千葉雄大&哀川翔、仕事に対する心構えで互いに共感「常に打ち返す意欲は持っていたい」
●『ピーターラビット』の魅力と声優挑戦の感想
ビアトリクス・ポターの絵本を実写映画化した人気シリーズ第2弾『ピーターラビット2/バーナバスの誘惑』(6月25日公開)でピーター役の日本語版声優を続投した千葉雄大と、都会の地下組織のボスウサギ・バーナバス役で吹き替えに初挑戦した哀川翔を直撃。本作の魅力やアフレコの感想、互いの印象などを聞いた。
ピーターたちと暮らす画家のビアと、ピーターの宿敵、マグレガーが結婚したことで、父親気取りのマクレガーからいつも叱られているピーター。イライラを募らせたピーターは、湖水地方を飛び出し、大都会へ家出をする。そこでピーターは、亡き父親の親友だったというバーナバスと出会い、彼にそそのかされて悪事に加担したことで、大ピンチに陥ってしまう。
――待望の続編となりましたが、まずは『ピーターラビット』の魅力から聞かせてください。
千葉:すごく楽しい映画なのに、ちょっとブラックなところがありつつ、大人が観ても何かメッセージを受け取れる作風が大好きです。続編はその世界観を引き継ぎつつ、哀川さん演じるバーナバスが登場することで、前作にはなかったスパイスが入り、また新しい面白さが加わっています。
僕自身、自分の出演作はあまり見返さないのですが、『ピーターラビット』は観れば元気になれるので、なんだか今日は疲れたなという時に何度も観ています。
哀川:ピーターは前向きだからね。バーナバスはピーターを悪の道に誘い込む都会のウサギですが、どこまでピーターを巻き込んでいけるのかという点がカギとなっているかなと。演じるにあたり、彼自身も生きるために必死なんだというバックボーンが見えたらいいなとも思いました。
――千葉さんはピーター役を続投されて、いかがでしたか?
千葉:2回目なので、キャラクターに対する愛着も違いました。前作のアフレコでは、ピーターと同じ表情で声を吹き込むことをやっていましたが、今回は声が高くなるシーンが多かったです。また、前作ではエンディングで急に歌を歌うことになりましたが、今作でも歌のシーンが出てきます。そこは可愛い感じが出たかなと思います。
――哀川さんは、吹き替え初挑戦となりましたが、いかがでしたか?
哀川:テンポがめちゃくちゃ早いなと。俺は普段から早く話すほうじゃないので、最初はすごく難しかった。初めてバラエティ番組に出た時に「早い!」と感じたのと同じような感覚で、慣れてくると「これくらいのテンポ感だな」とつかめたので、良かったかなと。普段よりはクールに、落ち着いた声で演じました。
●“好青年”より“ワル”な印象のほうがいい!?
――アフレコは別々でしたが、イベントで共演した感想を聞かせてください。
哀川:千葉くんはテレビで観ていた通りで、好奇心旺盛の好青年だなと。まだ若いから、今は仕事をバンバンやるしかないわけですが、いろんなものに興味があるという目つきが好印象でした。
千葉:やはり演じる役のイメージが、個人のイメージみたいになることが多いと思いますが、哀川さんの場合は、役とは違って本当にお優しい方です。
哀川:いやいや、普通のことを普通にしているだけで。でも、昔は俺なんて、挨拶をしただけで驚かれたりしたからね(笑)。
千葉:僕もそうなりたいんです。好青年といった印象を抱かれると、いいことをしても普通じゃないですか。ちょっとワルというか、会ってみたら意外とそっちだったの!? と言われるほうがいいなと。そこはとてもうらやましいです。
哀川:俺はヤクザや不良とか、いわゆるワルの役しかやってこなかったから、若い頃は現場に行っても怖がられて、孤独だったよ。でも、こっちから話しかけることもないかなと思っていたんだ。
最近はよくしゃべる人だと見られるようになったので、そこは変わったけど。
――千葉さんは、前作のインタビューで「もう少しワイルドな一面を見せていきたい」と言われていましたが。
千葉:1作目の取材当時は29歳で、30歳になることをすごく身構えていましたが、30を過ぎても、あまり変わらなかったなと。今はもう32歳なので「後は野となれ山となれ」って感じです(笑)。もちろん、変わった点もあるだろうし、いろんな目線があってしかるべきだとも思いますが。
哀川:俺も当時は「やべえ。30歳か!」と思っていたけど、実際になってみると、自分自身は全然変わらなくて。でも、周りの人たちの接し方が変わり、30歳を超えてからは大人扱いされるようになったかな。
――若々しい哀川さんですが、今年で還暦を迎えます。若さを保つ秘けつを教えてください。
哀川:いやいや(笑)。でも、あるとしたら、早く寝ることじゃないかな。30を過ぎたくらいから、眠くなったらすぐ寝るようにしている。普段は9時くらいに寝るから、4時とかに起きちゃうんだよ(苦笑)。
千葉:ということは、睡眠のゴールデンタイムを死守されていますね!
――夜10時から2時までの睡眠は、成長ホルモン分泌が盛んになり、美容効果があると言われています。
哀川:“早寝早起き”ではなくて、実は“早起き早寝”のほうがサイクルを作りやすい。
早く起きれば、自然と疲れるから。俺は暇な時は釣りやゴルフをしているけど、仕事以上に疲れるけど、それもいいことなんじゃないかと。
千葉:僕もそう思います。
●千葉、哀川との対談で「元気が出ました」
――本作でビアは新しいビジネスパートナーを得ますが、自分の作家性を見失いそうになります。お二人は、これまでキャリアの分岐点で、迷いや戸惑いはありましたか?
哀川:俺は流れに逆らわないで来た感じかな。最初はグループ(一世風靡セピア)で活動していて、歌から入ったけど、解散してからは、俺個人にいろんなオファーがもらえるようになった。そこで、せっかく自分に声をかけてくれたのなら、その期待に応えたいと思ってやっていったら、俳優の道が開けていった。
――例えばそのなかで、やりたくないお仕事はなかったのですか?
哀川:そんなに嫌なことは要求されなかったし、すごく嫌じゃなければ何事もやったほうがいいというのが俺の考え方。
Vシネマの立ち上げ当初も、トレンディドラマが全盛期な時代だったけど、こっちは任侠ものでドンパチをやろうぜ! とやっていたら、そこを求める人がいてくれた。100作目が『ゼブラーマン』で、それを宣伝するためにバラエティ番組に出たら、そこからどんどん番組のオファーももらうようになった。
千葉:哀川さんのお話はすごく面白くて、勉強になることばかり。哀川さんは0から1を作った人だから、説得力が違います。僕なんてできあがったものに乗っかってやってきただけなので、本当にすごいと思います。
――お二人は一見、全く違うタイプの俳優さんという印象を受けますが、例えば舞台挨拶や会見などで、ちゃんと周りの空気を読んで、面白い発言をされるという印象があります。
哀川:いやいや、俺は面白いことをしゃべろうとは思ってないし、実際に素は本当に面白くないよ。千葉:いや、そんなことはないです! でも僕は、自分が面白い人間だとは思ってないし、実際に面白いことをできないのがわかっているからこそ、バラエティ番組に出させていただく時、せめて向こうから投げていただいた球は、ちゃんと打てるように準備をしておきたいという思いはあります。
哀川:その心構えがいいんだよ。俺もそうで、常に打ち返そうという意欲は持っていたい。だからいつも油断はできないけど、そうやって打っていけば、きっと結果が出るから。
千葉:確かにそうかもしれないです。
哀川:やっぱり終わったあとに後悔したくないから。ただ、竿をたれているだけじゃ魚は釣れない。どうすりゃいいんだろうと試行錯誤する人が釣るわけよ。そういう意味では、遊びも一生懸命やったやつが勝つと思う。
――哀川さんはいろんな趣味にも全力投球されている印象があります。千葉さんはいかがですか?
千葉:僕は哀川さんみたいに突き詰めた趣味はないんですが、コロナ禍で家にいる時間が増えたので、自分をクサらせないように、家で楽しむ充実感みたいなものは上げたいなとは思っています。僕はカラオケが好きなので、家でできる環境を整えたし、料理もいろいろと作るようになりました。和食だけではなく、先日はガパオやタコライスなども作りましたし。そうすると、だんだん器などにも凝り出してきて、楽しくなってきました。
哀川:いいじゃない! 遊びも仕事も一緒だよ。
千葉:そうですね。今日はなんだか哀川さんとお話をさせてもらって、すごく元気が出ました。ありがとうございます!
■千葉雄大
1989年3月9日生まれ、宮城県出身。2009年に『天装戦隊ゴセイジャー』の主人公アラタ/ゴセイレッド役で俳優デビュー。主な出演映画に『帝一の國』(17)、『スマホを落としただけなのに』(18)、『人間失格 太宰治と3人の女たち』(19)、『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』(20)など。日本テレビ系『MUSIC BLOOD』(毎週金曜23:00~)にレギュラー出演中。『千葉雄大のラジオプレイ』(YouTube)が配信スタート。
■哀川翔
1961年5月24日生まれ、鹿児島県出身。一世風靡セピアの一員としてレコードデビュー。俳優としてドラマ『とんぼ』(88)で注目される。1990年、東映Vシネマ『ネオチンピラ・鉄砲玉ぴゅ~/高橋伴明監督作品』が大ヒットし、以後、数々のヒットシリーズに出演。『この胸のときめきを』(88)で映画デビュー。『復讐』『DEAD OR ALIVE』『デコトラの鷲』『ゼブラーマン』などの映画シリーズで主演を務めている。『ゼブラーマン』(04)で第28回日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞。