携帯電話の料金値下げ議論、KDDIの田中社長が苦しい胸の内を明かす
KDDIは5日、2016年3月期第2四半期決算を発表した。現在、総務省では「携帯電話の利用料金の引き下げ」等についての議論が行われているが、KDDIではどのように対処していくのだろうか。同社の田中孝司社長が記者団に語った内容を紹介していこう。
○販売奨励金は必要
先日、総務省の主導で行われた第2回「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」では、高市早苗 総務大臣から「端末代金と通信料金が一体化しており、分かりにくい」「頻繁に端末を買い替える利用者にキャッシュバックを行い、長期ユーザーに重い負担がかかっている」といった指摘があった。
これについて、田中社長は「10万円もするような、ハイエンドなスマートフォンも増えている。したがって割賦で契約して、毎月払いにした方が嬉しい、というお客さんはたくさんいると思う。過度なキャッシュバックは避けるべきだが、ある程度の販売奨励金は必要」と回答。ただ「ほど良いところを模索している」とも話した。
○横並びの料金プラン
大手3社で横並びの新料金プランも批判の的になりやすい。これについては「横並びにするつもりではなく、1社がプランを出すと競合が追い付くという構図」と説明。ちなみに今秋、KDDIでは他社に先駆けて月額1,700円で1回5分以内の通話がし放題になる「スーパーカケホ (電話カケ放題プランS)」を導入。しかし、すぐにNTTドコモ、ソフトバンクが類似のプランで追従している。田中社長は「差別化は難しい」と苦笑いしていた。
長期ユーザーを優遇すると3キャリアで競争がなくなり、携帯市場がかえって停滞するのでは、という問いに対して、田中社長は「矛盾している議論だらけ。ほど良いところっていうのは、その時々で違う」と回答。
「安けりゃ良い、というのはその通りだが、ビジネスなので困ることもある。
安いプランを出すとMVNOにも影響が出る。総論としては、どこに重点を置くか、ということ。これが難しい」と本音と建前の間で揺れ動く、苦しい胸の内を明かした。
●100MBごとにデータ通信プランを刻んだら……
○料金プランには歴史がある
タスクフォースでは1GBから選べるプランなども議論されているが、これに対して田中社長は「再来週、タスクフォースのヒアリングがある。議論の行方を見守りたい。我々には、利用者に最適なプランをつくってきた歴史がある。スーパーカケホも出した。しかしまだまだ足らないのかな、という認識もある。
今日、ここで申し上げることはそのくらい」と回答。
決算発表会の直後には「料金プランも小刻みにやってきたつもりだが、これ以上細かくしたら、例えばデータ容量を100MBごとにしたら、従量課金プランそのものになってしまう」とボヤいている。
○国内の料金、社長は高いと思う?
記者から「田中社長は、現在の携帯電話の利用料金を安いと思うか、高いと思うか」と問われると、「グローバルで考えれば、利用料金の水準は先進国の中では中くらい。ただ日本国内のネットワークは世界で1~2番目に良い。その意味では、料金が高いということはない」と回答。「携帯電話の使い方は人それぞれ。課題はあるが、一概に高いとは思っていない」と続けた。
また「国が主導していることを、どう思うか」と聞かれると「我々自身が、お客さんの方を向いて、解決していかないといけない問題。
現状は足らないところがある、ということ。真摯にご意見を聞いていく」と答えた。
○契約更新月について
携帯電話の契約更新月を過ぎると、自動的に契約が更新されてしまう現在のシステムについては「解約を希望の方には、メールで伝えるなどの仕組みを導入したい」と回答。2年契約の契約更新月を、現行の1カ月から2カ月に延ばすなどの施策も考えているという。
総務省から「長期利用者には通信料金を還元した方が良い」という指摘があった件については、「色々な還元の仕方があると思っている。それらを踏まえて検討していきたい」と田中社長。ちなみに決算説明会では、長期利用者のデータ容量を増量する「長期優待データギフト」などの施策を紹介した。誰もが不公平を感じないプランになるよう、KDDIでは今後とも料金プランを工夫していく構えだ。