ソニーモバイル、合弁会社「エアロセンス」のドローンにカメラ技術を提供
ZMPとソニーモバイルコミュニケーションズは24日、合弁会社「エアロセンス」に関する記者説明会を開催した。エアロセンスではZMP、ソニーモバイル両社の技術を活かした、ドローンとクラウドを組み合わせた法人向けサービスを展開していく。本稿では、都内で開催された記者説明会の模様をお伝えする。
○スマホ以外にも成長領域を
エアロセンスは、ソニーのカメラ、センシング技術、通信ネットワーク、クラウドサービスの経験、ロボット開発におけるノウハウと、ZMPの自動運転、ロボット技術、産業分野へのビジネス経験を活かして事業を展開する合弁会社。自律型無人航空機(いわゆるドローン)による画像撮影と、クラウドによる画像データの処理を組み合わせた産業用ソリューションを開発・提供する。サービスの開始時期は2016年を予定している。
ソニーモバイルコミュニケーションズの十時(ととき)裕樹社長は「弊社ではスマートフォンを主力に展開しているが、このままでは将来、成長がのぞめない可能性もある。そこで、新規事業の創出にも積極的に取り組んできた」と話す。
新規事業の選択肢のひとつには、ドローンの開発も含まれていた。ZMPの谷口恒社長は「十時さんから“ドローンを開発している”と聞いたときは、興奮してしまった」と笑顔を見せた。両社によるプロジェクトがスタートしたのは、それから間もなくのことだったという。
エアロセンスが提供するドローンの強みのひとつは、フライトパスの自動作成、自動離着陸、自動飛行、自動撮影ができる点。谷口氏は「全てのフローを自動化しているため、熟練したオペレーターが必要なくなる。コストがかからず、ヒューマンエラーも防げる」とそのメリットを解説した。このほか、計測から解析まで、ユーザーが必要とするソリューションをパッケージで提案できる点も大きな強み。ちなみに高精細なイメージング、高速無線データのアップロード、クラウドサービスとの連携には、ソニーモバイルの技術力が遺憾なく発揮されている。
谷口氏は、ソニーモバイルとZMPの技術資産の活用例として「高感度・高機能なソニーの積層型CMOSイメージセンサーExmor RSと、統合型拡張現実感技術SmartARを活用すれば、GPSを使わなくても安全に自立飛行できる」と解説している。●多岐にわたる事業領域
○幅広い事業領域
同社が取り組む事業領域は、建築・点検、土木・鉱業、監視・警備、農業、物流・運搬など幅広い。例えば土木の分野では上空30mからの空撮により、土量の算出などが可能になる。
建設分野では現場の状況把握のほか、空撮しただけで資材の計量も行える。農業の分野では、水田上を低空で自動撮影することにより稲の生育状況を把握したり、収穫時期を判断したりできるようになるとのことだ。
エアロセンスでは、ドローンとしてマルチコプター型を用意する。自律飛行性に優れているほか、ソニー製レンズスタイルカメラ「DSC-QX30」による高画質な撮影が可能。高速無線画像アップロード「TransferJet」にも対応している。
将来に向けた取り組みとしては、最高時速170kmを実現する垂直離陸型の開発も進めている。
●今後の課題は?
○安全面の担保が当面の課題
質疑応答には、谷口氏と、エアロセンスの佐部浩太郎取締役が対応した。競合他社との差別化要素について質問された谷口氏は「信頼性の高いハードウェア、自律飛行できる点などが差別化要素になっている」と回答。ビジネスの進捗状況については「ゼネコンなどと、事業モデルを構築している最中。2020年には、売り上げが100億円を超える企業にしていきたい」と話している。
今後の課題について、谷口氏は「安全面の担保」をあげる。「業界団体や専門家の先生と協議しながら、基準作り、法整備などを進めていくことになる。当面は私有地など、人のいない場所にドローンを飛ばすことを考えている」と谷口氏。
実績と信頼を積み重ねながら、ひとつずつ課題をクリアしていきたいと話していた。