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Instagramが"正方形縛り"をやめた理由

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Instagramが"正方形縛り"をやめた理由
●テスト段階では広告反応がかなり良好なInstagram

今後も82%が使い続けたいSNS、それがInstagramだ。カンター・ジャパンの調査によって明らかになった数字だが、「満足している」と回答した人も84%で、「他のSNSと比較しても好感度が高い」と同社デジタルソリューション シニア・アソシエイトの中川 直美氏は指摘する。

これは、同社とInstagramが共同で行った調査の結果であり、ユーザーのInstagramに対する直接的なイメージ、声も集めている。これによると、総評は「居心地の良い遊び場」とのことで、「(ユーザーの)お気に入り空間」「ちょっとした自慢が許される」「好きな情報が見つかる」「ビジュアルファースト」「本当に好きな人たちとのコミュニティ」という5つの要素がInstagramを表しているそうだ。

この心地よさは、2大SNSのFacebookとTwitterにはないものなのだろう。Facebookこそ運営元の会社で14.9億人のアクティブユーザーを抱えているが、Twitterのユーザー数は世界規模で言えば伸び悩んでおり、Instagramが9月に4億人の月間アクティブユーザーを発表したのとは対照的に、3億1600万人にとどまっている。

日本の月間アクティブユーザーは810万人で、カンター・ジャパンの調査結果では1日にInstagramを複数回開く人が54%、1回開く人が25%と、80%弱の人がInstagramを毎日閲覧していることになる。サービスの方針が"ビジュアルファースト"であることから、写真投稿に積極的なユーザーが多いことも特徴で、実に6割が写真を投稿している。
これは他のSNSが2割程度である数字と比較しても突出している。

○運用型広告がスタート

景気のいい数字が並ぶなかで、Instagramはこの10月1日から、企業向け広告メニューを全世界で開放した。これまでは、Facebookと取引のある代理店経由で、一部の企業のみ、テストマーケティングとして広告が運営されてきたが、9月の発表にもあるようにセルフサーブ(運用)型の広告が提供されるようになった。代理店を通さず、自社で運用できるようになる。

同時に提供する広告の種類も拡大。これまでは、複数の画像を1つの投稿に設定し、画像を送ることで場を広く見せられる「カルーセル広告」や、一般投稿に近いものをスポンサードとしてフォロー外のユーザーにも見せるだけだったが、新たに「リンク広告」「モバイルアプリ インストール広告」の提供を始めた。リンク広告は、画像や動画にリンクを付加し、それらをタップするとランディングページへと遷移する。CTAボタンも設定でき、「購入する」「予約する」「詳しくはこちら」「登録する」「ダウンロード」「お問い合わせ」など、遷移先に応じたボタンを設定できる。


一方のモバイルアプリ・インストール広告では、直接アプリストアに遷移する仕組みを用意。こちらも「インストール」などのCTAボタンを設定できる。

○ブランドリフト効果は他SNSよりをはるかに上回る

これまでのテストマーケティングでは、かなり良好な結果が見えたようだ。同社の先輩SNSとなるFacebookでは、精度の高いプロフィールからターゲティングの絞り込みが容易となっているが、これをInstagramでも踏襲。Facebookとのアカウント連携もあるため、こちらも高いターゲティング精度が期待できるとInstagram マーケティング サイエンス リードの小関 悠氏は胸を張る。

「これまでの広告実施の結果を見ると、規模・業種を問わずいい結果が出ている。全世界で数百、日本でも数十の企業の事例があるが、ブランド認知はニールセン調査で、平均よりも高い数字が出ている。とりわけ、広告認知で言えば、他のデジタルメディアが5%強であるのに対し、Instagram全体では20%弱、日本の結果は、調査母数が少ないが25%弱まで伸びている」(小関氏)

例えば、日本の革製品メーカーの土屋鞄製造所は、ブランド認知向上を目的にInstagramで広告を展開。
写真の中にはブランド名などを入れることができないのだが、文書の末尾にハッシュタグで「#土屋鞄製造所」と入れただけで、広告想起は29%、ブランド認知も6%の向上が見られたという。

「広告主の方は画像に名称を入れないことを不安に思うだろうが、Facebookのクリエイティブと協議して練り上げたこの投稿が、ハッシュタグによってブランド認知につながった。カルーセル広告も、クリエイティブ系の方に人気だし、やれることはたくさんある」(小関氏)

●コミュニティの要請に応えた"正方形縛り"の開放
Instagramが大事にしていることは3つある。「シンプルであること」と「クリエイティビティを触発すること」と「コミュニティファースト」だ。

「ユーザーの方はクリエイティビティあふれたさまざまなことをします。例えば寝相アートであったり、"壁部"と名づけて壁をみんなで撮り続けたり。そうしたクリエイティビティがInstagramを盛り上げる要素であり、私たちにもアイデアをもたらしてくれるものだと思っています」(Instagram アジア太平洋地区担当 コミュニティマネージャー 三島 英里氏)

創設者のケビン・シストロム氏とマイク・クリーガー氏が自分たち以外に最初に雇った社員は、コミュニティマネージャーだった。コミュニティファーストであるからこそ、彼らと密接に関わるマネージャーを起用し、その結果が、ユーザーが自発的に集まるイベント「Instameet」につながり、タイムラプスムービーを簡単に撮影できる「Hyperlapse」やコラージュアプリの「Layout」のアプリ開発に発展した。


最新のユーザーの声に対するフィードバックに、当初からこだわっていた写真の正方形縛りの"開放"がある。Instagramの正方形写真は、カメラのデフォルトのアスペクト比である4:3の写真が多いなかで、ある種のアイデンティティだった。そこを放棄した風にも取れるが、これは"コミュニティファースト"のInstagramだからこその決断であり、一方のユーザーも、Instagramの正方形に対し愛情を示しているようだ。

「正方形以外の"縦長"と"横長"の写真への要望、需要は非常に多くありました。もちろん、私たちとしても正方形はアイデンティティである続けてほしいと思っています。ですが、コミュニティのフィードバックは大変重要です。私たちの感覚ではありますが、縦長と横長への対応を発表した後、すぐにそれらの写真を投稿したユーザーさんがいる一方、正方形を愛してくれているユーザーさんも多くいらっしゃいます」(三島氏)

「ユーザーとつながり、いかにInstagramを楽しんでもらえるかを日々考えている」(三島氏)というInstagramだが、ユーザーの声に常に耳を傾ける姿勢は、今後もサービスの成長をもたらすことだろう。

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