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大学デビューの落とし穴 (10) 8月:実用至上主義に飲み込まれないため、「探索能力」を身につけよう!

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大学デビューの落とし穴 (10) 8月:実用至上主義に飲み込まれないため、「探索能力」を身につけよう!
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大学1年生のみなさん! 「大学デビューのホントのところ」、知りたくないですか? 本連載は、かつて大学デビューに半分成功・半分失敗したトミヤマユキコ(ライター・大学講師)と清田隆之(恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表)が、過去の失敗を踏まえ、時に己の黒歴史を披露しながら、辛く苦しい学生生活を送らないためのちょっとした知恵をお授けする。そんな連載です。
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○時間の流れが突如速くなる「カレンダーの錯覚」

いよいよ8月も後半に突入しました。毎年、お盆を過ぎると時間が一気に加速するような感覚を抱きます。これはなぜなのかと考えたところ、ある仮説に行き着きました。それは「カレンダーの錯覚」という現象です。

一年が始まったとき、私たちは「1月始まりのカレンダー」で時間を認識しています。ところが年度が変わると、いつの間にか時間感覚が「4月始まりのカレンダー」へと切り替わります。
夏休みと言うと何となく"真ん中"のような感覚がありますが、それは「4月始まり」での話。忘れがちですが、実はすでに2015年も3分の2が終わろうとしているわけです。

おそらく、お盆を境に時間感覚が「4月始まり」から「1月始まり」に戻るのではないか……。それで、真ん中だと思っていた8月が"後半のなかば"であったことを突如認識し、はしごを外されたような気分になる。そして、ここから一気に年末へと時間がばく進していく──。これが「カレンダーの錯覚」という仮説です。すいません、だから何だって話ですね。

○現代社会に広がる"実用至上主義"の風潮

さて、トミヤマさんは大学1年の8月を「人生のうちでもかなり自由度の高い夏休み」と書きました。
さしたる義務もプレッシャーもなく、目の前にはあり余る自由が広がっている。だから時間のかかる読書に挑戦し、マニュアルの整備されていないバイトに勤しみ、目的のない旅に出よう──と、そうアドバイスしてくれたわけです。

これを読んで、「ホントその通りだよ!」と、自分も首がもげるほど頷きたい気分になりました。なぜなら、これは超絶"現代的"な助言だと感じたからです。私は以前、印刷物の制作会社に勤務し、様々な大学のパンフレットを作る仕事に携わっていたことがあります。数多くの学生や教職員の方々にインタビューさせていただいたのですが、そこで感じたのは、"実用至上主義"とでも呼びたくなるような傾向の存在でした。

例えば授業のカリキュラムには、「TOEICで何点取れる」「○という資格が取得できる」といった具合に予め目的が設定されていました。また、短期留学やインターンのプログラムにも、「こんな体験ができます」「就職に有利な○力が身につきます」とメリットが具体的に明記されていました。
そうしないと、学生が集まらないのだそうです。

○実用至上主義の"副作用"を回避するためには?

勉強も、インターンも、アルバイトも、旅行も、「○のために」する。あらゆるアクションには目的やメリットが設定されており、それがないもの、あるいはコストに見合ったリターンを得られないものは、すべて「無駄」「意味がない」となってしまう……。これが先に"実用至上主義"と呼んだ考え方であり、大学に限らず、この風潮は近年ますます強まっているように感じます。

確かに効果はわかりやすいし、「コスパが高くてお得!」と感じられるのかもしれません。しかし、一方でこれは非常に息苦しい考え方だと思います。なぜなら、そこには「余裕」「遊び」「猶予」「余地」といったものが全然ないからです。

例えば「関節がガチガチに固い人」や「内部構造に遊びのない建造物」を想像してみてください。
……どうでしょう。衝撃を吸収する余地がないため、転んだり揺れたりしたときにものすごく弱そうですよね。実用至上主義も、イメージ的にはそんな感じだと思うわけです。

自由を与えられても、何をすればいいのかわからない。イレギュラーな事態が起こると、心身がフリーズしてしまう。失敗すると一気に崩れてしまうし、教えられてないことはできないし、誰かに指示されないと動き出すことができない……。

これは実用至上主義の悪しき"副作用"だと思うわけですが、こういった事態を回避するためにも、ぜひ身につけたいのが「探索能力」です。

○探索能力=「自分なりに何とかする力」

探索能力──。
それは自分で意味を見出したり、自分なりに筋道を立てたり、推理したり、試行錯誤したり、状況に適応したりする力のことです。料理に例えるなら、「レシピ通りに材料を用意して調理する力」ではなく、「冷蔵庫の中にある具材で何かを作れる力」というイメージです。トミヤマさんが提示してくれたアイデアは、まさに探索能力を鍛えるにうってつけだと思います。よくわからない本を我慢して読み進めてみる。すると徐々に理解が進んできて、自分なりの意味や解釈が生まれたりする。あるいは、個人経営のお店で非マニュアル系のバイトをしてみる。最初は何をすべきかわからなくても、仕事の流れやまわりの人たちを観察する中で、やるべきことや改善すべき点が段々と見えてきたりする。そういうことが確実に起こるからです。


つまり探索能力とは、「自分なりに何とかする力」のことです。確かに具体的で即効性のある能力じゃないかもしれませんが、これをしっかり磨いておけば、就職にも、仕事にも、恋愛にも、人間関係にも、めちゃくちゃ役に立つと思います。

さらに、何よりこれがあると、人生が楽しくなります。「未来のために現在を犠牲にする」のが実用至上主義のスタンスだとしたら、探索能力とは、「今この瞬間と向き合う」ためのものだからです。よく考えたら、人生とは"今"の連続でしかありません。それと向き合い続けるのは労力の要ることですが、面倒くささの先にしか楽しさはありません。

時の流れが速く感じられて焦るのは、おそらく「何もしないまま一年が過ぎちゃうよ!」という恐怖心が原因でしょう。それを防ぐには、やはり"今"という時間と向き合い続け、自分なりにそのつど意味を見出していくより他はないと思うわけです。


そのためにも、ぜひ探索能力を磨いてみてください。「自由すぎる夏休み」の今こそ、その最大のチャンスだと思うので!

清田隆之/桃山商事
1980年、東京生まれ。失恋ホスト、恋のお悩み相談、恋愛コラムの執筆など、何でも手がける"恋バナ収集ユニット"「桃山商事」代表。男女のすれ違いを考えるPodcast番
組『二軍ラジオ』を更新中。雑誌『精神看護』やウェブメディア「日経ウーマンオンライン」「messy」などでコラムを連載。著書に『二軍男子が恋バナはじめました。』
(原書房)がある。
Twitter @momoyama_radio

トミヤマユキコ
ライター・大学講師。「週刊朝日」「文學界」でブックレビュー、「ESSE」「タバブックス」でコミックレビューの連載を持つライター。早稲田大学などでサブカルチャー関連講義を担当する研究者としての顔も持っている。「パンケーキは肉だ」を合い言葉に、年間200食を食べ歩き『パンケーキ・ノート』(リトルモア)にまとめた。Twitter @tomicatomica

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