16Lab、指輪型デバイス「OZON」の新型機を発表
ウェアラブルデバイスを開発するベンチャー企業16Labは、指輪型デバイス「OZON(オズオン)」の新型機を発表した。まずは開発者向けのデベロッパーキットとして年内にも予約を開始し、世界8カ国で販売を行う。その後、来年以降に一般向けの販売も行う予定だ。
OZONは、昨年のCEATECで公開された指輪型のウェアラブルデバイスで、新型機では本体幅を約30%削減。同社の誇る超低消費電力化技術を生かしてバッテリ駆動時間も20%向上させた。どんなにハードな使い方をしても、1回の充電で最低2日間はバッテリが持続するという。
内蔵する機能としては、3次元ジェスチャー機能、通知機能、電子鍵、決済といった4つの機能を提供。内蔵Bluetoothで対応する機器を指輪からコントロールしたり、ペアリングしたスマホの着信やメール受信などの通知を振動で知らせたり、NFCを使うことでPCやスマートフォンのロックを解除したり、NFCによるモバイル決済をする、といったことが実現できる。
ジェスチャーは内蔵のセンサーで空中で動かすことでその動きを認識。タッチセンサーをタップしたり、指を滑らすことでボタンを押すといった操作も可能。
同社の木島晃社長によれば、もともとの開発のきっかけは4年前で、スマートフォンメーカーがディスプレイにこだわっていることに違和感を覚え、カバンから鍵や財布を探すという動作に疑問を感じたことから、ディスプレイを省いたウェアラブル端末の開発を思い立ったという。
デバイスの形状として、最後まで時計型と迷ったという木島社長。ただ、時計は思い入れの強いデバイスであり、それと競合するのは得策ではないと判断したということで、空いている指に付けられる指輪型を選択したそうだ。
●精度に自信
同様の指輪型デバイスは世界中のメーカーが開発しているが、OZONの特徴はその精度だという。ジャイロセンサーや加速度センサーなどを搭載し、3次元の動きを高精度に認識できる、とする。ある投資家は、ほかのデバイスを実際にチェックした上で、OZONの精度が圧倒的に上回っていたことで、同社への投資を決めた、と木島社長はアピールする。
このジェスチャーは、Android OSのロック画面を解除する9点のジェスチャーに、さらに奥行き方向を加えた3次元を認識するイメージで、指輪がこの動きを認識してテレビなどのコントロールができる。Bluetoothを搭載するテレビなどの家電操作を想定しており、内部ではAndroid TVの操作はすでに実現済みだという。
赤外線リモコンを使うデバイスに対しては、中継機を提供することで操作を可能にし、「一定の時期より最近の家電はすべて操作できるようにしたい」と木島社長。中継機は今後、準備が整い次第発表する計画。
OZONの設計やデザインは16labが担当するが、実際の製造、量産はアルプス電気が担当する。昨年の発表時はプロトタイプレベルだったが、量産を前提とした製造を行っており、内部の基板、アンテナ、バッテリーといった基幹部品はすべて専用設計ということで、コストは高くなるものの、精度と安全性を高めたとしている。特にバッテリーは、円形の指輪型に収めるため、板状のバッテリを曲げるのではなく、円形の形状を想定した専用バッテリーを開発したという。
木島社長は、同社は独自の超低消費電力技術に優れているとアピールしており、これによって小型のバッテリーでも一定の駆動時間を確保。
2~3日のバッテリは十分に持つとしている。さらに、専用のワイヤレス充電機能も搭載。充電台に置くだけで充電できるようにした。
決済では、現在NFC Type A/Bを搭載しているため、Apple PayやAndroid PayのようなNFCのモバイル決済に対応できる。スマートフォン側で登録した決済のタッチでバイスとして利用することが可能だという。
●SDKの公開でアプリの開発を促進
日本ではFeliCaを使ったおサイフケータイが一般的だが、FeliCa認定のためのアンテナ出力が確保できないため、非搭載になっている。フェリカネットワークス側に基準の緩和を求めており、それが実現できれば、今後搭載していく方向だという。
こうした機能を実現するためには、アプリケーションやサービス側の対応が必要のため、まずはデベロッパーキットとして開発者向けに販売をし、SDKも公開することで対応アプリケーションなどの開発を求めていきたい考え。
すでに、プレミアムパートナーとしてトヨタ自動車とヤマハが参画。両社の製品を操作するインタフェースとしてOZONを活用していくという。昨年の出展以来、多くの企業からアプローチがあったということで、「来年の早い段階に、さらに1社が発表する」と木島社長。
OZONのデバイスとしては指輪型だが、簡易版の小型モジュールも開発。8mm角の小さな基板に通知機能に必要な実装がされており、OEMとして供給していく計画だという。すでにグローバルの高級ファッションブランドへの提供が決まっているそうだ。この場合、超小型バッテリーなら10日間、一般的なボタン電池なら1カ月は動作する、としている。
当初は、指輪としては1サイズのみの提供だが、今後複数サイズも用意していく考え。
専用設計ということで価格の安さは求めず、「スマートフォンよりは安くなる。2ケタ万円(10万円)には絶対にいかないようにしたい」という程度の価格になる見込みだ。なお、詳細なスペックは予約開始時点に明らかにする、としている。
こうしたデバイスは、実際に製品が登場してみないと評価できない部分ではある。木島社長らが強調する世界が実現できるか、実際の製品化が待たれるところだ。