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ディズニープラスが目指すもの 新ブランド「スター」でも貫くディズニーらしさとは?

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ディズニープラスが目指すもの 新ブランド「スター」でも貫くディズニーらしさとは?

●物語性をしっかり審査希望やハピネスを大切に
動画配信サービス「ディズニープラス」において、10月27日から新ブランド「スター」の配信がスタートした。これまでのディズニー、マーベル、スター・ウォーズ、ピクサー、ナショナル ジオグラフィックの5ブランドに加えて、「スター」では、新たにディズニー・テレビジョン・スタジオ(ABC Signatureと20thテレビジョン)、FXプロダクションズ、20世紀スタジオ、サーチライト・ピクチャーズなどの制作スタジオの映画やドラマシリーズが配信される。

さらに10月14日に行われた「APAC コンテンツ・ショーケース」では、日本、韓国、グレーター・チャイナ(中国、香港、台湾)などアジア太平洋地域の優秀なクリエイターたちとディズニーが手を組んだ、オリジナルのコンテンツも「スター」で配信されることが発表された。今年8月には、世界の加入者数が1億1,600万人に達するなど、ますます勢いを増すディズニープラスの今後について、ウォルト・ディズニー・ジャパン代表取締役社長のキャロル・チョイ氏に話を聞いた。

確固たるブランド力を持つウォルト・ディズニー・カンパニーが、動画配信サービスに参入し、アメリカでディズニープラスがスタートしたのは2019年11月。そこから先述した5つのブランドの豊富なコンテンツを駆使し、世界中のファンを魅了してきた。さらには20世紀フォックスの買収により得た映像作品をはじめ、オリジナル作品までを含め「スター」ブランドとして配信するというのだ。

「まず『スター』というブランドは、消費者のニーズにこたえるものなんです。
英語が母国語ではない国では、どうしてもローカル言語のコンテンツが求められます。ただ、既存のブランドにはそれぞれ意味があり、消費者はそのブランドに期待を持っています。だからこそ、『スター』という新しいブランドで、日本の才能あるクリエイターと一緒に制作するローカルコンテンツを含め、いままでと違うゼネラル・コンテンツも提供し、消費者により多くの選択肢をご提供していこうという運びになったんです」。

コンテンツのバリエーションが増えることは消費者にとって大きなメリットであることは間違いないが、ディズニーという唯一無二のブランド力が、希薄になってしまうという危惧はないのだろうか。「ディズニーにとってストーリーテリング(物語性)は全ての“中心”にあります。また、ディズニーブランドは、ポジティブであること、希望やハピネスを大切にしています。ディズニーの本社があるカリフォルニア州バーバンクでは、必ずレビューセッションというものを行います。そこでディズニーが重要視する物語性やテーマに合うかどうかをしっかりと見極めることで、ディズニーの精神というものが、作品のなかに担保されていくんです。
これはスター・ウォーズなど他のブランドも同様です」

夢や希望、幸せというテーマが一見存在していないような作品も、ストーリーテリングで表現方法は広がるというのだ。先日行われた「APAC コンテンツ・ショーケース」では、閉鎖的な村社会で衝撃のサスペンスが展開する二宮正明氏のコミック『ガンニバル』を実写ドラマ化することが発表された。一見、ディズニーブランドとはかけ離れたようなコンテンツにも感じられるが、しっかりとその物語性と質は担保されているという。

「我々が『スター』を配信するにあたり、なによりも大切にしているのは『グッドストーリー(素晴らしい物語)であるか』ということなんです。まずはそこが一番重要なこと。『ガンニバル』に関しては、原作の魅力はもちろん、脚本家もディレクターもトップの方々です。ストーリーテリングも一流であり、素晴らしい作品になることを期待しています。ディズニーブランドではなく、『スター』ブランドの中に入る作品です。
もちろん、小さなお子さまがいるご家族が安心してサービスをご利用いただけるためにペアレンタルコントロールという機能も追加されます。とは言いつつ、仰るように、こうした作品は物議を醸すことになるかもしれません。でも今回の試みは始めたばかりのことなので、オーディエンスのリアクションをしっかり見て判断していくと共に、素晴らしい物語を伝えていくということを大事にしていきたいと思っています」

●配信業界に一人勝ちはないコロナ禍で想定外の変化も

2020年初頭から世界中で感染が拡大した新型コロナウイルス。新しい生活様式が提唱され、エンターテインメント業界にも、劇場がクローズするなど、大きな影響を及ぼした。そんななか、動画配信サービスは飛躍的に会員数を伸ばしている。

「報道にもありましたが、我々が想像している以上に、パンデミックによって消費者の行動の変化が急速に進み、現状は株主の期待を上回る結果が出ていると思います。ただ、それはディズニープラスだけではなく、どのプレイヤーにも当てはまることだと思います」

また、コロナ禍により劇場がクローズするなか、新作映画をディズニープラスで配信するという試みも大きな話題になった。一方で、劇場と同時にオンラインで配信するというやり方によって、一部の劇場で作品が上映されないなどという副作用も起きた。


「新型コロナウイルスは予定外のことをもたらしています。我々は、さまざまな社会状況に鑑みて、どうやって作品を消費者に届けるかを検討しています。作品によっては、劇場公開を断念して、ディズニープラスだけで配信したものもありました。配給会社の方々、お互いの立場やポジションを尊重しながら、オープンに対話を続けながら進んでいかなければならないと思っています」

ディズニープラスの参戦は、配信業界にも大きな影響を及ぼしている。さらに今回「スター」ブランドの配信により、コンテンツの幅は大いに広がる。

「私たちは選択肢を提供するにあたって、数で競争をしようとは思っていません。ディズニーというのは、すでに世界でトップクラスのエンターテインメントブランドであり、ライフスタイルブランドでもあるわけです。ディズニープラスにログオンすれば『アナと雪の女王』や『トイ・ストーリー』、マーベル作品を見ることができます。
そんななか、我々が目指しているのは、消費者と繋がりたいという目的があります。消費者がディズニープラスと繋がれば、どこでも好きな作品が見られて、楽しんでもらえるエンターテインメントがある……そういった世界を達成したいんです」

NetflixやAmazonプライム・ビデオなどの隆盛はもちろん、いまや配信業界の市場は大きな広がりを見せている。そんな業界のなか、ディズニープラスはどんな役割を果たそうとしているのだろうか。

「デジタル化が進んだ市場、例えばアメリカなどの消費動向を見ていると、動画配信サービスを1つ以上契約している人がとても多いんです。皆さんそれぞれの嗜好に合わせて、いくつかのサービスと契約をしています。その意味で、一人勝ちが起きないジャンルだと思っています。だからこそ、消費者の好みや行動をしっかり把握して、それに合わせて、魅力的なコンテンツを提供する必要があります。クリエイターにとっても、オリジナル作品を提供するプレイヤーが増えれば、それだけチャンスも多くなりメリットがあります。
こうして相互作用していくことで、この動画配信はまだまだ広がっていくと思います。そのなかで、ディズニーがすべきことは、他者を意識するのではなく、クリエイティブエクセレンスやストーリーテリングの強みを活かして、素晴らしいコンテンツを提供することに尽きるんです。そういう形で業界に存在感を示せればと思っています」。

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