スマートグラス「MOVERIO」と合体、完全モバイル視聴を試す - ドスパラ「Diginnos DG-M01IW」ロードテスト 第3回
サードウェーブデジノスの小型PC「Diginnos DG-M01IW」の特徴のひとつとして、約13時間駆動するバッテリを内蔵している点が挙げられる。同じくバッテリを内蔵したタブレットやノートPCとの違いは、映像出力用のディスプレイを搭載していない点だ。
従って、利用には外部ディスプレイとケーブルで接続しなければならないが、逆に液晶ディスプレイを搭載しないメリットもある。たとえば標準的なテレビや液晶ディスプレイではなく、設置場所や電源の関係でいままでPCとは無縁だった映像機器で使うことができる。ロードテスト第3回となる今回は、「Diginnos DG-M01IW」のちょっと変わった利用法について検証したい。
「これがPCなのか!」文庫本サイズの小型ボディにバッテリ内蔵 - ドスパラ「Diginnos DG-M01IW」ロードテスト
Windows 10版マインクラフトで遊んでみる! - ドスパラ「Diginnos DG-M01IW」ロードテスト 第2回
■主な仕様
[製品名]Diginnos DG-M01IW
[CPU]Intel Atom Z3735F(1.33GHz)
[メモリ]2GB
[ストレージ]32GB eMMC
[光学ドライブ]―
[グラフィックス]Intel HD Graphics(CPU内蔵)
[ディスプレイ]―
[OS]Windows 10 Home 32bit
[直販価格(税別)]19,800円
○カーナビ故障で接続できず……
実のところ今回の検証では、「Diginnos DG-M01IW」をカーナビに接続して利用してみる予定だった。カーナビ上でWindows 10の画面が表示されればビジュアル的にそれなりのインパクトがあり、さらにスマートフォンやタブレットで(標準では)プレイできないFlashゲームを動かして、「車中でも提督業がはかどるゼ!」的な内容を書こうと考えていたのだ(もちろん運転中のゲームはたいへん危険なので、くれぐれもお止めいただきたい)。
だが筆者が所有している車のカーナビに接続してみようとしたところ、カーナビ側のHDMI端子の不良で映像出力ができないという、とんだ誤算が生じた。
車中での活用法について検証できなかったのは残念だが、仕方がない。そこで「Diginnos DG-M01IW」で使ってみたら面白そうな映像出力機器はないものか探してみたところ、エプソンのスマートグラス「MOVERIO BT-200AV」があることに気が付いた。
「MOVERIO BT-200AV」はメガネ型のヘッドセットを装着することで、動画やアプリを大画面で楽しめるAndorid搭載のウェアラブルデバイスだ。2014年1月正式発表ということでOSのバージョンが少々古く(Android 4.0)、しかもGoogle Play非対応である点は少々不便なのだが、ネット動画やmicroSDカードに保存した動画を視聴するには問題ない。
アプリに関しても専用のアプリストア「MOVERIO Apps Market」からVR風のユニークなゲームやユーティリティを入手できるほか、Google以外のストアからならアプリもダウンロードできる。何より、場所を選ばずに自由な姿勢で映像を楽しめるのが最大のメリットだ。
「MOVERIO BT-200AV」はエプソンから実機を借りており、筆者は新幹線や飛行機など長距離の移動中に動画を楽しんでいる。説明が長くなってしまったが、要は「Diginnos DG-M01IW」と「MOVERIO BT-200AV」を使い、Windows 10をスマートグラスで使ってみようというのが今回の狙いだ。
●スマートグラスでWindows 10
「MOVERIO BT-200AV」はコントローラにバッテリが内蔵されているが、本体に映像データを送信する「ワイヤレスミラーリングアダプター」は電源に接続する必要がある。と言っても、「ワイヤレスミラーリングアダプター」は電源供給にmicroUSB端子を利用するタイプ。もしかすると「Diginnos DG-M01IW」のバスパワーで利用できるかもしれないとUSBケーブルで接続してみたところ、問題なく電源をオンにすることができた。電源供給と映像出力を「Diginnos DG-M01IW」1台でまかなった形だ。
「ワイヤレスミラーリングアダプター」から「MOVERIO BT-200AV」に映像を出力するには、専用アプリ「MOVERIO Mirror」を利用する。Wi-Fi Directを使って、ワイヤレスで映像を転送するのだ。
接続が完了すると、「MOVERIO BT-200AV」のヘッドセットから「Diginnos DG-M01IW」の画面が見えるようになった。スマートグラスを使うと、見慣れたWindows 10の画面がよりサイバーなものに感じる。
視線の先にはかならず大画面のデスクトップ画面があり、なんだか不思議な感覚だ。
さて、「MOVERIO BT-200AV」で見るWindows 10の画面は非常にユニークなのだが、ひとつだけ欠点があった。それは「MOVERIO BT-200AV」の解像度が最大960×540ドットで、映像が荒くなってしまう点だ。試しにWindows 10(Diginnos DG-M01IW)側の解像度を800×600ドットに変えてみたのだが、「MOVERIO BT-200AV」側で表示される映像サイズそのものもの小さくなってしまい、鮮明には表示されなかった。
「MOVERIO BT-200AV」と「Diginnos DG-M01IW」の組み合わせは映像が鮮明でないため、Webページや電子書籍の閲覧には向いていなかった。だがSD画質の動画の視聴や、タッチ操作主体でユーザーインタフェースの大きなゲームをライトに楽しむ場合、わりとアリだと言えるだろう(しかもサイバー感が高い)。
●ガジェット好きに試してほしい新機軸PC
今回試した「MOVERIO BT-200AV」と「Diginnos DG-M01IW」の組み合わせは電源供給に一般的なコンセントを利用しないため、その気になればモバイルで使うことができる。「スマートグラスでWindows 10」というのは、ガジェット好きにとって非常に魅力的だ。
しかし実際に活用する場合、「Diginnos DG-M01IW」と「MOVERIO BT-200AV」、「ワイヤレスミラーリングアダプター」に加え、マウスとキーボード(あるいはタッチパッド付きキーボード)をすべて持ち歩かなくてはならないという問題がある。
これだけ持ち歩かなければならないのなら、小型のタブレットやノートPCを使えばいいじゃないかという意見はごもっとも。だが「Diginnos DG-M01IW」のポテンシャルを検証するロードテストでは、さまざまな機器を組み合わせて、Windows 10の画面をスマートグラスに出力するという点に、ガジェット好きのロマンがあるといえよう(たぶん)。
そんな話はさておき、バッテリを内蔵した「Diginnos DG-M01IW」は多様な可能性を秘めた小型PCだ。前回の記事で紹介したように大型テレビに接続して使うもよし、あるいはUPS(無停電電源装置)付きの省電力サーバーとして活用するのもいいだろう。これまでに見たこともないPCであるだけに、「新しい活用法があるのでは」と感じさせるPCだ。