TI、Cortex-A15ベースのプロセッサ「Sitara AM57xファミリー」を発表
Sitaraシリーズは同社のアプリケーションプロセッサ向けシリーズであり、Cortex-A8ベースながらコストパフォーマンス性を追求したAM335xとか、Cortex-A9に加えてPRU(Programmable Real-time Unit)やGPUを統合したSitara AM437x、Quad Core Cortex-A15構成で32bitアプリケーションプロセッサとしては飛びぬけて高い演算性能を誇るAM5K2Exなどが現在ラインアップされている。今回発表されたAM57xは、演算性能こそAM5K2Exには及ばないが、リアルタイム処理とマルチメディア機能を統合した製品ということになっている。
製品のターゲットはPhoto02に示すように、比較的高い演算性能とグラフィック性能が求められる部分である。要するにAM437xではやや演算性能が不足し、一方AM5K2ExではGPUを統合しておらず使えない、といった用途に向けた製品と考えれば良いだろう。
さてその内部であるが、演算部はDual Cortex-A15とDual C66 DSP、それにDual Cortex-M4とQuad Core PRUが搭載されるという中々重厚な構成である(Photo03)。ちなみにDual Cortex-M4のうち片方は電源管理用に使われ、もう1つはユーザーが自由にプログラミング可能ということになっており、例えばリアルタイム制御などに使える仕組みだ。
またPRUは複数の通信ポートを自分の配下で構成可能で、これを利用して(本体のGbEポートとは別に)10/100BASE-Tポートを利用するといった事も可能になっている。
周辺部としては、2.5MBのSRAMや暗号化アクセラレータなどに加え、特にグラフィックとビデオ入出力は強化されており、最大で2つのSGX544 GPU+GC320 2D、さらに6本のカメラ入力と4本のビデオ出力をサポートする(Photo04)。製品ラインアップとしては、GPUを持たないAM5716/AM5726、GPUを搭載するAM5718/AM5728の4系統5製品となる(Photo05)。消費電力ははっきりとは明言されなかったが、「通常このレンジの製品の場合、大体2W~10Wの範囲になる」との事で、今回の製品の場合500MHz駆動のAM5716が概ね2W前後、Dual Coretex-A15+Dual GPUのAM5728が10W程度となる模様だ。ちなみにTIからはLinuxとTI-RTOS、LinaroのTool Chain、OpenCL対応APIといったものが標準で提供される事になる。
開発環境としては、およそ199ドルの金額でBeagleBoard-X15が提供される(Photo06)。ただしBeagleBoard-X15単体は「2015年第4四半期の遅い時期」ということで実際には12月あたりまでずれ込むかもしれない。これに先立ち、このBeagleBoard-X15に7インチのタッチ液晶やカメラなどを組み込んだ「TMDXEVM5728」が、AM57xファミリと同じく10月15日より発売となる。
ただしこちらは599ドルになる予定だ。
ちなみに先に述べた通りTI自身はBSPとしてはLinuxおよびTI-RTOSのみを提供する形になっているが、これ以外にエコシステムからさまざまなOSやミドルウェアが提供される予定となっており、この中にはAndroidあるいはWindows Embeddedなども含まれるとしている(Photo07)。
さて、説明会での内容は概ね以上であるが、もう少しだけ補足をしておく。実はこの製品、本当はもう少し早期に発売を行いたかったようだ。実は記事公開前にすでに製品ページは公開されているし、これを搭載したBeagleBoaded-X15のページに至っては2014年11月に公開されている。またTIのE2E Communityではこんな質疑応答(リンク先参照)があり、少なくとも昨年11月の段階ではある程度動作する製品が存在していたのは間違いないと思われる。この辺を突っ込んだところ「我々は製品を出す正しいタイミングを図っていた」という公式見解が出てきたあたりは、要するに余りおおっぴらに言えない事情(通常はBug Fixなど)があったのかもしれない。実際Cortex-A15という、パワフルではあるが今となってはやや古いコアを利用しているのもこのあたりが関係していそうだ。
今だったら32bitならCortex-A17があるし、64bitならCortex-A57が相対的に手頃なコアとして利用できる。64bitについては「現状ではEmbedded Marketで64bitは必要とされていないと思う。もちろん将来ニーズが出てきたらそれに対応してゆく」としており、このあたりは今後の展開次第であろう。想定よりもやや遅れた(こちら参照の議論を見ていると、当初は今年2月~3月前後の発表を予定していたらしい)とは言え、32bitの汎用MPUとしては類を見ない高性能な製品なだけに、色々な展開が期待できそうである。
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