愛あるセレクトをしたいママのみかた

大手企業の採用は「短期決戦」に - マイナビ編集長に聞く2016年卒の就活

マイナビニュース
大手企業の採用は「短期決戦」に - マイナビ編集長に聞く2016年卒の就活
●選考時期の「逆転現象」が発生
2016年卒の選考解禁日から早1カ月。大幅なスケジュールの後ろ倒しを受けて、学生や企業はどのように動いたのだろうか。8月時点での2016年卒就職活動の概況をマイナビ編集長 吉本隆男氏に聞いた。

○後ろ倒しによる「逆転現象」とは

――今年から企業の採用活動のスケジュールが3月に広報活動開始、8月に選考活動スタートとなりました。後ろ倒しによってどのような影響が出ていると感じられますか?

二極化・短期決戦・長期化など、幾つかのポイントがあげられますが、一番影響が大きかったのは逆転現象ではないでしょうか。

――逆転現象とは?

昨年まではGW前後に大手企業の内々定がほぼ出そろい、その後中堅・中小企業の採用活動が本格化するという流れでした。ところが、今年は大手企業の選考開始が8月からとなり、中堅・中小企業の選考が先にスタートする形になったのです。

――逆転現象がもたらす影響は?

大手よりも先に選考活動を始めた中堅・中小企業では、7月の段階で採用目標人数を達成した会社も多くありました。
しかし、8月に大手の選考が始まった結果、内々定を辞退されてしまったというケースも見られます。特に、「今年は良い学生と接触できている」と感じた企業ほどその傾向は強いかもしれません。優秀な学生は大手企業にとっても欲しい人材ですから、第1志望の企業から内々定が出た場合そちらに流れてしまうのです。

とはいえ、大手企業も今年の採用はなかなか難しいようです。主要企業にヒアリングした結果、8月の前半時点で当初の採用計画に対して約2割ほど採用人数が不足している企業が多く、約半数の企業が、採用はまだ継続すると判断しているようです。場合によっては9月以降も採用活動を継続するケースも少なくありません。

●大手企業の採用は8月頭が勝負の「短期決戦」に
○選考活動スタートの8月以降の動き

――選考活動スタートの8月1日以降はどのような動きが見られましたか?

当初は、お盆ぐらいまで段階的に選考が進むケースが多いと考えていたのですが、蓋を開けてみると8月初旬の動きで命運が別れるほどの短期決戦になったケースが少なくありませんでした。1日の午前中に一次面接、午後に二次・三次があり、その日中に内々定を出すケースもあったと報告を受けています。
そのため、2日以降に選考を予定していた企業は、他社の内々定が先に出てしまい、面接を辞退されるというケースが目立ったようです。タイミング逸して、優秀な学生を採れず、現時点で採用予定数が達成できていない企業も多くあります。

――7月までに選考活動を終えた企業は、どのように内々定者のフォローをしていたのですか?

内々定者同士の親睦を深めるための懇親会や、先輩社員との面談会などを開いたケースがあります。もちろん8月1日に内定者懇親会などを開いた企業もありましたが、かつてのようにホテルに缶詰にするなどの極端な拘束はなかったようです。

――今年は「オワハラ」なども話題になりましたが……

自社に是非入社してほしい、他社の選考を辞退してほしいと思うのは採用する側にとっては自然な思いです。ただ、内定を出すかわりに就活の終了を強要するような極端な例は、それほど多くはなかったと見ています。

仮にそんなケースがあったとしたら、SNSですぐ拡散する御時世ですから、「オワハラ」をすることは企業側にとっても非常にリスクが高いのです。また、強引に引き止めて仮に入社することになっても、結果的にすぐ退職してしまう可能性は十分に考えられます。


○学生の動きはどう変わった?

――学生はどのように活動していたのでしょうか?

就活で一番リスクがあるのは、「売り手市場で先輩も大手企業の内定が出ているから、自分も大丈夫だろう」と思って大手企業しか視野に入れず活動してしまうことです。大手志望にこだわっていると大手企業の選考にもれて、8月の段階で持ち駒がなくなってしまい再度就職活動をやり直す必要に迫られます。その影響か、7月に開催した弊社の合同企業セミナーは、選考前ということもあり、来場した学生も少なめでしたが、8月では2日間で約2,000人と非常に多くの学生が参加しました。

――「サイレントお祈り」「サイレント辞退」という言葉が学生の中で話されているようですが、具体的にどのようなことでしょうか?

エントリーシートの不合格通知や選考時の不採用通知をする場合には、通常「今後のご活躍をお祈りしています」という文面が書かれているため、「お祈りメール」と学生から呼ばれています。中には不合格、不採用の「お祈りメール」すら来ないケースがあり、それは「サイレントお祈り」と呼ばれ、今年は、この「サイレントお祈り」が1つのキーワードになりました。また、8月に選考を受けて内々定をもらった学生が、既に内々定をもらっていた企業に辞退連絡をしない「サイレント辞退」という新たな言葉も生まれました。

●インターンシップで選考解禁に向けた下地作り
○インターンシップを実施する企業が多数

――後ろ倒しに対応するため企業が行った対策はどのようなものがありましたか?

採用広報が開始されるまでの長い準備期間に積極的に実施されたのがインターンシップです。2016年卒の場合は、昨年8月と今年の2月が実施のピークになりました。
2月に実施したインターンシップに参加した学生は、3月以降の個別会社説明会の参加率が高かったという調査結果も出ています。恐らく来年度に向けてもこの傾向は変わらず、大手企業に限らず、中堅・中小企業も活発に実施するものと考えられます。

今年はエントリー開始から選考まで5カ月間ありましたが、その間にも経団連非加盟企業は先んじて選考を行いました。それに対し、8月から選考を開始する企業は、リクルーターを活用したり、面談会、懇親会のほか、就活応援イベントを実施するなど選考解禁に向けた入念な下地作りを積極的に行っていたケースが少なくありません。

インターンシップについて、参加学生からは「企業理解を深めることができた」という意見が大半を占めています。今年は3月1日にエントリーがスタートし、企業の各種イベントが一斉に実施されました。学生はエントリーをしてからじっくりと企業研究をする時間がなかったのが事実です。その分、事前にインターンシップに参加した学生は、実際の職場の雰囲気も含めて、企業理解を深めることができたと感じているようです。


○終わりに

3月に取材したマイナビ就職 MEGA EXPOでは、企業の担当者から「目標人数を達成できるか不安」という声が上がっていた。選考前の活動に関しては、各社がインターンシップや面談会を積極的に実施し、学生の企業理解が深まるなど一定の成果を上げている。ただ、実際に選考が始まってみると、採用目標人数の約2割ほど不足している企業が多くみうけられ、明暗が分かれる結果となった。来年以降は企業側の8月初旬の選考スケジュール見直しを含めた新たな採用戦略の組み立てが求められそうだ。

提供元の記事

提供:

マイナビニュース

この記事のキーワード