愛あるセレクトをしたいママのみかた

タワークレーンが消えない街 -“丸の内エリア”の再開発はなぜ終わらないのか【前編】

マイナビニュース
タワークレーンが消えない街 -“丸の内エリア”の再開発はなぜ終わらないのか【前編】
●104棟の建築物が集約する大手町・丸の内・有楽町エリア

「いつ訪れても、常にどこかで何かを建設しているなぁ」。

東京・大手町を歩いたときにそう感じる方は多いだろう。大手町だけではなくそのお隣の丸の内も、2002年に「丸の内ビルディング」、2007年に「新丸の内ビルディング」と立て続けに竣工し、2015年11月現在も東京駅前は「東京駅丸の内駅前広場整備」のためにタワークレーンが並ぶ。

はたして東京駅周辺地区の再開発はいつ終わるのだろうか。今夏、三菱地所が丸の内からみて線路を挟んだ反対側に、地上390mの日本一高いビルを建設すると発表した。つまり当分の間、再開発は終わらないことになる。

○「再開発は終わらない」

そこで、東京駅周辺地区の再開発はいつ終わる予定なのか三菱地所に取材してみたところ、「“大丸有”地区の再開発が終わることはありません」と言い切った。大丸有地区とは聞き慣れない名称だが、これは大手町・丸の内・有楽町3地区の頭文字を組み合わせた造語で、同地区の再開発を主導する一般社団法人「大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり協議会」で使われ始めたという。
三菱地所もこの協議会に所属する企業で、この地区にある104棟(建設予定含む)のうち30棟を所有・管理する“大丸有”(以下、丸の内エリア※)最大のデベロッパーである。

※丸の内エリア:大手町・丸の内・有楽町地区の総称(約120ha)

そもそも丸の内エリアは、三菱財閥が政府から丸の内一帯の払い下げを受け、そこに日本初の賃貸オフィスビル「三菱一号館」を建築したのが起こり。以降、丸の内を中心に南側の有楽町、北側の大手町へとオフィス街は広がっていき、2000年以降、東京都と千代田区、JR東日本、同協議会で組成されるまちづくり懇談会が策定した「まちづくりガイドライン」により再開発が加速。現在の街並みを形づくっていった。

●東日本大震災が再開発に影響
○再開発は街の新陳代謝に不可欠

では、「再開発が終わることはない」とは何を示しているのだろうか。三菱地所によると“街の新陳代謝”のためだという。

たとえば丸の内ビルディング(丸ビル)の場合、耐震性能の刷新による“街の新陳代謝”といえるだろう。大正年間(1923年)に竣工した旧丸の内ビルヂングは、1995年に建て替えされることが発表されたが、この年は阪神淡路大震災が発生した年。
耐震性についての議論が国中で行われた時期だ。旧丸ビルは文化的価値が高かったため、保存をのぞむ日本建築学会の反対が起こるなど紆余曲折はあったが、建て替えは実施され2002年に竣工した。

2011年に東日本大震災が発生した際、同年代に建てられた九段会館(1934年)では屋根の崩落事故が起こり、不幸にも犠牲者が出てしまった。それまではレストランや結婚式場を営業していたが、震災以降、現在も休業中である。そのことを考えると、丸ビルの建て替え実施は、大きな意味があったのではないだろうか。

東日本大震災は、その後の丸の内エリアの再開発に大きな影響を与えた。その象徴が現在建設中の「大手町フィナンシャルシティ グランキューブ」(2016年4月竣工予定)だろう。このビルは温泉を掘削しながら建設され、2014年6月に温泉が湧いたということで話題になった。
この温泉を中心にフィットネスクラブやプール、岩盤浴などを複合した施設を開設する予定だ。この施設は、通常は市民の憩いの場として営業される予定だが、震災時には災害復旧に携わる人たちに開放されるという。

一方、大手町の外郭、二の丸前のお堀に面した場所に建設されている「大手門タワー・JXビル」「大手町パークビル」からなる「大手町ホトリア」も大規模災害時を見越している。大手町パークビルにはキッチンなどを備えた“滞在型宿泊施設”が開業予定で、こちらのビルも大規模災害時は帰宅困難者を受け容れる予定だ。さらに大手門タワー・JXビルでは“堀端”という立地を生かし、大型貯留槽・高速浄化施設を導入予定。竣工後は、年間約500,000立方メートルのお堀の水を浄化するという。これは民間では初の取り組みになる。

帰宅困難者を見越した計画や浄水施設など、ビル1棟1棟に“機能”を持たせることで、街の新陳代謝を行っているのだ。


また、大丸有地区の再開発は、三菱地所だけでは成り立たないと強調する。まちづくり協議会に参加する各企業との協業・協調で、街づくりを進めていくという姿勢を崩さない。

●地上約390mの高層ビルで“日本一”を奪還
ただ、冒頭で紹介した高さ390mの日本一高いビルを擁する「常盤橋街区再開発プロジェクト」については、三菱地所の野心が見え隠れする。同計画では地上37階(約230m)、地上61階(約390m)の高層ビルが竣工予定だが、やはり390mのスケールは壮大だ。これは、現在日本一高い大阪「あべのハルカス」(デベロッパー:近畿日本鉄道)の高さ300mをはるかに上回る。

あべのハルカスが竣工するまで、日本一高いビルは高さ296.33mを誇った「横浜ランドマークタワー」だった。実はこの横浜ランドマークタワーのデベロッパーが三菱地所。1993年の開業以来、あべのハルカスができる2014年まで、およそ21年間“日本一高いビル”の座に君臨してきた。
ところがわずか3.67mの差でその座を明けわたしたことになるのだ。だが、竣工予定の2027年になればその座を奪い返し、あべのハルカスは13年しかその座につけなかったことになる。また、あべのハルカスに対し90mも高い事業計画は、“竣工後は数十年間日本一の座に”というねらいがあるのかもしれない。

さて、ここまでは丸の内エリアの建物、いわばハード面について紹介したが、次回は“街を活性化”させるソフト面について解説したい。

○大江戸膨張! 東京再開発の現場
●タワークレーンが消えない街 -“丸の内エリア”の再開発はなぜ終わらないのか【前編】
●タワークレーンが消えない街 -“丸の内エリア”の再開発はなぜ終わらないのか【後編】

提供:

マイナビニュース

この記事のキーワード