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新iPhoneの予約好調アナウンスに裏アリ? 報道を鵜呑みにできない2つの理由

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新iPhoneの予約好調アナウンスに裏アリ? 報道を鵜呑みにできない2つの理由
●発売第一週で1000万台を突破
米Appleが9月14日(米国時間)に「iPhone 6sと6s Plus発売最初の週末の販売台数が昨年2014年の1000万台を上回る」と報告して話題になった。これについては「iPhone販売でAppleは今後も力強く成長できる」と評価する声がある一方で、昨年時点のデータには中国での販売台数が含まれず、今回は以前とは異なり具体的な予約数に関するデータを示していないことから、判断を保留するなど冷静な見方をしているアナリストや関係者も多く、意見が割れている。実際、Appleの発言の裏に隠された意図とはどのようなものなのだろうか。

○昨年水準突破のニュース

9月11日から全世界でスタートしたiPhoneの事前予約を受け、発売最初の週末(9月25~27日)の販売台数が昨年水準を上回るというのはApple側の公式声明で、CNBCなど複数のメディアが報じている。同社は昨年2014年に発売最初の週末での販売台数が世界で1000万台を突破したことを公表しているが、つまり今年2015年は1000万台以上の水準をキープする可能性が非常に高いということを意味している。

以前にも報じているように、Appleは2015年内のiPhone製造台数目標を昨年比13%増しの8500~9000万台程度と想定しているといわれており、今回の発売初週における販売台数はこれが実際に達成可能な水準かを見極めるための最初の重要なデータということになる。

普通に考えれば、少なくとも発売初週の勢いは昨年水準を突破したということでAppleにとっては好材料だろう。実際、これで評価しているアナリストらもいるが、Re/codeなどで示されているように、2つの理由でAppleの発表に疑問を寄せる意見もある。


●販売好調を鵜呑みにできない2つの理由
○販売好調を鵜呑みにできない理由その1

1つはシンプルな理由で、昨年2014年は日本を含む10カ国(プエルトリコ含む)で9月19日にiPhone 6/6 Plusが発売されたにもかかわらず、現在iPhone市場としては世界2位の中国では10月17日まで発売されておらず、先ほどの1000万台という数字に中国は含まれていない。だが今年2015年は、昨年の10カ国に中国とニュージーランドを加えた12カ国まで増加しており、昨年水準を上回るのは規定路線とみられているからだ。実際、CNBCが紹介している各国やキャリアごとのプリオーダー状況を調査したデータによれば、プリオーダー開始翌日の12日時点で中国のみすべてのモデルで納期が2~3週間または3~4週間となっており、(Appleが中国向けの台数を増やしているとみられるにもかかわらず)同国での需要が非常に高いことがうかがえる。

○販売好調を鵜呑みにできない理由その2

理由の2つめは、実際の予約数に関する声明をAppleが出さなかったことだ。例えば昨年の場合、Appleは発売最初の週末の販売数以外に、予約開始後24時間での予約台数が400万台を突破したことを報告している。

Re/codeによれば、Appleが予約台数を出さなかったのは過去5年間で今回が2回目で、前回はiPhone 5S/5Cが発売された2013年だ。この年、AppleはiPhone 5Cのみ事前予約を行い、iPhone 5Sについては予約を取らなかった。iPhone 5Cの販売状況が芳しくなかったのは周知の通りで、実質的にこの年にAppleが出せるような数字はなかった。


過去のiPhone販売台数の四半期ごとの推移はStatisticなどで参照できるが、両製品が発売された商戦期のApple会計年度で2014年第1四半期(2013年10~12月)の販売台数の伸びは低く、実際7%程度の(iPhoneとしては)低水準に収まっている。だが2015年に再びこの状況が再現されたことで、Sanford BernsteinのアナリストToni Sacconaghi氏が指摘するように「予約台数が400万台を下回っている可能性」を邪推する意見さえある。

またFortuneで紹介されているように、Appleの目標株価を172ドルに設定するなど(現在は116ドル前後)、同社に関して強気な予測をつねに出し続けているPiper JaffrayのGene Munster氏でさえ、世界全体では10~20%程度の販売台数のジャンプスタートが期待できる一方で、中国を除いた地域での成長率は0~10%程度を見込んでいるなど、iPhone 6s世代での成長は年率3%程度としている。

同氏の販売台数評価は概ね良好としているが、今回の昨年水準突破の主要因が中国頼みとみられる構図は変わっていないようだ。ただ、中国市場が同社にとって非常に重要であることはAppleも認識しており、昨年大陸からの買い占めと転売で問題となった日本と中国の発売日を同日に揃えたり、Barronsもコラムで触れているように昨年発売日が1ヶ月ずれ込んだ原因となった政治的な部分をあらかじめ解決してくるなど、最大の製品を最大の市場へと持ち込むにあたって万全の準備を整えている。ただし株式市場での反応は微妙で、同件が発表された9月14日朝に2%ほど同社株(AAPL)は上昇したものの、全体にダウ工業株30種平均(DJIA、Appleも2015年3月以降に30種の構成銘柄の1つ)の動きと連動している。Wall Street Journalもこの市場からの反応に言及しているが、ニュース自体は市場を驚かせるものではなく、むしろAppleに対して実際の数字を懸念させる材料となっていることを指摘している。

●話題はすでに次へ
○次のニュースに注目

すでに説明しているように、昨年の1000万台水準突破のニュースはAppleにとってプラスでもネガティブな材料でもない。
むしろ次の部分に話題が移りつつある。まずは冒頭でも出た2015年内のiPhone製造台数目標である8500~9000万台程度を達成できるかという点で、これが最初のハードルとなる。

1つめに、iPhoneには現状で製造問題が指摘されており、先ほどのiPhone予約状況をみればわかるように、昨年同様に大画面版のiPhone 6s Plusの需要が逼迫している。MacRumorsがKGI SecuritiesのアナリストMing-Chi Kuo氏のコメントを引用して伝える内容によれば、iPhone 6s Plusのバックライト部品のサプライヤの1社である日本のミネベア(Minebea)が同部品の製造に問題を抱えており、供給が現時点で逼迫している状態にあるという。

短期的とはみられるが、これが世界各国でiPhone 6s Plusの配送状況が「3~4週間」となっている原因と考えられる。Appleは販売初週に同モデルを150~200万台ほど用意する見込みだと同氏は予測するが、影響が一時的なものだと思われるのと、台数比率がiPhone 6sに傾いていることを考えれば、課題となる2015年中の総販売台数には大きな影響を与えない可能性が高い。まずはこのように、Appleが需要に応じた供給台数を最大の商戦期に用意できるかが注目ポイントとなる。

2つめはiPhoneに対する需要だ。
以前のレポートでも紹介しているように、中国での取り扱いキャリア拡大を実現し、すでに大きな伸びしろがない状況で、Appleがどこまで販売台数を上積みできるかに注目が集まっている。Force Touchなど新機能を搭載し、プロセッサやメモリまわりを強化したとはいえ、基本的にはマイナーアップデートとされるiPhone 6s。中国を含む世界経済の減速でスマートフォン販売の先行きが不安視されるなか、販売推奨金(Subsidy)がなくなり、米国でAT&Tを除く携帯キャリアで本来の価格を表示させられる状況になったAppleがiPhone Upgrade Programを発表して割高感の払拭に努めたりするなど、iPhoneをとりまく状況はやや厳しくなっている。

8500~9000万台という水準は13%の伸びを期待する一方で、Appleが昨年に引き続き2桁成長を達成できるかは多くが注目している。筆者はおそらく同時期に10%前後の成長は可能だと予測しているが、一方で来年以降もAppleがiPhoneで継続成長できるかは非常にチャレンジングな状況だと考えている。今後はiPad Proにみられたようなプロフェッショナルやビジネス分野への訴求、Apple Watchによる新分野開拓など、iPhone以外の分野をいかに伸ばせるかにかかっている。

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