x86サーバーの事業展開やThinPadのデザインに隠された裏話を紹介 - Lenovo 米国開発拠点レポート
また2014年10月には、IBMからx86サーバー事業の買収を完了させた。x86サーバー事業の買収は、売却する側のIBM側にとって事業の整理と注力分野を転換するうえで意味のあるものだったという見方が多い。一方のLenovoにとっても、PC事業と同様にx86サーバー分野でシェア拡大が狙える、Win-Winの買収劇だったと言える。
そうして立ち上がったLenovoのエンタープライズ事業本部は、これまで自社で展開してきたThink Server事業との統合を終え、開発拠点の米ノースカロライナ州ラーレイに拠点を構えた。
とは言っても、もともとPC事業とx86サーバー事業はIBMから引き継いだもので、そもそも拠点自体は今も昔も変わらずラーレイなのである。ただ、Lenovoはx86サーバー事業に買収にあたって、同地域内に新たに建屋を構えて、IBMからの人的資産、物的資産を受け入れている。
今回は、LenovoがBuilding7およびBuilding8と呼ぶそのエンタープライズ事業所を見学するメディアツアーへと参加した。
○ハイエンドに強いSystem xを加え、サーバ市場全体でトップを狙う
さて、前述のとおり、事業所の所在地は米ロースカロライナ州にあるラーレイ(Raleigh)だ。英語の発音ではローリーが似ていて、ラーレイとローリーを混ぜるように発声するとうまい感じになる。国内のWikipediaでも、カナ表記はローリーと記載されているが、Lenovoはラーレイというカナ表記を使っていることもあり、今回はラーレイで統一している。
Lenovoは中国資本ではあるが、本社機能は中国と米国の両方にもっている。開発拠点も、このラーレイと中国、そして以前はIBM大和研究所として知られた日本にも継続して開発拠点が設けられている。
開発の主導権は米国側が強く、特にThinkPadやThinkCenterなどのThinkシリーズは、IBMの頃から変わることなく米ラーレイや現在は横浜にある大和研究所が開発の中心的な役割を担っている。x86サーバー事業においてもそれは変わらない。
ブランドは変わったが、事業そのものはIBMからやって来た人たちが継続的に動かしていると言っていい。結果としてPC事業がそれで成功を収めているので、x86サーバー事業においても同様の考え方を引き継ぐと言うことだろう。
今回、メディアへの対応を行ったのは、エンタープライズビジネス事業本部 エンタープライズシステム開発担当副社長のマイケル・ゲベル氏。彼もまたIBMからやってきた一人である。
ゲベル氏をはじめとする事業幹部は、買収過程からIBMが展開してきたSystem x部門とLenovoのThink Serverの統合に時間を費やした。ハイエンドサーバーに強いSystem xは、ハイエンドのカテゴリで見ればトップシェアと言ってもいい。ここに、LenovoのThink Serverというメインストリーム向けの製品を統合して、サーバー市場全体でトップシェアを目指すことになる。
現在はターゲットが重複していた製品などの整理統合を終えた段階で、製品ブランドとしてはSystem xとThink Sewrverが共存している。
これらのブランドをいずれかに統合するのか、あるいはまったく新しい名称を設けるのかは、今後の検討課題だとしている。
IBMの事業部のほとんどがLenovoへと移籍したことで、既存顧客に対するもっとも重要な対応は「これまでとなんら変わらない」点をあらためて説明することだったという。製品ラインナップはもちろんのこと、製品を作る人、製品を売る人、サービスや保守を行う人も継続していることを説明することで、顧客に安心して継続して使ってもらうことを重視してきたと説明する。
すなわち、"強い"ハイエンドサーバーの市場は決して手放すことなく、IBM時代は手薄とも言えたメインストリーム市場でのシェア拡大を目指すためのファウンデーションとする。サーバー市場全体で見れば、Lenovoより上にはDellとHPがいる。いずれはそこを追い抜いていくというのが、ゲベル氏の語るエンタープライズ事業の目標だ。
もちろん、シェアの拡大は根拠のない話ではない。Lenovoになったことで、これまでにはないPC向けの販売チャネルが活用できるようになる。
例えばクライアントPCの納入先にサーバーの営業をかけるとこも容易になる。スマートフォン、タブレット、PCと幅広い製品を持っていることで、それらと連携したサーバー運用の提案をしていけることを、新しい強みとしていくという。○施設内の様子を写真で紹介
公開されたLenovoのビルディングにはオフィスのほかに、さまざまな開発研究施設がある。メディアツアーのなかで案内されてはいるものの撮影が不可というエリアも多いため、それらはLenovoから提供された写真なども用いて紹介する。
○ThinkPadのデザインに隠された秘密を紹介
前述のとおり、ラーレイにはPC事情の開発拠点も以前より存在する。今回訪れた新しいエンタープライズ事業本部からは、車でおおよそ10分といったところ。ここでThinkシリーズを中心とするPC製品のマーケティングや企画が行われてる。現在は横浜にある大和研究所とも密接な関係を持ち、ThinkPadをはじめとする製品が生み出されてくる拠点だ。
PC事業本部でもふたりの同社幹部がメディアツアーに対応してくれた。ひとりは、ThinkPadビジネス事業部を率いるルイス・フェルナンデス副社長だ。同氏は、ThinkPadが何よりもまずビジネスのための機械だと強調したうえで、デザインの重要性についても触れている。遠くからみてメーカー名までを類推できるほどのノートPCを作れているのは世界でも2つのメーカーしかないと解説。それがAppleのMacBookとLenovoのThinkPadだと言う。
これは非常に重要なことで、ブランド価値の維持は今後も大切にしていくという。そのうえで、いわゆるクラシックなThinkPadのスタイルに加えて、X1 CarbonやYogaといった新しいスタイルのものも積極的に取り入れることで、カテゴリー全体の向上を目指していくとしている。
もうひとり、われわれの対応にあたってくれたのは、ThinkPadのデザイン分野では最大の大物とも言えるデビッド・ヒル氏だ。
同氏が当時のIBM PC事業に参画したのは1995年。以来、20年にわたってThinkPadのデザインを数多く担当している。現在の役職はLenovo 副社長 兼 PC事業本部/エンタープライズビジネス事業本部 CDO(Chief Design Officer)となっている。
その彼の口から出た驚くべき言葉は、誰もが赤だと思っていたThinkPadロゴにあるiのドット部分が、実は赤ではなかったという真相である。半分は笑い話なのだが、話題は「弁当箱」から始まった。いわゆる質実剛健なPCとして、ThinkPadは黒い弁当箱とも言われてきた。弁当箱と最初に呼んだのは日本人かもしれないが、この基本的なスタイルを生み出したのはドイツ人デザイナーであるという。「Bentobako」は、現在でも用語として通じるらしい。
そのドイツ人デザイナーは、常に赤をアクセントに加えていたという。そこでThinkPadのロゴにも工夫が加えられ、ドットが赤になっていた。
しかし、それは簡単には決まらなかった。そのデザインにダメを出したのは、当時のIBMで安全管理に携わる部署だったという。メインフレームにとって、赤い丸は緊急停止用の非常ボタンだ。そんなものをイメージするデザインはまかり成らんというわけである。そこで生み出したアイディアが、赤(RED)ではなく、IBMが規定していた色のひとつ「IBMマゼンタ(Magenta)」だと言い張ることだったという。結果、すべての書類やマニュアルはこのIBMマゼンタで通し、実物だけは赤に近づけていったという。
ヒル氏は製品のひとつひとつに思い入れがあり、BUTTERFLYで知られるキーボードのアイディアがいかにして生まれたかなど、さまざまな逸話をいくらでも語りたいという印象だった。
現地2泊で滞在時間は48時間に満たないものの、すでにあるもの、これから生まれてくるものなど、さまざまな視点で振り返ることができるツアーだった。
提供元の記事
- PCメーカーから変化するLenovo - モバイルとエンタープライズでの取り組みを加速
- 大河原克行のWindows 8 PC探訪記 - レノボ編 「開けてまず驚いてもらえる黒い箱」新しいThinkPad X1 Carbon担当者に聞く (1)
- 大河原克行のWindows 8 PC探訪記 - レノボ編 新時代で「変わった、と言われないための変化」 ThinkPad X240担当者に聞く (1)
- Lenovo、ファンクションキーが物理キーに戻った新型「ThinkPad X1 Carbon」
- レノボ・ジャパン、"Core M"搭載の2in1 PC「ThinkPad Helix」を国内販売