Windows 10 Insider Previewを試す(第32回) - UI/UXの改善が顕著な「ビルド10565」登場
MicrosoftのGabriel Aul氏は2015年9月24日(以下すべて現地時間)の時点で「ビルド10550はまもなく開発を終える」と発言していた。その後Aul氏は「Windows 10は『挑戦的なバグ』を修正するため作業時間が必要だ」と、10月8日に発言している。Windows 10 Mobileの開発に人員を割いて、Windows 10は後回しにするのかと予想していたところ、10月12日に新ビルド「Windows 10 Insider Preview ビルド10565」のリリースを発表した。まずはMicrosoftの公式発表に沿って、ビルド10565の改善点を確認していく。
○Skypeの代わりとなる「メッセージング」をリリース
Windows 10開発時(ビルド10240以前)のMicrosoftは、アクションセンター経由によるメッセージの送受信が可能になるとアナウンスしていたが、いざ無償アップグレードが始まっても、そのようなアプリケーションは用意されなかった。別ラインで開発を進めているWindows 10 Mobile Insider Preview向けには、新たな標準IM(インスタントメッセージ)としてMessaging Skype Betaを2015年9月にリリースしている(当時の記事はこちら)。
だが、Messaging Skype Betaはモバイルデバイス向けアプリのため、Windows 10上では動作しなかった。筆者はMessaging Skype BetaのユニバーサルWindowsアプリ化を推し進めると思っていたが、実際は「Microsoftメッセージング(以下、メッセージング)」という新たなユニバーサルWindowsアプリを「ストア」経由で提供する手段を選択した。
メッセージングを起動すると、"Skypeとのメッセージ送受信が可能"であることが示され、Skypeディレクトリ経由でのユーザー登録などが行われる。その設定操作は極めてシンプル。悪く言えば基本的機能しか備えていないが、Aul氏は「Skypeとの音声通話やビデオ通話、メッセージの送受信が3G/4GやWi-Fi上で楽しめる。(中略)初期プレビューのため、いくつかのバグが残っているが今後は毎月更新プログラムを提供し、多くの機能を追加する」と説明している。実際に使ってみると違和感を覚える場面をいくつか体験した。例えばSkype for Windowsが起動している場合、メッセージなどを受信すると"メッセージングとSkypeが同時に反応"するため、戸惑ってしまう。もちろんSkype for Windowsを終了させ、自動起動しなければよいはずだが、メッセージングを起動していない状態では音声通話やビデオ通話の着信が分からないのである。Aul氏は「着信通知はアクションセンターに残るため、アプリケーションを開かずにインライン返信も行える」と説明しているが、筆者が試したバージョン(1.10.11001.0)では未実装なのかもしれない。
ちなみにメッセージは後から参照できる。
Aul氏も述べているようにメッセージングは初期のプレビュー版のため、今回使用した限りでは、"Skype for Windowsのアンインストールして移行すべき"とは、とても言い難い。少なくともアプリケーションオフライン時の着信通知機能が安定動作するようになってから移行しても遅くはないだろう。
●一歩ずつ成長する「Microsoft Edge」
○一歩ずつ成長する「Microsoft Edge」
ビルド10240時は必要最小限の機能を備えた「Microsoft Edge」は、Insider Previewのビルドを重ねることで1つずつ機能を加えてきた。今回のビルド10565では、4つの機能が加わっている。1つめはタブプレビュー機能。Microsoft Edgeで複数のタブを開いてから、タブにマウスオーバーするとWebページのプレビューが現れるというものだ。色々と試したところ同じドメインのサイトを複数開いている場合、それぞれのプレビューを同時に表示する仕組みのようである。
2つめはお気に入りとリーディングリストの同期なのだが、こちらの動作は確認できなかった。Aul氏は「ひと目で分かる」と説明しているが、Microsoft Edgeの設定項目も、「設定」の「アカウント\設定の同期」にも類する項目は用意されていない。念のため複数のPCでWindows 10 Insider Preview ビルド10565をインストールし、同じMicrosoftアカウントで異なるお気に入りやリーディングリストを作成して小一時間放置してみたが、特に変化はなかった。3つめはドラッグ&ドロップのサポート。以前のビルドはエクスプローラーがWin32アプリケーション、Microsoft EdgeがユニバーサルWindowsアプリのため、相互的にドラッグ&ドロップできずに不便を強いられていた。この点を鑑みたのか今回のビルドでは前述の機能を加えて、エクスプローラーからOneDriveなどへのアップロードを可能にしている。
4つめはコンテキストメニューに加わった<Save target as>だ。本項目を選択するとコモンダイアログが起動し、HTMLファイルや画像ファイルをそのまま保存可能になる。
このように後者2つの新機能は革新的というよりも、"Internet Explorerが供えていた機能をインポートした"と述べるのが正しいだろう。なお、前ビルドでは確認できなかった機能として、<詳細>メニューに<デバイスにメディアをキャスト>が加わっている。Xbox OneなどWindows 10のメディアキャスト機能に対応するデバイスを所有していないため、動作を確認していないが察するに、"Microsoft Edge上のメディアコンテンツをリビングのTVなどで再生する"機能だろう。
Microsoft Edge Devの記事によれば、レンダリングエンジンであるEdgeHTMLの改善も加わり、体感レベルだがWebページの表示スピードも速くなったように感じられる。筆者はメインWebブラウザーとして今でもMozilla Firefoxを使っているが、拡張機能の影響で正しく表示されないWebページを閲覧するサブWebブラウザーとして、Microsoft Edgeに信頼を置けるようになってきた。今後の実装予定にある"拡張機能のサポート"に期待したい。
●より使いやすくするためUI/UXを改善
○より使いやすくするためUI/UXを改善
Aul氏はCortanaのリマインダーに「インテリジェントインクノートを追加した」と公式ブログで述べているが、日本語版Windows 10 Insider Previewでは、その動作を確認できなかった。しかし、ノートブックには「配達」という新たな項目が加わっている。
試しにゆうパックの追跡コードを入力してみたが未対応のようだ。同氏の説明によれば「Cortanaは映画やイベントなどの開始を知らせる」機能として実装したようだが、残念ながら日本国内で試せるのは先の話になるだろう。さて、各図をご覧になると分かるようにタイトルバーの配色が変わっていることに気付かれたことだろう。「設定」の「パーソナル設定\色」に並ぶ<スタート、タスクバー、アクションセンター、タイトルバーに色を付ける>のスイッチがオンの場合、着色の調整が行われた。
このようなUI周りの微調整は各所に施されている。Windows 10 Insider Previewユーザーであれば、以前のビルドから新アイコンに置き換わっていることにお気付きのことだろう。Windows 10のアイコンデザインは紆余曲折があったものの、最終的にはスキューモーフィズム・デザインに先祖返りする道を選択したようである。
さらにスタートメニューのコンテキストメニューも変更が加わった。
サブメニューを追加したのはビルド10547だが、アクションを示すアイコンを加えている。またUIというよりもUX面の改善だが、「デバイス\プリンターとスキャナー」に"デフォルトプリンター"の選択に関する設定項目が加わった。こちらが有効な状態では、"最後に使ったプリンター=デフォルトプリンター"となる。
「設定」を徒然と眺めていると「ライセンス認証」に「プロダクトキー」という項目が新たに加わっていることも確認できた。筆者の検証環境はWindows 8.1からWindows 10にアップグレード後、Windows Insider Programに参加しているが、その場合のアクティベーション方式は「Digital entitlement(デジタル資格)」となる。
このロジックに関してはこちらのWebページでまとめられており、Windows 7/Windows 8.1の正規品からの無償アップグレードや、Windowsストア経由のライセンス購入、Windows 10 Proのライセンス購入、前述した筆者の環境はDigital entitlementとなる仕組みだ。また、量販店経由でWindows 10を購入した場合やMSDNサブスクリプション契約などは「Product key」となる。
この他にも数多くのバグ修正や既知の問題は多数残っているが、無償アップグレード開始直後のようなトラブルはかなり減ってきた。
そろそろCB(Current Branch)として、Windows Insider Program未参加の環境への提供も始まるのではないだろうか。阿久津良和(Cactus)