志田彩良、『ドラゴン桜』の絆は続く…鈴鹿央士、細田佳央太の3人で描く夢
●役づくりの方法を変えて臨んだ撮影
女優の志田彩良が主演を務める映画『かそけきサンカヨウ』(公開中)。『愛がなんだ』(18)、『アイネクライネナハトムジーク』(19)などで知られる今泉力哉監督が、窪美澄氏の短編集『水やりはいつも深夜だけど』の一編「かそけきサンカヨウ」を中心に、もう一編「ノーチェ・ブエナのポインセチア」のエピソードも重ね合わせた同作。早くに大人にならざるを得なかった少女・陽の葛藤や成長が、同級生の陸との“恋までは辿り着かないような淡い恋愛感情”を交えつつ、ひとつの物語として描かれる。
主人公・陽を演じるのは、今年放送されたTBS系日曜劇場『ドラゴン桜』で、父親からDVを受ける少女という難しい役どころに挑戦し、大きな反響を呼んだ志田。今作では、幼い頃に母(石田ひかり)が家を出て以来、父(井浦新)とふたりで穏やかに暮らしていたのだが、ある日「恋人ができた。その人と結婚しようと思う」と告げられ、父の再婚相手である美子(菊池亜希子)とその連れ子の4歳のひなた(鈴木咲)との生活を送ることになる少女を見事に演じている。
彼女は今回、繊細な10代の少女の気持ちが揺れ動く様をどのようにとらえ演じたのか。そして『ドラゴン桜』という注目度の高い作品に出演したことで今感じること、同作で共演した鈴鹿央士、細田佳央太と3人で語り合う夢の話を聞いた。
○■映画『かそけきサンカヨウ』出演に感謝と喜び
――最初に『かそけきサンカヨウ』の台本をもらった時の感想を教えてください。
台本を頂く前に窪美澄さんの原作を拝読したのですが、涙が止まりませんでした。陽の強い部分も弱い部分も愛おしくて、すごく素敵な作品だなと思いました。その後に台本を頂いて、その素敵な世界観にさらに今泉監督の色が加わって、また違う素敵な作品になっていたので、この作品に陽として携わらせていただけることがありがたくて、嬉しかったです。
――役作りを行う際、志田さんはご自身が演じる人物の背景を掘り下げて、ノートに書いていくそうですね。今回も同様の作業を行ったのですか?
おっしゃっていただいたように、今までは台本に書かれていない部分まで役を深く考えることが多かったのですが、今回はすごく繊細な10代の女の子の役だったので、その繊細さを出すためにどうすればいいんだろうなと思った時に、あえて、いつもみたいに深堀りするのではなく、その場で感じたことをそのまま言葉にして伝えたほうが、その繊細さが出せるのではないかと。父や、新しい母と妹との関係性については事前に考えましたが、セリフの言い回しであったり、“このシーンはこうしよう”ということは全く考えず、セリフだけを入れていって、現場での相手とのやり取りの中で感じたことをそのまま表現するようにしていました。
――これまでのやり方を変えることに怖さはなかったですか?
やっぱり不安が全くなかったわけではありませんが、今泉さんとはこれまでにもお仕事でご一緒させていただいたことがあり、現場では安心感がありました。
“今泉さんがいらっしゃるから、きっと大丈夫だ”と、すごく心強かったです。
○■陽と陸に重なる鈴鹿央士との関係性
――新しい母と妹を家族に迎えて家ではどこか気をつかってしまう陽にとって、長らく会っていなかった実の母に会いに行く時に一緒にいてほしいと思えたり、何気ない愚痴をこぼしたりできる陸の存在は大きいだろうなと感じました。志田さんには、陽にとっての陸のような存在はいますか?
陸役の鈴鹿央士くんは、『かそけきサンカヨウ』だけでなく、『ドラゴン桜』でも共演させていただいて、『ドラゴン桜』の撮影中にお芝居について悩んでいることがあった時、相談させていただいたり、「次のシーンこうしようと思うんだけど、どう思う?」と聞いたり、悩みも打ち明けられる存在です。陸と陽の関係性に私たちも実際近いのかなと思います。陸と陽みたいに“恋愛はどうなんだろう?” っていう関係は本当に全くないんですけど(笑)。
――そこは違うんですね(笑)。
お互いにそういった気持ちがないから仲良くできている部分もありますし、すごく信頼していて、尊敬している役者さんなので、そんな素敵な方が同い年で身近にいてくれることは刺激にもなり、大切な存在だなと思います。
――お話を伺っていると、鈴鹿さんのことを本当に信頼していることが伝わってきます。
撮影は『ドラゴン桜』よりも『かそけきサンカヨウ』のほうが前だったということですが、お二人は最初からビビッときて、仲良くなれたんですか?
実は、『かそけきサンカヨウ』の時はお互いに人見知りをしていて(笑)。演技の話をすることはあまりなかったのですが、その絶妙な距離感が陽と陸のリアルな関係性を出せたのかなと思います。その後に共演した『ドラゴン桜』を通して、お芝居の悩みを相談できるようになったので、『ドラゴン桜』での共演がなかったら、ここまで央士くんに色々なことを話せるようになっていなかったかもしれません。●一番の夢は「脚本を書いて映画を作ること」
○■『ドラゴン桜』出演で感じた“大きな変化”
――前回マイナビニュースで取材させていただいた時は、『ドラゴン桜』放送中の時期でした。注目度の高い作品でしたが、今改めて振り返ってみていかがですか?
『ドラゴン桜』に出演させていただく前と後では、自分の中でも大きな変化がありました。阿部(寛)さん、長澤(まさみ)さんをはじめとする共演者の皆さんから頂いた刺激はもちろんですが、TBS『日曜劇場』という枠で放送されるドラマを経験させていただいたことはすごく大きかったです。反響はとてもありがたいことなのですが、自分の実力ではなく、共演者の皆さんと、『ドラゴン桜』という作品の影響だったと感じているので、感謝の気持ちを持って、自分の活動で恩返ししていけたらと思っています。
――『ドラゴン桜』の小杉麻里役もそうですし、志田さんがこれまで演じてきた役は、精神的にツラい経験をしていて、演じるのにエネルギーをすごく持っていかれそうですね。
自宅に帰るとエネルギーを使っているのかなと感じることがあります。現場では朝からの撮影でも一日中同じテンションで、「ずっと元気だね」という風に言われることが多いのですが(笑)、家に帰った瞬間に眠たくなるので、すごく体力を使ってるんだろうなと感じます。
――役者の仕事は「別の人の人生を生きること」という風に言われると思うですが、“自分に戻ってきた”と感じる瞬間はありますか?
カメラが回っていない時はすぐに素の自分に戻ることができるので、『ドラゴン桜』では「カメラが回ってる時と回ってない時のギャップが一番大きい」って、共演者のみなさんから言われていました(笑)。ですが、次の日が重いシーンの撮影だと、“あのシーンはどうしようかな……”とずっと悩んでしまい眠れなくなることはよくあります。常にどこかで役のことを考えてしまっています。
○■鈴鹿央士、細田佳央太と描く夢
――完全に役を忘れるのは難しいかもしれませんが、“この時だけは他のことを何も考えないくらい幸せだな”と感じるのはどんな時ですか?
いとこの子供が1歳半なのですが、その子と遊んでる時間が一番楽しくて癒されるし、幸せだなって思います。休日はよく一緒に遊んでいます。ちなみに、昨日もお休みだったので遊んでました。
――お話されている笑顔で幸せなのが伝わってきました(笑)。1歳半だと、まだ名前は呼んでくれないくらいですかね?
「彩良って言ってみて」と話すと言ってくれないのですが……昨日、お別れする時に「帰らないで!」って泣かれてしまうので、気づかれないようにこっそり帰ろうとしたら、私の名前を呼びながら歩き回ってる動画が送られてきて! すごくかわいかったです(笑)。
――それはたまらないです(笑)。では最後に、今後実現したい目標を教えてください。
やりたいことはたくさんありますが、その中でも映画を作ってみたいと思っていて。脚本を書いて映画を撮ってみたいというのが一番の夢で、鈴鹿央士くんと細田佳央太くんと3人で監督をして、共同で一つの映画を作りたいという話をよくしています。
――細田佳央太さんも一緒に! 『ドラゴン桜』から青春が続いている感じがして、一ファンとして嬉しいです……。
ありがとうございます(笑)。
日常生活において、“この瞬間映画にしてみたい”って思った瞬間があったらメモして、3人で共有してネタ集めしています。それぞれ3人が色んな経験をして、人としても役者としても1人前になった時に実現したいです。
■プロフィール
志田彩良(しだ・さら)
1999年7月28日生まれ、神奈川県出身。2013年よりファッション誌『ピチレモン』の専属モデルとして活動。2014年、短編映画『サルビア』で初主演を務め、女優デビュー。2017年、『ひかりのたび』で長編映画初主演。2021年、TBS系日曜劇場『ドラゴン桜』で小杉麻里役を演じ、大きな注目を集める。そのほか、ドラマ『チア☆ダン』(18/TBS系)、『ゆるキャン△』シリーズ(テレビ東京系)などに出演。