25周年のTEAM NACS、“5人で舞台に立つ喜び”改めて実感 掛け合い「たまらない」
●「エンタメは不朽不滅」コロナ禍の舞台で改めて実感
北海道を拠点に活躍する5人組演劇ユニット・TEAM NACS(森崎博之、安田顕、戸次重幸、大泉洋、音尾琢真)。結成25周年を迎えた今年、全国11都市を回る第17回公演『マスターピース~傑作を君に~』を上演、6月6日に北海道・札幌のカナモトホール(札幌市民ホール)で千秋楽を迎える。「コロナのストレスを忘れるくらい最高に楽しい舞台を届けたい」という強い気持ちで舞台に立ち続けてきた5人にインタビューし、ここまで駆け抜けてきた中で感じた思いや、5人の掛け合いの楽しさなど、話を聞いた。
『マスターピース~傑作を君に~』は、昭和中期の日本を舞台に新作映画の脚本執筆のため、泊まり込みで原稿と向き合う5人の男たちの物語。まだ見ぬ傑作“マスターピース”を求め、5人の侍が刀をペンに持ち変え、時々温泉に浸かりながら未踏の軌跡を描き切る。6月6日の千秋楽公演は、全国の映画館(1万席限定)でライブ・ビューイングが実施されるほか、特典映像付きストリーミング配信も行われる。
――3年に1度、そして今回は25周年という節目の公演。ここまで公演を重ねてきて、今どのような心境でしょうか。
森崎:こういう情勢でありながら、25周年を記念する全国ツアーができて、ファンの皆さんと一緒に楽しめているという一年。いつもと違う縛りがあるのはやむを得ないことですが、エンターテインメントというものがしっかりとみなさんに寄り添い、わずかでもみなさんを照らし、わずかでも背中を押せるような存在になれたらなという思いを強く感じています。やはりエンタメは不朽不滅であるし、私たちのやっている仕事は、この時代こそ大事に、大切に輝くのだと信じているところです。
戸次:「舞台はお客さんと演者と一緒に作る」という言葉がありますが、コロナ禍でその言葉の意味を体現しているなと感じています。分散入退場をお客さんにお願いするなど、いつもに増してお客様に舞台成立のためのご協力をいただいている。コロナ禍で果たして公演ができるのか、演者もスタッフも不安な気持ちがあり、逆の意味ですごく一体感のある公演に。コロナ流行前には抱けなかった一体感を抱き、悪いことばかりではないなと感じています。
――コロナ禍だからこそ感じられる思いがあったということですが、この経験を生かしてTEAM NACSとして今後挑戦していきたいことなど、新たに芽生えた思いがありましたら教えてください。
森崎:今は『マスターピース』を最後までやりきるんだという航海の途中で、次の船をどこに出すのか、まだ先は考えられていません。東日本大震災のときもそうでしたが、早く立ち上がった人が、音楽を作ってくれたり、懐かしのバンドを再結成してくれたり、私たちを鼓舞してくれた。僕もそのおかげで立ち上がることができましたし、今度は僕が誰かを立ち上がらせることができたら。僕たちは今、コロナの中でエンタメができているので、みんなの気持ちを少しでも上げたい。そして、上がった人はまた、何らかの形で誰かの心を響かせる。そうやって支え合っているのだと思います。私たちもそのサイクルに入れている今がうれしく、幸せなことです。
――25周年という節目の公演でもありますが、5人での舞台のやりがいや面白さなど、改めて感じている思いをお聞かせください。
森崎:楽しいですよ! よく知っている仲間たちですし、お客さんの前に5人で立てることが、まずうれしいです。自分たちの場所に3年ぶりに立てている、25年間立てていることが、うれしいし楽しいことです。
安田:各都市に5人を求めて待ってくださっている方がいる。そういった方たちの前でお芝居という好きなことができている環境に感謝しています。
●増していく掛け合いの楽しさ「相手のことを思って」
――ネタバレで言えないシーンもありますが、お気に入りのシーンを教えてください。
森崎:みんなで一気にテンションを上げて矢継ぎ早にセリフを重ねていくシーンがあるのですが、その呼吸はやっていてたまらないものがあります。それぞれの呼吸で、今来るってわかるんです。卓球のラリーのようなものを毎日舞台でやるのは大変ですが、爽快でもあります。
安田:全部がお気に入りですが、5人の侍のシーンは映像を駆使していて、素敵なものに仕上がっていると思います。
大泉:ネタバレになるので言えないシーンが、一番の見どころで、面白いと思います(笑)。また、ドリフ(ザ・ドリフターズ)的なシーンもあり、みなさん大いに笑っていただいているので、そこは楽しいものになっていると思います。
戸次:大泉と同じです!
音尾:冒頭、私が1人でしゃべっているシーンがあり、口上を述べるというような、唯一お客さんに話しかけるものになっています。芝居がこれから始まるんだなと、お客さんと一体になるための準備をしている感じがすごく気に入っていて、そこから楽しみどころは始まっているぞと感じながら、導入部を楽しんでもらいたいです。――5人での掛け合いがたまらないと森崎さんがおっしゃっていましたが、その面白さは年々増していますか?
森崎:そうですね。僕らの本公演は3年に1回しかありませんが、3年ぶりに舞台で会話すると、「うわ~すごい!」と楽器の腕が上がったみたいな感じがあり、みんなすごいなと思っています。
――アドリブのシーンなどは、お互いに仕掛けていき、反応を楽しむような感覚なのでしょうか。
音尾:お芝居は仕掛けるというより、調和です。1つの目標に向かって調和を求めていく。相手のことを考えながらやるのが楽しいですし、昔よりも年々、TEAM NACSのもとでそれぞれのことを思ってお芝居ができるようになっているなと感じています。
大泉:今回のお芝居では、アドリブの多いシーンもありますが、こう見えてTEAM NACSはそんなにアドリブがないんです。なので、何かを仕掛けて何かが返ってくるというのは少ないですが、初めて会ったカンパニーだと稽古が必要でも、僕たちには必要ない部分があるかもしれないですね。ドドンといけるのは、長くやっている良さだと思います。
――今回の公演だと、枕投げのシーンはアドリブだそうですね。
大泉:あそこはオールアドリブなので、僕らもどうなるかわからないんです(笑)
――見ていてとても楽しいシーンですが、演じているみなさんにとってもやはり楽しいシーンになっていますか?
戸次:僕に関しては、あそこで無理しすぎるとそのあと支障が出てしまうので、あまり楽しみ過ぎないようにしています。
体がおっさんなので、昔できたことが全然できない。それを感じる数年で、あそこで無理な動きをするとなんなら骨折してしまうと思いながらやっています。もちろん楽しんでいますが、やりたいことに自分でかなりブレーキをかけていて、そうしないと長丁場を乗り切れないと注意している自分がいます。
大泉:みんなたぶんそうですね。ケガが怖い。楽しませたいという気持ちを持ちながら、ケガはできないぞという思いで、気をつけながらやっています。
――長年やってきたからこそ気づけたことなどはありますか?
戸次:声を枯らさなくなりましたね。小さいことかもしれませんがけっこう大事なことで、本番をやりながら調整できるようになってきたのは自分の中で気づきですね。
●初のストリーミング配信で「みなさんと時間を共有したい」
――6月6日の千秋楽公演はライブ・ビューイング、そして初めての試みとなるストリーミング配信が決定しています。配信ならではの魅力をどのように考えていますか?
安田:生の1度しかないライブの楽しさもありますが、その余韻を違う角度から見ることができる。そうやって楽しんでいただけたら幸いです。
大泉:たくさんのカメラでいろんなところを撮ってくれるので、劇場で見た方も今度は我々の近くで、顔の表情も見られますし、配信の良さはたくさんあると思います。僕らの場合、アドリブ性の多いシーンもあるので、一度見た方も違う展開が楽しめるし、一度も見ていない方ももちろん楽しめる。今のこの時代だからこその楽しみ方だなと思います。また、配信の特典映像も楽しめるものになっていると思います。我々はそういうところもどうしても頑張っちゃうので(笑)、絶対面白いと思います。
音尾:特典映像には、お芝居の時間だけでなく、このツアーの間に撮ったいろんな映像も入るので、そういうところも楽しみにしていただけたら。そして、場所は違っても同じ時間を共有できるというのは、僕たちとファンのみなさんがつながるものなのではないかなと。僕はみなさんと時間を共有したい、それが願いです!
――最後に、千秋楽に向けてファンのみなさんにメッセージをお願いします。
森崎:私たちは稽古のときからPCR検査で陰性を確認しながら、綱渡りの状態ではありますが、なんとかエンタメを成立させようと必死になってゴールに向かって頑張っているところです。この状況でも舞台に上がれる、その幸せをしっかりかみしめ、ともに喜びを分かち合うことが難しい状況ですが、その分、舞台の上でお客様に最上の喜びをお伝えしたいと思っています。お客様も、行くべきか行かないべきか大変迷われながら、しっかりと感染対策をしてお越しくださっている。これはもう団体戦。なので、最後の最後まで気を抜かずに務めたい。それが唯一であり、最上の願いです。
■TEAM NACS(チーム・ナックス)
北海学園大学演劇研究会出身の森崎博之・安田顕・戸次重幸・大泉洋・音尾琢真により結成された演劇ユニット。1996年に初めて作品を上演し、2004年に初の東京公演を敢行。以降、公演を重ねるごとに着実に動員数を増やし、2021年の第17回公演『マスターピース~傑作を君に~』は全57ステージで約7万人動員予定。メンバー個々でも俳優としてドラマや映画、バラエティ番組など、幅広く活躍している。
■TEAM NACS第17回公演「マスターピース~傑作を君に~」〈ストリーミング配信~特典映像も君に~〉
(アーカイブ配信有り、特典映像有り)
【配信日】
2021年6月6日13:00 OPEN
特典映像:13:25頃~配信開始
公演本編:14:00頃~配信開始
【チケット料金】
4,000円(税込) ※別途、視聴サービスごとに異なる手数料が必要