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タワークレーンが消えない街 -“丸の内エリア”の再開発はなぜ終わらないのか【後編】

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タワークレーンが消えない街 -“丸の内エリア”の再開発はなぜ終わらないのか【後編】
●日本の“シリコンバレー”を予感させる街づくり
「丸の内エリアの再開発はなぜ終わらないのか」と題し、レポートさせていただいたが、答えは「終わらない」という結論になったのは前回のとおり。どのような再開発が行われているのか、建築物を中心に紹介した。だが、建物、いわばハード面だけをただ単に用意しても本当の再開発とはいえない。街を活性化するためのソフト面ともいえる取り組みも必要になってくる。

さて“丸の内エリア”とは、大手町・丸の内・有楽町地区の総称だが、そもそもこれらの地区にどのような企業が入居しているのだろうか。ご存じのとおり、日本を代表する名だたる企業の本社が集約している。

例を挙げると、三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、日本生命、日立製作所、JXホールディングス、三菱商事、KDDI、読売新聞、日本郵政などなどキリがないのでやめるが、まさに日本経済の根幹をなす企業・団体が集まる地だといってよい。米フォーチュン誌が発表する企業ランキング「フォーチュン・グローバル500」にランクインしている企業のうち、18社がこのエリアに本社をかまえる。
ニューヨーク市で19社であることを考えると、いかにこの狭い範囲にグローバル企業が集中しているのかがわかるだろう。

ある意味“重厚長大”な企業御用達の土地柄で、中小企業やベンチャー、海外からの進出企業がこのエリアに居をかまえるイメージはないかもしれない。だが、そうした企業に対し“丸の内エリア”での活動をサポートする施策があるという。

三菱地所 街ブランド推進部 東京ビジネス開発支援室の及川静香氏は、「建設中の『大手町フィナンシャルシティ グランキューブ』の3階全体に、グローバル成長企業向けのビジネス支援施設『グローバルビジネスハブ東京』を2016年7月にオープンします」と切り出した。

グローバルビジネスハブ東京では、約800坪のフロアを小割して、2~20名用の什器付きオフィスを用意。ベンチャーや海外からの進出企業に対しオフィススペースを提供する。フロアに入居するユーザーは、共用の会議室や200名規模のイベントスペースを含む共用スペースを利用できる。家賃にしても“坪いくら”ではなく、“従業員1人あたり10万円前後”といったかたちなので、余計なスペースを間借りすることによる負担が生じない。
そして最大のメリットが、グローバルビジネスハブ東京を通じてビジネスのサポートを受けられること。具体的にはビジネス立上げ時などに相談できる弁護士・会計士等専門家の紹介、提携する「EGG JAPAN」(※)で開催されるイベント等でのビジネスマッチングなどだ。中でも注目したいのはビジネスマッチングについてだろう。前述したとおり、“丸の内エリア”地区は名だたる大企業が集合するエリア。正攻法で商談しようにも飛び込み営業ではハードルが高い大企業に対し、提携する「EGG JAPAN」のネットワークを活用して紹介してくれるという。

※新丸の内ビルディングで展開されるベンチャー企業支援プロジェクト

日本には「シリコンバレー」がない。あえて都内の候補地を挙げるとするならば、サブカルチャー発祥地ならではのアイデアを生かした企業が多い秋葉原、ファッションリーダーやクリエイターが集まる表参道、機械工業が得意な中小企業が集まる大田区といったところだろうか。グローバルビジネスハブ東京の取り組みは、“多様な成長企業が集まる場所”という視点で、それらに続く“シリコンバレー候補”といえるのではないだろうか。


及川氏は「入居したベンチャーが、グローバルビジネスハブ東京を通じて成長してもらい、東京の雇用創出につながっていけばと思っています」とくくった。

●歩道を拡張しさまざまなイベントに活用
「大丸有エリアマネジメント協会」は、オフィス街である“丸の内エリア”のレジャー活用にも積極的だ。そのメインステージとなっているのが「丸の内仲通り」。この通りは日比谷通りと大名小路に挟まれる格好で南北を約1.2kmにわたり貫いている。

○「街が変わっていく様子をみなさまに体験していただきたい」

もともとこの通りは、幅21mのうち9mを車道が占めるアスファルト舗装の一般的な道路だった。交通量が多い日比谷通りの抜け道として利用されることもあった。だが、再開発により「歩道6m、車道9m、歩道6m」だった設計を「歩道7m、車道7m、歩道7m」に見直し。あわせてアスファルトから自然石(アルゼンチン斑岩)敷きにし、ケヤキを中心とした並木を植樹した。
クルマ中心の通りから、歩行者中心の通りへと変化させている。

この通りを中心にさまざまなイベントが開催されている。夏は盆踊り、冬はイルミネーション点灯といった具合だ。特にイルミネーションは、2015年に14年目を迎える恒例行事となっており、行き交う人々に目にも彩な光景を映し出している。

また、この通りで昨年から「東京味わいフェスタ」が開催されている。これは10月に実施される行事で、丸の内や大手町、有楽町といった東京駅周辺の三菱地所のビルに出店するスーパーシェフ達により食育に取り組むべく組成された「丸の内シェフズクラブ」が、屋台やケータリングカーで道行く人に東京の食材を使った料理を提供するイベント。普段は高額なスーパーシェフのメニューをお手軽な価格で味わえることで、東京の食材に親しむキッカケとなれば、というものである。料理だけでなく、東京産の野菜や畜産品、伊豆諸島の名産などが購入できる。
実はこのイベントは東京都の肝いりでもある。“TOKYO”を世界に発信するという目的をもったこのイベントも、東京駅前という日本を代表する場所・通りで実施されている。

「2015年3月に丸の内仲通りや行幸通りは国家戦略特区に指定されました。それにともない通りを舞台にした人々の活動をさらに強化していくつもりです」と、エリアマネジメント協会に参画する三菱地所 開発推進部 都市計画室の重松眞理子氏はいう。国家戦略特区とは、産業の国際競争力を強化するため政府が定めた区域のこと。また重松氏は「国家戦略特区に指定されたことはきっかけで、常に進化していくこのエリアの姿をみなさまにも体験していただきたいというのが本音です」と付け加えた。

こうした取り組みによって、休日に“丸の内エリア”を訪れる人は2002年以前に比べて約3倍以上に増えたという。東京を巡回する観光バスの拠点ともなり、インバウンドの訪問も激増している。
平日はオフィス街、休日は観光地という2面性を併せ持つエリアへと成長した。街を活性化するソフト面の取り組みが功を奏したといえよう。

一連の取材を終え三菱地所を退出する際、印象に残ったのは、このエリアに最新のオフィスビルをいくつもかかえている同社が、大手町で最古ともいえる「大手町ビルヂング」に入居していること。最新オフィスはテナントに、という経営判断なのか、それともほかの理由があるのか……。いずれにせよ、築57年を迎えたこのビルも、将来は同社の再開発の対象になっているかもしれない。

○大江戸膨張! 東京再開発の現場
●タワークレーンが消えない街 -“丸の内エリア”の再開発はなぜ終わらないのか【前編】
●タワークレーンが消えない街 -“丸の内エリア”の再開発はなぜ終わらないのか【後編】

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