剛力彩芽、初ミュージカルで歌に不安も「楽しい」 目指す役者像も語る
●「歌に乗せて伝える楽しさを感じている」
女優の剛力彩芽が、2011年に本格女優デビューを果たしてから10年が経った。昨年登壇したイベントで「役者として成長したい」と10年目の決意を語っていた剛力。9月9日に開幕する『#チャミ』では、ミュージカル初挑戦にして一人二役に挑む。本作への挑戦や、ストーリーにちなんでSNSとの向き合い方について話を聞いた。
『#チャミ』は、韓国発の癒やし系コメディミュージカル。平凡な主人公チャ・ミホと、彼女のSNSの中に存在する完璧な自分・チャミ(@CHA_ME)の物語をユーモラスに描く。ともにミュージカル初挑戦の剛力とDream Amiがダブル主演を務め、ミホとチャミの二役を交代で演じる。
ミュージカルを見るのは好きで、「いつか出たい」と思っていたという剛力。
「普通に話すよりも、音が乗ることでよりワクワクドキドキする感じがすごく好きです。人前で歌う自信はなかったけれど、いつか出たいと思っていたので、今回ミュージカルのお話をいただけてうれしかったです」と喜んでいる。
歌手デビューも果たしているので歌への抵抗はないのかと思っていたが、「歌は自信ありません」と本音を吐露。「アーティスト活動のときは、後ろからの音などいろんなものに支えてもらっていましたし、私はダンスがメインのアーティスト活動という感覚だったので(笑)。ミュージカルは歌がとても大切ですし、基本は生歌なので、不安というか、むしろ恐怖があります」と打ち明けた。
本稽古の前に6月から歌とダンスのレッスンを開始。「演技しながら歌うなんてできるのだろうか」という不安は残っていたものの、本稽古が始まると「楽しい!」と思えたという。
「アーティストのときは剛力彩芽としてステージに立ち、その思いを伝えることがメインですが、今回は言葉の延長線の歌。
歌に乗せて伝える楽しさを感じていますし、これは究極の話ですが、音を外してもちゃんと言葉や思いが伝わることのほうが大事なのだと思います」
一人二役への挑戦は「大変さよりも楽しさが圧倒的に上回っている」とのこと。「覚えないといけないことはたくさんありますが、ミホとチャミの両方を理解できているからこそそれぞれのお芝居が深くなるのではないかなと思います」とやりがいを感じている。●SNSは「うれしさと怖さが表裏一体」
SNSが欠かせない今の世の中を描き、激しい競争の中で他人との比較に疲れている現代人に「ありのままの自分を大切に」というメッセージを届ける本作。
剛力は「皆さんに共感してもらえる部分がたくさんあると思いますし、ファンタジーな部分があるからこそ、重く受け取られすぎず心に響くのではないかなと。音楽のジャンルも幅広く、ポップに軽やかに伝えられるからこそ心に響く。『#チャミ』のバランスはめちゃくちゃいいなと思います」と本作の魅力を語り、「本当に今のままで私は幸せなのかなって、明るく前向きに自分と向き合える気がするので、皆さんがいろいろと考えるきっかけになるとうれしいです」と期待する。
また、SNSについて「うれしさと怖さが表裏一体」と言い、「ミホのように自分じゃない誰かを作り上げることができ、自分を表現できるところでもあれば、自分以上の物を表現できるところでもある。そして、顔が見えない人とつながれる怖さもある」と、良い面と危険な面があると捉えている。
そして、「私はSNSが苦手な方だなと感じています」と告白。「まず、続かない。写真を撮るのは好きですが、見せたいものがあまりないというか、この仕事をしている以上、見せすぎるのもよくないんだなと感じていて」と投稿内容に難しさを感じつつ、「テレビ出演やお芝居している中で見られない部分が垣間見えるといいのかなと。やってみないとわからないこともあるので、これは良くなかったんだ、これは喜んでもらえるんだ、とやりながら細かいところにいかに気づけるかというのが大事だと思います」と、探りながらやっているようだ。
本作への参加でどのように成長したいか尋ねると、「二役を乗り越えられたら、ちょっと成長できると思います。頑張ったなって自信になるかなと。乗り越えられたら自分を褒めてあげたいです」と期待を込めて回答。
また、「この作品は演じる側がストーリーをしっかり理解していないと、伝えるべきものが伝わらず、とても薄い作品になってしまう気がしていて、演出家の方に『ここはこうですか?』と深く聞くようにしています。
それは今まであまりやってこなかったことなので、役へのアプローチは変わるのかなと思います」とも話した。
●「監督の期待以上のことができる役者でいたい」
女優の道を歩んできて約10年半。今につながっていると思う一番の転機を尋ねると、本格女優デビューとなったフジテレビの月9ドラマ『大切なことはすべて君が教えてくれた』を挙げ、「月9に出させていただき、しかもそこでショートカットに髪を切り、自分の中で衝撃的でした」と振り返る。
同ドラマの西浦正記監督との出会いは剛力にとって大きなものに。「オーディションのときから怖くて撮影中も厳しかったですが、愛情を持って指導してくださって、この人についていきたいと思って頑張りました。西浦監督がいなかったら、たぶんここまで役者を続けてなかったんじゃないかなと。土台を作っていただきました」と感謝し、「監督を納得させられるようになってから、またご一緒したいと思っています。まだできません(笑)」と語った。
ちなみに、女優を辞めたいと思ったことは「1回だけある」とのこと。「主演ドラマの現場があまりに良くなくて辞めたいと思ってしまったのですが、もう二度とこういう現場を作らないぞと、そう意識を変えました」。そして実際に、「みんなが楽しい現場を作りたいと常に心がけています」と、その経験を生かしている。
今後の目標を尋ねると、「とにかくお芝居することが好きで、自分がこうしたいというより、作品や監督のメッセージを伝えることがすごく好きなので、監督の期待に応え、それ以上のことができるような役者でいたい」と理想の役者像を説明。「笹野高史さんがすごく好きなんです。笹野さんがいると作品が締まるし、安心感がある。高畑淳子さんや、滝藤賢一さんもそうですが、私もそういった地に足の着いた役者になって、ずっとお芝居を続けられたら幸せです」と語った。
昨年9月に独立したことで、「覚悟はより強まりました」とも。
「それまでは守ってもらっていた部分が大きかったですが、今はすべて自分の責任になりますし、守っていかなければいけない存在もいるので」。今まで以上に覚悟をもって女優業を突き進んでいる剛力。初のミュージカル、一人二役への挑戦も多くの人に見てもらいたい。
ミュージカル『#チャミ』は、9月9日から21日まで、東京・自由劇場にて上演。
■剛力彩芽
1992年8月27日生まれ。神奈川県出身。2008年から2013年まで、雑誌『Seventeen』の専属モデルとして活動。2011年の本格的な女優デビュー作となったドラマ『大切なことはすべて君が教えてくれた』(フジテレビ系)を機に注目される存在に。
近年はドラマ『家政夫のミタゾノ』(2018)、映画『新 デコトラのシュウ 鷲』(2021)、舞台『No.9 -不滅の旋律-』などに出演。