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年末のTV番組を20年見て日本を勉強 - マレーシア出身・京都在住クリエイターの働き方

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年末のTV番組を20年見て日本を勉強 - マレーシア出身・京都在住クリエイターの働き方
●京都の大学で博士課程に
3Dのグラフィックデザインを学ぶために、19歳で日本へ。現在はクリエイターとして、宣伝ポスター、Webデザイン、アニメーション、アート製作などを手がけるタン・ジェシー(TANJC)さん。仕事の幅は広く、大学講師や企業のコンサルタントとしても活躍しています。その実力を養ったのは、興味のある分野をとことん追求する飽くなき探求心。そして、外国人であるがゆえに見ることができる、日本の真の姿にありました。

■これまでのキャリアの経緯を教えてください。

19歳のとき、マレーシアから日本へ。東京で日本語学校に1年通ったあと、3次元コンピューターグラフィックス(3DCG)を学ぶために、山形の東北芸術工科大学に留学。
卒業後、恩師の「日本の本当の姿を見たいなら、都会、田舎、そして都に行きなさい」という言葉が忘れられず、日本の都である京都へ。京都精華大学の大学院に入学し、博士課程まですすみました。

大学院で僕が取り組んでいた現代アートは、作品ごとに表現方法も違えば、必要なスキルも違います。デザイン、映像、彫刻といった専門コースの枠を飛び越えたものだったので、僕ひとりのために「ファインアート」というコースを大学側が用意してくれました。この大学での学びが、今の僕の活動の基礎になっています。

現在は、フリーランスで活動しています。プロフィールには美術作家、デザイナーと記しましたが、手がけている仕事は多岐にわたります。グラフィックデザイン、アニメーション、映画、Web製作、雑誌デザインなど。
定期的に大学で講義もしています。最近では「白沙村荘 橋本関雪記念館」の企画展のポスター、チラシ、図録のデザインを担当。また「エア・フローティング・メディア」という、映像が空中浮遊する装置を共同開発しています。

京都に住んで15年です。出会って1カ月で電撃結婚した日本人の妻と2人の子どもの4人暮らし。家は、鴨川のすぐ近く。木造の2階建てで、畳の部屋があり、妻の作った和食を毎日食べています。

■現在のお給料について教えてください。


プロジェクトごとに報酬は様々です。なかには1時間の作業で30万という仕事もありました。ただこの仕事、割はよかったのですが、かなりハード。ポスター、チラシ、看板をすべてデザインし、1時間後に印刷所に入稿という超特急のスケジュール。ゼロから作り上げるクリエイターの仕事で、1時間という時間制限はかなり厳しい。でも、それまで様々な仕事で経験を積んでいたので、クライアントの要望に応えることができました。

毎月決まった給料制ではないので収入にバラつきはありますが、家族4人を養えているので、問題ありません。

■今の仕事で気に入っているところ、満足を感じる瞬間は?

家族と一緒に多くの時間を過ごせること。
また、日本人ではない僕の視点をいかすことができること。

そのことに気付かせてくれたのは大学2年のとき。CG作品のコンペで優勝したんです。このときのテーマは「東北の風土と文化」。日本人ではない僕は、東北のことをよく知りません。なので作品を作り始める前に、僕なりに1カ月かけて取材をしました。山形の民家に訪問し、お年寄りから話を聞き、昔の邦画もたくさんみました。その結果、審査員に「CGの技術はまだ低いが、雪国の厳しい暮らしと、そこで暮らす人の温もりがよく表現されている。
満場一致で決定だった」と言ってもらえたんです。

僕は外国人なので、先入観なしに取材相手の言葉を聞くことができる。取材相手も、外国人の僕だから、シンプルな言葉でていねいに説明してくれる。そのことが純度の高い情報を得ることができた理由だと思います。この経験は、僕の活動の原点です。

●日本人のように慎重になってきた
■逆に今の仕事で大変なこと、嫌な点は?

デザインをパッと見て、伝えたいことの世界観を理解してもらわなければいけません。つまり、クライアントが伝えたいことが何か、その意図を一瞬でわかるように表現するのがデザインです。そのためには僕自身が案件の中身を深く理解していなければいけない。
日々勉強に追われています。

また、クライアントや仕事仲間である日本人と、幼少時代に経験したものを共感できないときは寂しいですね。「これ、懐かしいよね」と言われても、僕にはわからない。この穴埋めをするために、毎年、年末にテレビで放送される「日本の○総集編」を見て勉強しました。不思議なもので、20年も見続けると、自分も経験したような気持ちになっています。子どもが生まれたら、さらに幼少時代の思い出も補えるようになりました。

■日本についてのイメージを教えてください。良いところはどこですか? あるいは理解し難いところなどありますか?
日本人はナイーブだと思います。
行動する前に考え過ぎますね。でも最近は僕も、日本人みたいに慎重になりすぎているなぁと思います。美術面でみれば、ナイーブさはプラスになると思いますが、ビジネス面でみるとワークホリックにつながると思う。マレーシア人で仕事中毒はあまりいませんね。家に早く帰りたいし、そのために早く仕事を終わらせることばかり考えていますから。

■最近TVやラジオ、新聞などで見た・聞いた日本のニュースは何? それに対し、どう感じましたか。

憲法改正など日本政府の政策が気になります。海外では「日本は戦争をしたがっている」と読み取っている人も多いように感じます。実際、マレーシアの友人にも聞かれたことがあります。

■あなたの「マストビジネスアイテム」を教えてください

マレーシアの家族の写真。僕が日本に来る前に撮影したもので、20年間ずっと、財布に入れています。2年前に同じ構図で撮影したので、2枚になりました。僕にとって家族は、チームのようなもの。タン家というチームが、いつでもどんなときでも、僕をバックアップしてくれている。そう思うと力が湧いてくるんです。

■休日の過ごし方を教えてください。

週に1日は、できるだけ家族に時間を割くようにしています。晴れた日にはピクニックに行きますね。

休日だけではなく、毎日の家事は妻と分担しています。幼稚園の送り迎えは僕の役目。夜9時に子供に絵本を読みながら寝かしつけて、僕も一緒に就寝。朝3時に起きて仕事、というのが僕のワーキングスタイルです。

■将来の仕事や生活の展望は?

将来は、両親、兄弟をふくむ家族みんなで、ひとつの仕事をしたいですね。そうしたら24時間、家族と一緒にいられるから。僕の人生で一番大事なのは、家族と一緒にいる時間なんです。以前テレビ番組で、亡くなる間際の人に「思い残したことは?」と聞くと「もっと家族と一緒にいればよかった」と後悔している姿を見ました。僕はそんな思いをしたくない。だから家族を大事にしたいんです。

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