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Microsoftが検討している「Windows 10 Mobile」を使った決済サービスとは

マイナビニュース
Microsoftが検討している「Windows 10 Mobile」を使った決済サービスとは
●Windows 10における2つのソリューション
The Vergeによれば、同誌を含めた共同インタビューの席で米MicrosoftエグゼクティブのJoe Belfiore氏が、Windowsプラットフォームでのモバイルペイメントサービスの導入について検討を進めていると語ったという。現在、モバイル分野のプラットフォーマーとしてはApple、Google、Samsungのほか、さまざまな事業者やキャリアが「ウォレット(Wallet)」と呼ばれるサービスを提供しているが、Microsoftもまたこのウォレット競争に名乗りを挙げることになるかもしれない。

○小売向けソリューションにおける2つのカバー領域

The Vergeによれば、本インタビューはRe/codeと共同で行われたもので、この席でBelfiore氏は「Windowsが(以前にWindows Phoneで持っていたような)ウォレットの仕組みを持つことになる」と説明している。

ただし、同氏は方式や実装方法については明言しておらず、(Windowsの)ウォレット内にクレジットカードやクーポン、ストアメンバーカードの情報を保持しつつ、どのような形で決済に関するシナリオがユーザーに対して提供できるかを模索している段階のようだ。

Windows 10では現在、こうしたオンライン/オフライン両方の店舗決済において、2種類のソリューションが想定されている。1つはリアル店舗向けサービスで、WindowsをPOSシステムとして活用した場合、それに必要な仕組みをWindows OS内に実装していくものだ。POSレジにおけるWindows OS(旧Windows Embedded POSready)のシェアは比較的高く、これを組み込み向けのWindows 10 IoTで吸収していこうとしている。Windows 10 IoTではチップ付き(EMV)、磁気ストライプ、NFCを含むクレジットカードリーダーへの対応のほか、Bluetoothプリンタ接続用のドライバ標準搭載などが行われる。
また、Windows搭載タブレットやスマートフォンを決済用のハンディPOSとして利用する「mPOS」の仕組みも検討されている。

2つめが、スマートフォンをクレジットカードやストアカード代わりに活用する仕組みで、いわゆる「モバイルウォレット」と呼ばれるサービスだ。1つまたは複数のアプリに、複数のカード情報を記録でき、適時切り替えて利用できるため財布がかさばらないというメリットがある。日本では「おサイフケータイ」の名称でFeliCa技術をベースにしたサービスが広く利用されている。

Microsoftでは以前にWindows Phone 8を発売した際、目玉機能の1つとして「ウォレット機能搭載」をうたっていたが、この仕組みは、結局最後まで北米で使えず、最終的にフランスの携帯キャリアであるOrangeが提供している「Orange Wallet」のサービスのみの利用にとどまっていた。Windows Phone 8の商業的失敗もあるが、NFC対応スマートフォンを取り扱う携帯キャリア側の事情もあり、Apple PayにおけるAppleほどの交渉力を持てなかったことに起因すると筆者は考えている。

●Appleらに続くサービスになるか
○Apple Pay、Android Pay、Samsung Payに続くサービスになるか

今回Belfiore氏がWindowsの決済システム導入について説明したのは、2つめの「モバイルウォレット」のこととなる。Apple Pay、Android Pay、Samsung Payなどの先行サービスに続くものだ。
今年4月に行われたBuild 2015では、カード情報を記録したWindowsスマートフォンをWindows 10 IoTベースのPOS端末のNFC対応カードリーダーにかざしてストアカードを読ませたり、クレジットカードによる決済を行うデモを披露していたが、この「カード情報を保存して決済に使える」という仕組みを、Microsoftが「Windows 10 Mobile端末」を持つユーザーに標準で提供していくことを目指していると思われる。

問題は、カード情報の保存方法と決済に使う際の通信技術だ。Windows Phone 8で採用されたOrangeのサービスは、Orangeが発行するSIMカードにカード情報を記録する方式を採用していた。現在欧州で広がっているモバイルウォレットサービスの方式はほとんどこれだ。米国ではSoftcard (旧ISIS)という携帯キャリア3社のジョイントベンチャーがこのSIM方式でのサービス展開を行っていたが、展開地域が少ないこともあり利用者が伸び悩み、現在ではGoogle傘下に入っている。AppleがiPhoneで提供している「Apple Pay」は、端末に内蔵された専用のセキュリティチップにカード情報を保存する方式を採用している。これと、iPhoneが持つ指紋認証のTouch IDを組み合わせ、バイオメトリクスによるNFC決済を行っている。この専用の内蔵チップを用意する方式は、日本のおサイフケータイで利用されているものと同じだ。


一方で、Android PayとSamsung Payは専用チップを本体に内蔵したり、SIMカードを使わず、ソフトウェア的にセキュアな領域をAndroid OSとは別に確保し、ここでトークンと呼ばれる一時的なカード情報を保管して決済を行っている。ハードウェア方式に比べ、ソフトウェア方式では安全性で劣るといわれているが、トークンには実際のカード情報ではなく「トークナイゼーション」という仕組みを使って仮に発行された別のカード情報が記録されており、さらに使用回数制限や使用期限が設けられることで安全性が担保される。カード情報の実体はクラウド側にあり、実際の決済はネットを経由して暗号化された情報をクラウドとカードリーダーの間でNFC経由で行ったり、あるいは前述のトークンを使って端末内に一時的に保管された決済情報をNFC経由でカードリーダーに送る仕組みを「Host Card Emulation (HCE)」と呼んでおり、徐々に実装が進んでいる。

Samsung Payの場合、カードリーダーとの通信にNFC以外の「Magnetic Secure Transmission (MST)」という通信も利用できる。これは、磁気カードリーダーに対して磁気カードに記録されたものと同じ情報を「無線経由」で送る仕組みで、NFC対応カードリーダーでなくても一般的な磁気カードリーダーさえあれば使える点でメリットがある。ただし、対応機種はSamsungのGalaxyシリーズの一部に限定されているなど、Android Payに比べて利用条件が厳しい。

●Microsoftが選ぶモバイルウォレットの方式
○どのモバイルウォレット方式を採用するのか

では、Windows 10 Mobileではどのモバイルウォレット方式を採用するのか。おそらくは、Android Payに近い「HCE」方式を採用する可能性が高いとみられる。
前述Orangeのように、携帯キャリアが自身の発行するSIMカードと組み合わせたウォレットサービスを引き続き提供する可能性は高く、仕組みとしてこれはそのまま残しておくだろう。一方で、Windows 10 Mobileの標準方式としてはHCEベースのウォレットアプリを搭載し、同OSを搭載したスマートフォンを持つユーザーであれば、誰でもクレジットカード等を登録してNFCによる店舗決済やオンライン決済が行えるようになるだろう。ただし、Apple Payなどの前例にあるように、サービス提供が行われるかは地域によって異なり、米国や英国でサービスが提供される一方で、日本では提供までしばらく待たなければいけないという事態も十分に考えられる。

また、Windows Helloによるバイオメトリクス認証とNFC/HCEを組み合わせた決済サービスになる可能性も考えられる。ただし、現状でWindows Hello対応デバイスのLumia 950/950 XLに搭載されているのは虹彩認証(もしくは顔認証)の仕組みであり、指紋センサーを搭載したWindows PhoneまたはWindows Mobile端末はリリースされていない。虹彩認証(もしくは顔認証)の場合、認証が行われるタイミングで正面カメラに目またはカメラを合わせる必要があり、必ずしもユーザーの真正面にNFC対応カードリーダーが設置されているとは限らないリアルの店舗スペースにおいて、有効機能するかは疑問だ。その場合、NFCを使わない決済方式の検討や、虹彩認証(もしくは顔認証)ではないバイオメトリクス認証の採用、あるいは端末で認証後数秒以内にタップ&ペイを行うよう決済フローを工夫するといったことが考えられる。

このほか、Buildで公開された資料やデモを見る限り、Android Payよりも幾分か使いやすくなるよう工夫されているのもWindows 10 MobileにおけるHCEの特徴だ。
Android Payでは決済にあたり、一度端末ロックを解除した後にウォレットアプリ(Andorid Payアプリ)を起動して決済を行う必要がある。つまり事前に下準備を行っておく必要がある。

一方でApple PayやSamsung Payはロックいかんにかかわらず、端末をかざすだけで決済が行えるようになっており(Touch IDに指を乗せておく必要がある)、その点でアドバンテージがある。これは日本のおサイフケータイも同じだ。Windows 10 Mobileではロック状態でもウォレットアプリを呼び出す仕組みが標準で用意されており、さらにWindows OSがNFC通信要求を読み取って適切なアプリ(この場合はウォレットアプリ)をフォアグラウンドに自動的に移動するようになっており、実質的にカードリーダーに端末をかざすだけで決済が可能だ。ただし、これでは端末をかざせば誰でも決済が行えてしまうため、Windows Helloのような仕組みを組み合わせる必要があるというわけだ。もしバイオメトリクスが利用できる認証センサーが端末に搭載されていない場合、Microsoft Passportに用意された「4桁PINコード」による認証を使う形になると考えられる。

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