公)のコスプレだと、最新の物語(テレビ版2期、劇場版)の展開上、齟齬が出るという理由もあったかと思います。

――話が少し戻るのですが、「ドミネーター マキシ」への反響が大きいのは国内と海外ではどちらでしょうか。


今一番"バズっている"のは、実は海外です。数日前にオーストラリアのアニメ系のFacebookページに取り上げてもらったのをきっかけに、動画が100万再生を超えました。

コメントを見ていると面白くて、英語の書き込みって実は半分ぐらいしかないんですよ。残りは韓国語と中国語とスペイン語とポルトガル語など、多岐にわたっていました。返信しようとも思ったのですが、言語数が多すぎて…。

――販路に関してはまだ先の事だと思うんですけれど、そうした海外の反応もあることで、インターネットで注文を受けるような形式にされるのでしょうか。

販売についてはさまざまな方にご心配いただいていて。まず「ちゃんと売るのか」ということ、そして「数量限定で、欲しい人が買えないんじゃないか」というような不安の声をいただいています。


――いわゆるプレミア化への懸念ですね。

この製品を待ってくださっている方々にひとつお約束をしたいなと思っているのが、確実に製品化をしますし、数量限定という形ではなくて、欲しいと思ってくださる方には全員買っていただけるような形でご提供したいと考えています。

具体的な販路はまだ決まっていないのですが、少なくともどなたでも、インターネットでご発注いただけるような方法をご用意します。

――それを聞いて安心する方は多くいらっしゃるでしょうね。もうひとつ、購入希望者の懸念としては価格があると思うのですが、発表会でおっしゃった「10万円以下」という予価について、今後コストを下げて価格を低減する方向にいくのか、クオリティを追求して10万円以内に収めるようにするのか、どちらの方向が近いでしょうか?
正直に申し上げて、僕たちも原価がいくらになるか現段階では言えないんです。対外的には5~10万円とお伝えしていて、そこから極端に上がることはないようにしますが、もう少しお時間をいただけるとありがたいです。

というのも、最終的なギアやネジの数、金型の値段、そして何よりドル・円の相場も価格に影響してくるためです。ここ半年ぐらい相場は安定していますが、半年前~18カ月前の間で、ドル円レートは15%~20%ぐらい変動しています。例えば原価が5万円となったら、5%の差でも販売価格は約6~7万円と変動してしまうので。

その時のさまざまな状況を見て価格を決定することになりますが、そうした不確定な状況を鑑みても、10万円を超えることはさすがにないだろうということで、予価を申し上げたところです。

――次の情報公開は、およそいつぐらいをめどに予定されていますか。

これからは徐々に進んで行ってゴールにたどりつくような動きになるので、大々的にというよりは、継続的に情報を出して行きたいなと思っています。

なので、ご興味を持っていただいた方には、ぜひ弊社のTwitterアカウントや、Facebookページを見ていただけると嬉しいですね。「こんなのできました」とか、「今こんな状況です」みたいなことは、なるべく細かく発信していくことで、お客様としっかりつながって、商品発売まで一緒になってご期待いただけたら。

――これから「ドミネーター」が発売に向け動き出す中でお伺いするのは気が早いかもしれないですが、今後のスマートトイへの取り組みに関してコメントをいただけますか?

実は、すでに第2弾がある程度動き始めています。具体的な作品名はまだ申し上げられないのですが、ファンタジー色の強い世界の作品というよりは、やや現実世界よりの、いわゆる近未来作品みたいなものです。

そういった作品に出てくるアイテムの方が、われわれのノウハウで劇中のイメージに近いものを作ることができ、結果的にお客様に「本物の●●が出た!」という風に喜んでいただけるのだと思っています。なおかつ、そうした作品のテイストの方が、僕らの会社のイメージとも合致しますので、僕らとしては取り組みやすい題材になるかなと思っています。

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