愛あるセレクトをしたいママのみかた

石原さとみ「ハンジを演じていて救われた」- 実写版『進撃の巨人』で"駆逐"できなかったプレッシャー

マイナビニュース
石原さとみ「ハンジを演じていて救われた」- 実写版『進撃の巨人』で"駆逐"できなかったプレッシャー
●毎日眠れないくらいの重圧
映画『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』(前編8月1日、後編9月19日公開)に出演している女優の石原さとみが、いま熱い注目を集めている。原作が累計発行部数5,000万部を突破した超人気コミックだったことから、実写版映画は公開前から当然のごとく大きな話題を呼んでいた。加えて、2013年から放送されたTVアニメシリーズも高い評価を獲得し、主人公・エレンを演じた声優の梶裕貴が第8回声優アワード主演男優賞に輝くなど、声優キャストの好演ぶりが『進撃の巨人』に登場するキャラクター像を確固たるものにしたため、ファンが映画キャストに向ける期待をさらに高める結果となった。

しかも石原が劇中で演じたハンジは、原作でも特にファンの多いキャラクター。『進撃の巨人』きっての"変人"として描かれていることから、普段テレビCMやドラマで目にする石原のイメージとのギャップを心配する声もあった。現に石原も、作品の大ファンであるという友人から「とてつもないプレッシャー」をかけられたという。

それに対して石原は、重圧をはねのけず、かといって無視もせず、真摯に受けとめながら、ハンジを演じきった。彼女が、一年という長い期間を通してどのようにして役と向き合ってきたのか。
そしてハンジを中心に描かれ、石原自身も「ハンジへの愛が詰まっている」と語るdTV版『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN 反撃の狼煙』(8月15日配信開始)への思いも聞いた。

――原作ファンの多い作品、しかも演じるのが人気キャラクターなだけに、プレッシャーも相当だったのでは?

そうですね……。プレッシャーでしかなかったですね。原作を読めば読むほど、アニメを見れば見るほどハンジを演じることが怖くなりました。自分が『進撃』の世界にハマって、好きになっちゃったから。これは責任が重いなと思いました。私以上にハマる人がものすごく多くいるんだろうなというのもわかったし、私のまわりにも作品のファン、しかもハンジの大ファンがいて、その子にはとてつもなくプレッシャーをかけられました。だからこそ、悩んだし、知恵をふりしぼったし、参考になることはとにかく飛びつきました。


――そういうプレッシャーは、どうやってはねのけることができたんでしょう。はねのけてはいないですね。アニメ化している作品の実写版に参加したのも初めてだったこともあり、本編の撮影中は毎日眠れないくらいのプレッシャーを感じていました。そこで自分自身がブレてしまわないように、アニメの声優さんの声を聞いたり、マンガを常に持ち歩いたり。撮影の合間でも、少しでも時間ができたら車に戻ってアニメを見てましたね。

――ハンジの役作りには、TVアニメ版で声優を務めている朴ロ美(ロはおうへんに路)さんからのアドバイスもあったと聞きました。

朴ロ美さんが私の友達の友達で、すぐつないでくれたんです。そこからよく電話するようになって、相談にのってもらうようになりました。
すごく気が合ったんですよ。実際に声を演じている人に会うと、ハンジを演じている"主観の目線"があるから、すごく貴重なアドバイスをいっぱいもらいました。声の張り上げ方とか、どういうトーンでしゃべるかという技術的なところまで教えてもらいましたね。

――ハンジの印象についてお二人で共通していたところはありましたか?

それは自分でも台本に書いてたんですよ。ハンジは"知りたい"という欲があって巨人に愛着をもってはいるけど、それは「巨人を守りたい」という感情にはならないんです。根本にあるのは巨人を倒す、駆逐するということ。そこがブレなければいいって話をした記憶があります。

●足広げて座るのも、声が低くなるのも、肌荒れしてるのも気にしなかった

――原作でもアニメでも、ハンジは男性か女性かはっきりしていないミステリアスなキャラクターです。


そこはそんなに意識していないですね。原作者の諫山(創)さんもあまり気にしていなかった部分なので。実際にアニメも女性が担当していて、実写版で私にオファーがきたっていうのはそういうことなのかなと。それでも捉え方は人それぞれなので、そこは想像していただければ……。ただ、見た目が男であれ女であれ、「ドキッとするポイントが巨人にある」というハンジの感覚があるのであればいいのかなと思います。

――劇中でもハンジは巨人に対するリアクションがほかのメンバーとは大きく異なっています。

みんなが恐怖を覚えている時に、私も恐怖はあるけど、それ以上に"知りたい"が強ければいいというのはありました。みんながおびえて、巨人から離れていこうとする時でも、
"知りたい"から近づく感じでした。
――映画前編・後編、そしてdTV版と、ここまで長い期間同じ役をやった経験はありましたか?

ないですね。大河とか朝ドラとかはありますが、映画では初めてです。

――そこまで長いと私生活にも役柄が影響してきそうですね。

撮影中はハンジに対してブレないようにという気持ちが強かったので、足広げて座るのも、ちょっと声が低くなるのも、肌荒れしているのも気になりませんでした。でも劇場版の撮影の1カ月あとに『ディア・シスター』(フジテレビ系で2014年に放送された連続テレビドラマ。石原は、松下奈緒演じる姉をはじめ周囲を翻弄する奔放な女性・美咲を演じた)に入ったので、そこは意識して切り替えました。肌をきれいにしようとか、ちょっと女子力上げてみようみたいなこととか。

――dTV版の撮影は『ディア・シスター』のあとですか?

『失恋ショコラティエ』という連続ドラマが終わった直後に映画『進撃の巨人』が入って、そのあとに『ディア・シスター』で、『ディア・シスター』を撮りながら映画『風に立つライオン』(2015年)。
それからdTV版の撮影に入りました。

――ドラマ撮影中になにか印象的なエピソードはありましたか?

撮影しかしてないですからね~。プライベートだったら、1年ぶりに本編のロケ地にもなった茨城県の高萩に行ったんですよ。高萩に友達がいるので、その友達とご飯を食べました……って、どうでもいい話ですね(笑)。どうしよう! 期間が1カ月しかなかったこともあって、毎日撮影しかしてないんですよ。

●完成に向けて演技をするのはネギを刻むのに似ている

――そこまでストイックにやると疲れませんか?

料理してて、無意識でネギ切ってるのと一緒ですよ。

――すごくスケールが小さくなった気がしますが……。

でも、そこには料理の次の工程や完成までの見通しがあって、それに向けて"ネギを切る"という一見地味な作業をするわけです。
演じている時も、「この作品では自分の立ち位置はこうで、役まわりはこうなって、その中でも原作ではこうなっていて、アニメではこういう声をしていて」という情報から演じる役の見通しを立てて、完成に向けて日々撮影していくのは似ている気がします。

――なるほど。ではネギを切るのと一番の大きな違いは"体力面"でしょうか?

きつかったですね。体力と、あとはプレッシャーですね。でも、ハンジの探究心というか向上心、さらにいえば"欲"のようなもののおかげで、演じていても救われました。泣きのシーンが多い役だと、(自分の感情の)内に入ってくるからすごくつらいんです。でもハンジはうれし泣きしかしてないですからね(笑)。

――本編、ドラマと撮影を終えられた感想に変化はありましたか?

本編の撮影を終えて、役を客観的に見ていたのが、ドラマでは主観で見るようになりました。本編では「ハンジってどういう人間だろう」、「どうすればハンジっぽく見えるだろう」ということをすごくすごく悩みながら、考えながら挑んだ撮影でした。それがドラマでは、ハンジのキャラクターが自分の中でわかった上で撮影に入ることができたので、存分に楽しみましたね。私のハンジに対する愛がつまった作品です!

――最後に。見ていてすごく気になったのですが、あの「立体機動装置」の装備は重いんですか?

重いです! すごく重いから、それで体力を一番奪われますね。トイレに行く度に装置をつけたりはずしたりする必要があって、本編ではみんな自分でできるようになった瞬間に撮影が終わっちゃう感じでした。私はdTV版があったので、装置の扱いに慣れたのがすごく役に立ったんですよ(笑)。

■プロフィール
石原さとみ(いしはらさとみ)
1986年12月24日生まれ。東京都出身。2002年に第27回ホリプロスカウトキャラバンでグランプリを受賞。翌年、東陽一監督作の映画『わたしのグランパ』でデビューし、同年のNHK連続テレビ小説『てるてる家族』のヒロインに抜てき。以後は数々の映画、ドラマ、舞台などで活躍している。映画の主な出演作に『北の零年』(05年)、『包帯クラブ』(07年)、『人間失格』(10年)、『幕末高校生』(14年)、『風に立つライオン』(15年)。

提供:

マイナビニュース

この記事のキーワード