「洗う」「たたむ」「しまう」を自動化する未来 - CEATEC 2015に洗濯物折り畳み機「ランドロイド」現る
○思いついたことは実現できる
ランドロイドは、セブンドリーマーズが2005年から企画をスタートし、現在はパナソニック、および大和ハウス工業と共同で製品化へ向けた開発を進めている、いまだ研究開発段階のプロダクトだ。今回は参考出品というかたちになる。
ランドロイドの企画をスタートしたキッカケは、SF映画などでは衣類の洗濯から収納まで、完璧にオートメーション化されているのに、折り畳んで収納する機械を実際には見たことがないと気付いたことだとか。「思い付いたことは実現できる」という信念のもと、特許などを徹底的に調べ、それに類する技術がまだ開発されていないと確認したときは大変喜んだそうだ。
セブンドリーマーズの計算では、人が生涯で洗濯作業に費やす時間は18,000時間、折り畳みに費やす時間は9,000時間。これを24時間で割ると375。
つまり、長い人生の中で実に375日分もの時間を洗濯物を畳むのに費やしていることになる。セブンドリーマーズの願いは、ランドロイドの実現により、人類をこの時間から解放することなのだ。毎日毎日休むことなく1日20分近くを折り畳みへ費やしているという計算に、首を傾げたくなる人もいるかもしれないが、短縮したい時間であることに異論のある人は少なかろう。
○「洗濯物を畳む」プロセスは意外に複雑
だが、洗濯物の折り畳みプロセスを調べていくうちに、衣類の種類を正確に認識して、さらにふさわしい形に折り畳むのは、意外なほど複雑な作業であることが判明した。折り畳みから収納までのプロセスは、「つかむ」「広げる」「認識する」「畳む」「収納する」の5つに分解できる。人間であれば衣類の一部をつかんだだけで、それがTシャツなのかズボンなのか、あるいはタオルなのかといったことは、おおむね正確に判別できる。「つかむ」「広げる」「認識する」のプロセスがほぼ同時に行われており、プロセスを意識することすらほとんどない。しかし、機械にはそれが困難なのだ。
試行錯誤の末、この5つのプロセスを画像解析技術とロボティクス技術を融合させることによって解決した。ロボットのアームで洗濯物をつかみ、広げ、洗濯物の形を画像解析して種類を判別、洗濯物の内容に応じて畳む。洗濯物1枚の折り畳みに要する時間は、現在のプロトタイプで8~10分程度だが、その半分以上を衣類の認識に費やしている。
衣類によっては識別しづらいものも当然あり、丸まりがちな靴下は比較的苦手。また、サイズの大きいシーツなどは、物理的なスペースを機械の中に確保するのが難しいため未対応なのだそうだ。
会場では実際にデモンストレーションが行われたが、まだ開発中ということで洗濯物はTシャツ1枚のみで実施された。ランドロイド内部の様子は企業秘密とのことで、モザイク画面で映し出されていたが、正直なところモザイクがきつすぎて、ロボティクス制御の実態はわからずじまい。ただ、衣類の解析に相当な時間を掛けていることはよくわかった。
人間なら子どもでもすぐに判別できることが、機械にとって困難だというのはなかなか興味深い。
○「しまう」まで自動化
セブンドリーマーズのロードマップによれば、2年後の2017年にフェーズ1として、折り畳み専用モデルをリリース。まずは冷蔵庫と同じくらいの大きさを想定している。このモデルでは、40枚の衣類を一度に処理可能になり、折り畳み時間もデモより短縮される見込み。
2018年にはフェーズ2として、介護福祉施設や病院といった施設向けに分配収納機能も搭載したモデルをリリースする計画。病院以外にも、ホテルなどでも歓迎されそうだ。
2019年にはフェーズ3として、洗濯乾燥機とドッキングしたオールインワンモデルを投入する。これにより、洗濯から折り畳みまでの一気通貫が実現する。
家電量販店にもランドロイドが並ぶようになれば、賃貸のワンルームに住む人でも導入可能になるかもしれない。
そして、東京オリンピックのある2020年にはフェーズ4として、各衣類が誰のものかまで識別し、部屋ごとの収納場所へ衣類を自動的に運んで収納するモデルを計画しているという。
セブンドリーマーズと大和ハウス工業、パナソニックの協業により、ビルトインタイプや独立設置タイプの開発が容易になったほか、販売やトラブルシューティングのノウハウなども期待しているとのことだ。その日着た衣類を、夜にランドロイドへ放り込んでおけば、朝には洗濯された状態でクローゼットに収まっている、そんな未来がもうすぐそこまで近づいている。なんともうれしい時代になったものだ。
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