外見は変わらずも中身は大違い、3D TouchはUIのターニングポイントに - iPhone 6sレビュー
最寄りのauショップからiPhone 6s/16GBの到着を知らされたのは、発売前日のこと。iPhone 6のときは、オンラインのApple StoreでSIMフリー/64GBを購入したが、VoLTEを含む回線品質に納得していたこと、家族通話の関係でau以外の回線を使う機会は少なかったこと、6カ月経過すればSIMロック解除できる可能性があることを考慮し、今回はauショップでの購入を決断したのだ。
帰宅してiPhone 6sを開封すると、そこにあるのは"ほぼiPhone 6"な端末。同色を選んだこともあり、外観が変わらないことは承知していたが、並べるとほぼ見分けがつかない。違いといえば、裏面に「S」のロゴがあること、レンズ下に見えるカメラモジュールの色が微妙に異なる(6sのほうが黒く見える)ことくらいなものか。14gという重量差はほとんど気にならず……というより気付かないレベル。0.2mm増えた厚みは誤差の範囲で、iPhone 6用のケースも無理なく装着できた。新色のローズゴールドでないかぎり、6と6sを瞬時に見分けることは困難だろう。
だが、いざロック解除して操作を開始すると、ある機能差が予想以上だったことに気付く。感圧機構を利用した「3D Touch」だ。9月9日の基調講演で流されたコンセプト映像で予感したとおり、Apple WatchのUIとは操作感もUIの方向性も大きく異なる。3D Touchについては、次項で詳細を述べさせていただく。
カメラは「Live Photo」がおもしろい。画面上部の「◎」をタップすると機能がオンになり、以降ふだんどおりシャッターを切ると前後1.5秒の計3秒が動画として記録される。シャッターを切る前から撮影が開始されているという理屈は理解したつもりでいたが、実際に使ってみると考えが変わる。
動画と静止画の差というより「絵本と飛び出す絵本の差」とでもいおうか、たとえわずかでも動きがくわわると写真の表情が変わるのだ。
シャッターチャンスを逃さないという利点もあるだろうが、それ以上に表現力・再現力の向上には目を見張るものがある。AirDropなどで他のスマートフォン/PCに転送すると、シャッターを切った時点の静止画が使用されるため、互換性の問題もない(PCでLive Photoを見たいという需要はあるだろうが)。実際に試してほしいiPhone 6sならではの新機能だ。
●UIのターニングポイントになる「3D Touch」
○やはり目玉は「3D Touch」
前述したとおり、iPhone 6sの目玉機能はやはり「3D Touch」だ。感圧タッチ機構自体はApple Watchで先行採用されているため、新味に乏しい感はあるが、iOSとwatchOSとでは感圧タッチを生かすアプリの実装もUIも異なる。watchOSのそれを想像していると、実際に利用したときのギャップに驚くはずだ。
まず、アプリアイコンを押し込むと現れる「クイックアクション」が使いやすい。「電話」であれば最近通話した人物3名と新規連絡先作成用のメニューを、「メモ」であれば新規メモと新しい写真、新しいスケッチを作成開始するためのメニューをポップアップメニュー風に表示する。
従来のiOSの操作スタイルであれば、目的の画面に到達するまで数回のタップを覚悟しなければならないが、クイックアクションを使えば"近道"できる。オールドMacユーザには、マウスをワンボタンから2ボタンに変更したときのような、といえばピンとくるだろうか。
アプリによっては、「Peek」と「Pop」の機能を利用できる。Peekは、画面にある要素を拡大表示する機能のこと。「写真」アプリを例にすると、モーメント/コレクション画面に表示されている小さなサムネイルを押し込むと、その画像がウインドウ状に拡大表示される。もうひとつのPopはPeekをさらに進める機能で、「写真」の場合はPeek中さらに指を押し込むと、その画像がフルスクリーン表示される。OS XにたとえるとQuickLookに該当する機能がPeekで、QuickLookの画面から先の処理に進む機能がPop、となるだろうか。
このクイックアクションとPeek/Popは、下表に挙げたアプリでサポートされている。
現在のところApple純正アプリのみだが、API(UITouchやUIKitクラスが拡張された)はサードパーティーがアクセス可能な形で提供されるため、いずれ対応アプリは増えるはず。感圧タッチ機構の採用が今後も続くという前提に立てば、3D TouchがiOSの操作体系における一大革新であり、UIのターニングポイントであることは間違いないだろう。
■3D Touch対応アプリ
●Apple A9のパフォーマンスを検証
○Apple A9のパフォーマンスは?
基調講演での発表時に使われたスライドに「Optimized for real-world use」と書かれていたように、AppleがSoC/CPUに求めるパフォーマンスはあくまで実体験向上が目的であり、いたずらに数値を追うものではない。だから、ベンチマークを測定することにあまり意味はないが、スペックの変更を確認する意味でベンチマークアプリを実行した結果をお伝えしておこう。
新しい「Apple A9」のCPUコアの動作周波数は1.85GHz。メモリ容量は2GB、L2キャッシュは3MBにそれぞれ増量されており、iPhone 6(1.4GHz/1GB/1MB)に比べパワーアップされている。基調講演のスライドによれば、CPUは最大70%高速化されてデスクトップPC並に、GPUは最大90%高速化されてゲームコンソール並になったという話だ。
演算性能を測るベンチマークアプリ「Geekbench 3」を実行したところ、iPhone 6はシングルコアが1621、マルチコアが2892。
iPhone 6sはシングルコアが2544、マルチコアが4424という結果となった。いずれも70%とはいかないまでも、53~55%強のパフォーマンスアップを確認できた。
GPUの検証には「3D MARK」を利用した(テストは「Ice Storm Unlimited」)。結果はiPhone 6の17122に対しiPhone 6sが28105と、約64%アップ。こちらも90%には及ばないスコアながらも、大幅なパフォーマンス向上を確認できた。
このように、iPhone 6sの基礎体力はiPhone 6に比べ着実に強化されているが、よほど要求スペックの高いアプリでもないかぎりパフォーマンス差を意識する場面は少ない。SafariにしてもTwitterやFacebookにしても、iPhone 6でじゅうぶんブラウジングやスクロールは快適だ。その意味で、3D TouchやLive Photosなど新機能に心惹かれないかぎり、あと1年iPhone 6を使い続けるという選択肢も悪くない。
しかし、明らかにパフォーマンス差を感じる場面が……それはiOS 9で導入された「低電力モード」。iPhone 6の場合、低電力モードに切り替えると追従性の低下は否めないが、iPhone 6sではあまり気にならない。「Geekbench 3」でiPhone 6sの低電力モードを測定したところ、シングルコアが1477でマルチコアが2482と、通常モードのiPhone 6を若干下回る程度であり、納得した次第だ。デバイスの構造上バッテリー容量が限られるだけに、速度はiPhone 6並だがバッテリーのもちは4割アップ、という低電力モードの活用は大いに「あり」といえるだろう。