愛あるセレクトをしたいママのみかた

大泉洋「まだ役者をやっている自分には慣れない」“得意じゃないもの”に挑戦し続けている感覚

マイナビニュース
大泉洋「まだ役者をやっている自分には慣れない」“得意じゃないもの”に挑戦し続けている感覚

●劇団ひとりと再タッグ「監督としての手腕が光りまくっていた」
バラエティ番組に出ればそのぼやき節で笑いをかっさらい、役者としてもコミカルからシリアスまで演じきり存在感を発揮する大泉洋。マルチな活躍で国民的人気を誇る彼だが、劇団ひとり監督・脚本によってビートたけしの自叙伝を元に映画化した『浅草キッド』ではたけしの師匠・深見千三郎さんに扮し、昭和の浅草芸人の生き様を見事に演じきっている。役者としての地位を確立しながらも、「まだ役者をやっている自分には慣れない。得意じゃないものに挑み続けている感覚がある」と告白する大泉。芝居の面白さを実感させてくれた、自身にとってヒーローのような存在を明かした。

本作の舞台は、昭和40年代の浅草。大学を中退し、“お笑いの殿堂”と呼ばれていた浅草フランス座に飛び込み、伝説の芸人・深見千三郎(大泉)に弟子入りしたタケシ(柳楽優弥)。彼が個性と才能に溢れる仲間たちと出会い、芸人・ビートたけしとして開花していくまでを描く青春ドラマだ。


劇団ひとり監督が自身の書き下ろし小説を初監督で映画化した『青天の霹靂』(2014)でも、大泉は主演を任されていた。大泉は「『青天の霹靂』から数年経って、劇団ひとり監督がまた僕を呼んでくれたことがものすごくうれしくて」と破顔しながら、「ちょっとだけ出る役ではなく、しっかりタッグを組んでやらないといけないような役。しかも彼が尊敬してやまない芸人の役で僕を呼んでくれた。『青天の霹靂』をやって本当によかったなと、改めて感じさせてくれました」と喜びを噛み締める。

劇団ひとりは、どのような演出をする監督なのだろうか? 大泉は「“自由にやってください”という監督では決してありません。監督の中で“求める芝居”というのが決まっている。例えば本作で、深見がタケシに『バカヤロー!』と突っ込むシーンがあって。もうちょっと楽しいやり取りにするのかと思いきや、『しっかり怒ってください』という演出があったりする。
監督の中で方向性が決まっているので、役者としてはものすごく安心感があるんです。その一方で、“監督の思う通りにできるだろうか”という怖さもある」と現場を振り返りながら、「そういう監督だからこそ、また呼んでもらえるということが役者としても大きな自信になります」とうれしそうににっこり。「たくさんいる監督の中でも、劇団ひとり監督は“あの監督は本当にすごい”と思わせてくれるような一人です。『浅草キッド』ではワンシーンワンシーン、その手腕が光りまくっていた。撮影は“すごいな……”と、劇団ひとり監督の才能に延々とため息をつくような時間でした」と手放しで絶賛する。

●TEAM NACSのメンバーがこれ以上売れたら嫉妬する!?

本作の舞台となる昭和40年代は、テレビの普及とともに演芸場に足を運ぶ人が減っていくなど、お笑い界に大きな変化が起きようとしていた時代。深見とタケシは師弟関係を築きながらも、舞台の笑いにこだわる深見に対して、タケシはテレビの世界へと足を踏み入れていくようになる。大泉は、2人の師弟関係には自身の経験と少し重なるところがあると明かす。


「僕は大学時代に演劇研究会に入って、劇団イナダ組という札幌の地方劇団でもお芝居をさせてもらっていました。そんな中、仲間と結成したTEAM NACSの人気が上がって仕事も忙しくなり、劇団イナダ組の舞台に出られなくなってしまった。劇団イナダ組を去るときは、フランス座を去っていくときのたけしさんの気持ちに通じるところがあるなという気もしています。僕としてはやっぱり、少し後ろめたいものがあって。劇団イナダ組の主宰者の稲田博さんは『頑張れよ』と送り出してくれたんです。ものすごく感謝しています」。

弟子のタケシがどんどん売れていく一方、深見の立つ演芸場の舞台には活気が失われていった。 “弟子や後輩に世間の注目が集まっていく”という状況だが、大泉自身は後輩が注目を浴びていくことへの怖さや焦りを感じることはあるだろうか?

「事務所の後輩たちならば、“お願いだから売れてくれ!”と思いますよ」と笑いながら、「役者さんでいうならば、後輩という概念がまったくないもので……。
例えば今回共演した柳楽くんもすごく若い役者さんだけれど、僕はもう完全にリスペクトしています。肩を回す感じやまばたきなど、たけしさんのクセをしっかりと表現しながら、それが決してモノマネに見えない。それはたけしさんの魂を持って演じているから。本作を観れば、いかに柳楽優弥がすごい役者かということがわかる」と惚れ惚れ。

もし嫉妬するとすれば「やっぱりメンバーかな」とのこと。「大学を卒業したばかりの頃は、この仕事で食べていけるのかという不安もありましたから、みんなで飲みながら『とりあえず僕が走る。僕がダメになったときに、次の人が走りだせるようになっていたら劇団としては続いていくだろう』と話していました。今となってはみんなが頑張って、この仕事で食べられている。
これ以上、他のメンバーにガンガン走られたら、苦虫を噛みつぶしたような顔をしますよ!」と楽しそうに笑う。

●ヒーローは三谷幸喜「芝居って面白いなといつも思わせてくれる」

TEAM NACSの話をなんとも楽しそうに語る大泉だが、「大学で演劇研究会に入ってからが、僕の青春」だという。大泉は「『水曜どうでしょう』に出るようになって、20代はロケに行って爆笑しているうちに終わった」と大笑い。「28歳くらいのときに『水曜どうでしょう』が終わるという話になって、今後もこの仕事を続けていけるのだろうかと不安になりました。どうやって生きていくんだろうって。その言葉を聞いた日は、眠れなかった」と振り返る。

「そこから役者の仕事をちゃんとやろう、東京の仕事もやろうと決断して。これは今でもそうなんですが、笑いという自分の得意だと思うものを封じて、得意じゃないものに挑戦し続けている感じがします。
バラエティに出ている自分は安心して見られるけれど、役者をやっている自分はまだまだ慣れない。本当にありがたいことに、すばらしい作品にいろいろと出演させていただけるようになってもそれは変わりません。でも柳楽くんですら、『もっといい役者になりたいなと思っています』と言っているから。柳楽優弥でもそう感じているんだと思うと、僕ももっと頑張っていいお芝居をしたいなと刺激を受けます」と正解のない役者という仕事に、一つ一つ真摯に打ち込んでいる。

自身にとっての師匠は「劇団イナダ組の稲田博さん。舞台の立ち方に始まり、芝居のいろはを教えてくれた」。さらにヒーローと思える存在は、「三谷幸喜さん」だという。「三谷幸喜さん演出の『ショウ マスト ゴー オン 幕をおろすな』を観たときに、演劇ってなんて面白いものなんだろうと思った。
そこから僕は、三谷フリークになっていった。三谷さんがやるものをなんでも追いかけて観ていた。僕にとっては憧れの人。芝居って面白いなといつも思わせてくれます」と語っていた。

『浅草キッド』は12月9日よりNetflixにて全世界独占配信。

■大泉洋
1973年4月3日、北海道江別市生まれ。演劇ユニット・TEAM NACSのメンバー。深夜番組『水曜どうでしょう』(HTB)にレギュラー出演後、映画『探偵はBARにいる』(2011)では第24回日刊スポーツ映画大賞、石原裕次郎賞、第35回日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞。舞台でも三谷幸喜作品に多く出演する他、TEAM NACS第13回公演『下荒井兄弟のスプリング、ハズ、カム』では自ら脚本・演出を手掛けた。今後は第72回NHK紅白歌合戦の司会に決定している他、NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』などへの出演が控えている。

ヘアメイク:白石義人(ima.)スタイリスト:勝見宜人(Koa Hole)

提供元の記事

提供:

マイナビニュース

この記事のキーワード