「Firefox 42」を試す - トラッキング保護含むプライベートブラウジング搭載
Mozillaは、11月3日(現地時間)にFirefoxの新バージョンとなる「Firefox 42」をリリースした。前バージョンの41からは、9月30日に41.0.1がリリースされている。さらに10月15日には、41.0.2がリリースされている。41.0.1のアップデート内容は、以下の通りである。
YandexツールバーとAdbrock Plusに関連した、起動時のクラッシュの修正(Bug 1209124)
Flashプラグイン利用時に起きる可能性のあったハングアップの修正(Bug 1185639)
ブックマーク作成に関する不具合の修正(Bug 1206376)
いくつかのIntelメディアアクセラレータ3150グラフィックスカードを利用している場合に発生する、起動時のクラッシュの修正(Bug 1207665)
Facebook利用時にときどき発生するグラフィックスの不具合の修正(Bug 1178601)
41.0.2では、セキュリティアップデートが行われた。
Fetchを用いたクロスオリジン制限回避[高]
Firefox 42へのバージョンアップは、41.0.2からとなる。本稿では、インストール手順や新機能などを紹介する。
○Firefox 42のインストール
自動的にアップデートが行われるが、手動でアップデートを行っておこう。
Firefoxメニューの[ヘルプ]→[Firefoxについて]を開くと更新が行われる。[Firefoxを再起動して更新]をクリックする(図1)。
新規に、Firefox 42をインストールする場合、FirefoxのWebページからインストーラーをダウンロードする(図2)。
[無料ダウンロード]をクリックし、保存したファイルをダブルクリックして、インストールを開始する(図3)。
特に難しいことはない。画面の指示通りに進もう。以降で、Firefox 42の新機能や変更点を見ていこう。
●Firefox 42の新機能
○Firefox 42の新機能
Firefox 42の新機能であるが、まず、注目したいのは、トラッキング保護機能付きプライベートブラウジングであろう。
すでにFirefox以外でも、追跡禁止宣言(Do Not Track)のような機能が搭載されている。これは、閲覧中のWebページのサイト側に、自身の行動の追跡を止めてほしいと宣言するものである。これを受け取ったサイト側は、閲覧情報や行動を利用しないというものである。しかし、あくまでもユーザーの宣言でしかなく、サイト側が対応しなければ、意味がない。事実、対応しないことを明言するサイトも存在するのが現状である。
今回、実装されたトラッキング保護機能は、プライベートブラウジングモードにおいて、Webページ中の特定の要素をブロックするものだ。Webページを閲覧すると、そのWebサイトとは別の多くの「サードパーティー(第三者)」企業によって、
アクセス解析
ソーシャルネットワークのボタン
ディスプレイ広告
などが行われ、ユーザーの行動履歴が追跡される。このデータからプロファイル化され、そのユーザーに効果的広告などが表示される。
これらのページ要素を意図的にブロックする仕組みである。実際にやってみよう。バーガー(メニュー)ボタンから[新しいプライベートウィンドウ]を選ぶ(図4)。
新たなウィンドウが開かれ、プライベートブラウジングモードとなる(図5)。
ページ上に紫の帯やマークが配置される。これで、通常のブラウジングモードではないことがわかるようになる。実際に、
表示履歴
検索履歴
Cookie
一時ファイル
が破棄される。そして、その下にはトラッキング保護が有効になっていることがわかる、いちばん下にある[動作の仕組みを見る]をクリックすると、図6のような簡単なツアーが表示される。
図6は2枚目の画面であるが、全部で3つの画面から構成される。時間もかかるようなツアーではないので、できれば見ておきたい。さて、ではいくつかのWebサイトで実例をみてみよう。一例として、Firefox OSのコミュニティのWebページを、プライベートブラウジングモードで表示してみた。ロケーションバーの左にある楯アイコンをクリックすると、コントロールセンターが表示され、このサイトは安全であることが表示される(図7)。
さらに[>]をクリックすると、認証局による詳細情報の表示も可能になる(図8)。
[詳細を表示]をクリックすると、詳細情報が表示される(図9)。
もし、そのWebサイトに問題がある場合、図10のような表示となる。
この例では、図6のようにWebページの一部が表示されないというようなことはなかった。もし、リスクを承知のうえ、問題のあるWebサイトの閲覧を続行するには[このセッションのみ保護を無効にする]をクリックする。こうすることで、一時的にWebサイトを完全な状態で表示させることができる。図10の例では、認証局が[なし]となっている。
筆者もいくつかのWebサイトを閲覧してみたが、大きく画面が崩れるようなWebサイトをみつけることはできなかった。一方で、この例のように認証情報が完全でないことから、安全でないと判断されるような事例が少なくなかった。今後、より確実な認証情報提供が行われるようになるだろう。
次の新機能は、パスワードマネージャ関連である。
まず、パスワードが設定されていないWebサイトでパスワードを入力すると、パスワードの保存の確認がでる(図12)。
ユーザー名とパスワードの保存タイミングの検出方式が改良された。筆者の感覚では、少し早くなったという印象である。さらにバーガーボタンから[オプション]→[セキュリティ]→[保存されているパスワード]で、保存されているパスワードを表示する。ユーザー名ごとに一覧が表示される。ここで右クリックでコンテキストメニューを表示すると、パスワードのコピー以外にも、ユーザー名などの編集が可能となった。
また、図13で[インポート]をクリックすると、IEやWindows版のChromeからパスワードをいつでもインポート可能となった。
また、音声を再生するタブには、スピーカのアイコンが表示されるようになった(図15)。
このアイコンをクリックすると、音声をミュートできる。地味な機能であるが、使い勝手はわるくない。その他の新機能であるが、WebRTCに関する以下の項目が改良された。
IPv6をサポート
ICE候補の生成と、サイトからのIP取得に関する設定が可能に
アドオン開発のために、allow/denyとcreateOffer/Answerへフックポイントが作成
getUserMediaで使用されているデバイスへの、アプリケーションからの監視と制御が向上
HTML5関連、開発者向けの新機能は、以下の通りである。
ES6のReflectが実装
ImageBitmapとcreateImageBitmap()が実装
HTML5のvideo向けMedia Source Extensionがすべてのサイトで利用可能に
HTMLのソースをタブに表示可能に
WiFi経由でのリモートデバッグが可能に。これによりUSBケーブルの接続や、ADBのインストールをすることなく、リモートデバッグが可能に
非同期呼び出しのコールスタックが表示されるように。これによりsetTimeoutや、DOMイベントハンドラ、Promiseのハンドラの処理を追いやすく
Web IDEでFirefox OSシミュレータのシミュレートするデバイスを設定可能に。これによりさまざまなスマートフォン、タブレット、TVをシミュレート可能に
CSSフィルタをプリセット可能に
CSSフィルタツールチップ内で、フィルタのプリセットを保存可能に
また、変更点として、スタイルの変更をを多用するサイトのパフォーマンスが向上している。
●Firefox 42のセキュリティアップデート
○セキュリティアップデート
42のバージョンアップでは、以下のセキュリティアップデートが行われた。
NSSとNSPRのメモリ破壊問題[最高]
ワーカーを通じた混在コンテンツWebSocketポリシーの回避[中]
コード監査を通じて発見された一連の脆弱性[最高]
Javaアプレット実行時のJavaScriptガベージコレクション中のクラッシュ[高]
Locationヘッダのホスト名に含まれる特定のエスケープされた文字がエスケープされてないように扱われる[低]
ZIPファイルを通じたlibjarにおけるメモリ破壊[高]
非標準Content-Typeヘッダ受信時のCORSプリフライト回避[高]
OS Xのアクセシビリティツールを使ったHTMLテーブル参照時のクラッシュ[中]
Android版Firefoxでのインテントを通じたXSS攻撃[高]
Androidインテントを使ってAndroid版Firefoxで機密ファイルを開けてしまう[中]
Canvasにおける画像操作時のバッファオーバーフロー[高]
IPアドレスホスト名末尾の空白文字による同一配信元ポリシー回避[高]
Add-on SDKパネル内のスクリプト無効化が機能していない[中]
Android上でのローカルHTMLファイルを通じた機密プロファイルファイルの読み取り[中]
Android版Firefoxのロケーションバーがフルスクリーンモード後に消されてしまう[中]
寛容なリーダーモードのホワイトリストに起因するCSPの回避[中]
NTLM認証を通じた情報漏えい[低]
さまざまなメモリ安全性の問題(rv:42.0/rv:38.4)[最高]
今回のバージョンアップでは、トラッキング保護機能というこれまでにない新機能が実装された。冒頭でDo Not Trackについてふれたが、あくまでもユーザー側の宣言であって、強制力はない。したがって、対応しないWebサイトは、追跡し放題であった。それに対し、もう一歩、踏み出した対策といえるだろう。
そして、もう1つ紹介しておきたいのが、64bit版のリリースである。これまでもβ版ではあったのだが、正式版のリリースと同時に削除されていた。42からは、FTPサイトからのダウンロードのみであるが、可能となっている。
実際に64bit環境にインストールしての印象であるが、それほど変わったという印象はない(プロファイルやアドオンもそのままで問題なかった)。当然ながら、メモリ消費量は増えている。16GBといった多くのメモリを搭載している環境では快適に使えるだろう。注意すべきは、プラグインなども64bit化が必要なことである。興味を持たれたのであれば、チャレンジしてもいいだろう。