iPhoneographerの肖像 - 「iPhoneで撮ると目に映った通りの写真になる」Satoshi H.さん
ーーかつてはマイコン少年でシャープのMZ1200を使っていたというSatoshi H.さん。中学生の頃、漫画『キャプテン翼』に感化され、大学入学までサッカーを続けていた時期はコンピュータやガジェットで遊ぶのからは遠ざかったていたとのことだが、大学のレポート提出に際して、MS-DOS、UNIXが動くコンピュータに触れ、そこからPC/ITの世界にどっぷり漬かるようになっていった。写真ももちろんずっと好きで撮ってこられたのだろうと思っていたら、その答えは意外なものだった。
Satoshi H. あんまり好きじゃなかったんですよ(笑)。
デジタルカメラが登場した時も、すぐに飛びつくという感じではありませんでした。カメラ付きの携帯電話も利用してましたが、機能を使っても、写真を見るのはどっちかというと嫌いなほうでした。当時、あまり綺麗なものに見えなかったんですね。目に映ったものと写真として写ったものが全然違っていたので。それがすごく嫌で、記念写真をちょっと撮るくらいでした。
ーーそれが、一体、どんな心境の変化があって、写真を撮るようになったのだろう?
Satoshi H. 最初に買ったのはiPhone 3Gなんですが、その前はiPod touchを使ってました。iPod touchの操作感が好きだったので、日本でも販売が始まると聞いて即買いしました。その頃は今みたいな大行列ができることもなくて、横浜のヨドバシカメラですぐに買うことができたんですけどね。
買った時はカメラもどう使うのかよく分かってなく、仕事で利用できるメモツールとスケジュールの管理ツールくらいの認識でいました。Palmを愛用してたということもあるのですが、iPhoneもその延長線にあるって思ってたのですね。写真がいいなと思ったエピソードを話すと、初詣で川崎大師に行った時、立ってたお坊さんを急に撮りたくなったってことがあって。その写真が、自分で撮ったものじゃないような気になっちゃったんですよ。これ本当にオレが撮ったの?みたいな(笑)。その後も川崎大師で撮りまくってしまったってことがあったんです。どれもこれも自分が想像していた写真と違うという印象で、これならすごく楽しいんじゃないかって
ーー当時は「Big Canvas PhotoShare」(現在は配信を停止)という写真SNSの走りと言えるアプリをよく使っていたそうだ。そこで世界中の写真好きな人々を接点を持つことが出来たという。
ある日たまたま「Big Canvas Photoshere」のユーザーから「Flickrはやってないのか?」と訊かれたことからFlickrも始めてみたそうだ。その後、自身のブログを開設し、Flickrに投稿した写真を掲載していたところ、ドイツ発祥のフォトシェアサービス「EyeEm」から「写真が素晴らしい、是非、ウチのサービスを使ってほしい」という依頼が舞い込んだ。
Satoshi H. 当時はiPhoneアプリもなく、Webベースのサービスだったんですね。PCから投稿するの面倒だなとか思ってたんですが、ニューヨークのソーホーでお前の写真を展示してるよって案内を貰ったりして、ちょっと嬉しくなったりってことがあって(笑)。使い勝手悪いよ、ポストした写真が消えてることもあるとか、クレーム寄せて、しょっちゅう喧嘩してたんですけど、ある時、運営メンバーがビジネス展開したいってことで来日するってことがありまして。そこで渋谷でフォトウォークやって意気投合したんです。彼ら、写真好きなのはもちろんですけど、写真を含めたコミュニケーションの仕組みを作りたいと言っていて、それで僕もミートアップに参加したんです。今回採用された東京タワーの作品もミートアップの中で撮影したものでした。
その時は"アドベンチャー"というテーマで、世界各地で同じお題でいろいろなところを見て、皆で写真を撮って見せ合いましょうっていうイベントでした。自分が参加した日はたまたま雨が降っていて、あまり出歩けるって状況じゃなくて、東京タワーの中で雨宿りをしてたんです。その日はオーストラリアから来たっていうご夫婦も参加されてたんですが、彼らが秋葉原に自撮り棒を買いに行きたいってことになり、イベントから離脱するって話になったんですね。で、二人のために写真残して送ってあげようよって流れから、あの写真を撮ったんです。もともとプレゼント用に撮ったものだったので、まさかあれが選ばれるとはという感じでした。でも、なんとなくですけど、楽しいときに撮ってる写真が評価されるなあなんていう気がしてます。
ーー入念なロケハンをして撮るというより、その場のライブ感重視ということなのだろうか?
Satoshi H. 狙って撮るというより沢山撮るという感じでね。今回採用された自分の作品を見に、関内の駅まで行ったのですが、せっかくだから山下公園まで足を運ぼうと思い、行ってみたら、そこで延々カモメを撮ってました。
それこそ1,000枚くらい(笑)。沢山撮るので、良いものもあればそうでないものもあるのですが、その中から選り分けていくといった風にしてます。撮ったその場で見るのではなく、家に帰ってからじっくりとということが多いです。後で楽しいと言ったらいいのでしょうか。東京タワーの作品は偶然ああなったってところがあります。と言うのも、翌日からクリスマス用のライトアップが始まることになってたんですよ。ですので、偶々あの日、あの場所に居たから撮れたんです。雨が反射する雰囲気も良くて。
ーーお気に入りのアプリはあるのだろうか。自身のブログ「favLife with iPhone」では、沢山レビューを掲載しているようだが。
Satoshi H. いろいろ触ってますけど、標準の「カメラ」アプリに戻ってくるっていうところがあります。やっぱり早いですよね。ロック画面からすぐに起動できますし。それと、失敗してもいいかなって場合は、シャッター長押しの「バーストモード」でバババッと撮ってしまいます。どこかで良いの撮れてるだろうって(笑)。フォーカスがマニュアルで設定できるようになったのも嬉しいですね。
アプリではないのですが「Moment Lens」という外付けレンズが気に入ってます。ムービー用のレンズらしいんですけど、それを装着したらいい感じの作品が撮れたので。最近は各社からレンズの形状をしたデジタルカメラも出てますが、ああいうのあまり好きじゃないんですよ。iPhone本体のレンズを通して撮影するのがいいなと思っているので、あの手の使うのであったら外付けレンズを利用します。ーーブログの情報量には正直、舌を巻いた。情報収集は、どのように行っているのだろうか?
Satoshi H. カメラアプリばっかりですけど、すぐ試してみたくなるんですよ。ダウンロードしたらすぐ使いたくなる。外に出るのが好きで、雨の中でも撮りたくなる。でも、1人で撮るよりも、みんなで集まって撮るほうが、いい作品になるような気がしてるんですよ。ワイワイやりながらも、撮ってる間は、皆、静かに集中してるていうね(笑)。
ーーミートアップが大好きとのことだが、そこに集まる仲間とSatoshi H.さんは持ってくる機材が違うという。他の人はデジタル一眼レフを使っていることが多いらしいが、「重いから」という理由でiPhoneを使っているそうだ。
Satoshi H. 光学ズーム機能を使いたくて、デジタル一眼を購入したのですが、最初だけでしたね(笑)、すぐ飽きちゃいました。重いってこと以外にも、撮影から帰って、SDカードを抜いてパソコンに挿して、ハードディスクに転送してっていう一連の作業が面倒で。iPhoneだったら自宅に戻ったときにはiCloudフォトライブラリに上がってるわけじゃないですか。あれはやっぱり理想的ですよね。何もしなくていい(笑)。
ーーiPhoneを使っていて、他に良いなと思うのはどんなところなのか訊いてみると。
Satoshi H. カメラだけじゃなくて、天気も分かるじゃないですか。先ほど雨の中でも撮ることあるって言いましたけど、どしゃ降りの中はやっぱり避けたいので(笑)。iPhone持っていれば大丈夫じゃないですか。「マップ」も単純に便利ですよね。あと、写真にジオタグつけられるのも、あとからどこで撮影したか分かるので重宝してます。EXIFの情報を消しちゃうアプリもありますけど、あれは残しておいて欲しいです。最近は動画にもハマっていて、iPhoneで撮ったものをYouTubeにアップしてたりしてます。編集もiPhoneの『iMovie』でやってます。動画編集ってやったことなかったのですが、こんなに簡単なんだと思いました。
ーー最後に今後やってみたいことについて伺ってみた。
Satoshi H. 山口県の角島に行きたいですね。海を渡る角島大橋っていう大きな橋があるんですけど、そこを撮ってみたいです。寒いところがちょっと苦手で、Macの壁紙に入っている北海道・美瑛町の青い池のようなところには行けないです(苦笑)。あと、次のiPhoneも欲しいです、絶対買います(笑)。iPhoneだけは毎年買い変えようって決意してるんですよ、それだけは譲れない。次のiPhoneでも沢山写真を撮りたいですね。
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