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5000社の顧客を5000万社に拡大できなければ、企業は生き残れない

マイナビニュース
5000社の顧客を5000万社に拡大できなければ、企業は生き残れない
●IDCが読み解く、世界と国内のIT市場10大予測
2015年もさまざまなIT技術がビジネスに大きな影響を与えてきた。今後もますます、IT技術が規模を拡大していくことは誰もが感じていることではあるだろうが、10年後、20年後を想像すると、一体どのようなサービスや技術が世の中に浸透しているのか、予測することは難しい。また各企業のビジネスの本業が、このまま変わらず続いていくのかといったことを考えてみても、昨今の状況をみると必ずしもそうだとは言えなくなってきている。ハードウェアの会社がソフトウェアを売ったり、逆にソフトウェアの会社がハードウェアを売るなど、産業の垣根はあいまいになってきている。

IT専門調査会社であるIDC Japanは12月9日、今後3年間における世界と国内のIT市場の動向を特徴付ける技術や市場トレンド、企業の動きなどに関する予測と提言を、「IDC FutureScape」で発表した。

これまで同社では、「Japan IT Market 2015 Top 10 Predictions」として発表してきたが、今年から予測の仕方を変更したという。従来はITベンダーを対象として予測を行ってきたが、今後はITベンダー含め、エンドユーザーの意思決定者(CIOやCEOなど)も対象に、今後の予測・提言を行っていくという。

これからの近い将来、一体どのような変化が起こってくるのだろうか。


○12の考慮すべき外部ドライバー

まず、技術軸あるいは産業軸でのIT企画において、考慮すべき外部ドライバーとして12の項目があげられた。内容は以下の通り。

DX(デジタルトランスフォーメーション):DXによるビジネス変革の加速
Cy-Q(サイバー認知インテリジェンス):相互接続、相互認知、インタラクティブ、直感的、インテリジェントで認知的なエコシステム
Talent Quest(人材発掘):次世代のビジネス/ITスキルへの高まる需要と供給の枯渇
Urban Corridors(大都市圏化):巨大都市化のインパクト増大
Cloud Life(クラウドライフ):実生活とデジタルアイデンティティの境界の喪失
21st Century Battleground(21世紀のパワーバランス):サイバー世界でのパワー闘争
East-West(東西バランス):グローバル経済のパワーバランスシフト
David and Goliath(ダビデとゴリアテ、小さな者が大きなものを倒す):分散VSグリッドエネルギーモデル間の競争拡大
Connected Well-Being(コネクテッドな福祉):モバイル、センサー、ソーシャル技術の収束
Risky Business(ビジネスリスク):国際経済のボラティリティインパクト
Rising Tide(海面上昇):気候変動による社会的なインパクト
Shifting Gears(ギアチェンジ):IT生産性向上のペースダウン

この中でも、IT市場のキーとなる外部ドライバーとして、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」「Cy-Q(サイバー認知インテリジェンス)」「Talent Quest(人材発掘)」「Cloud Life(クラウドライフ)」の4つがあげられた。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、2004年に当時スウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が名付けた言葉で、「ITの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること」と定義している。IDCでは、「ビジネスにおけるDXの実験的取り組みが主流化し、シームレスでグローバルな到達能力を持った新しいビジネスモデルが成立する。DXが競争上の要件になり、事業運営、コミュニケーション、サービスのデジタル化に対する莫大な新規投資を呼び込む源になる」と予測している。

また、「Cy-Q(サイバー認知インテリジェンス)」に関しては、「認知機能が進化するにつれ、ロボティクス、IoT、人工知能(AI)、拡張現実/仮想現実(AR/VR)、大容量データセットとの組み合わせによって、システムが人間のインテリジェンスを模倣し、それを上回ることが可能になる」としている。

「Talent Quest(人材発掘)」に関しては、「第3のプラットフォームに関するコンピテンシーを獲得する能力は、ビジネス需要のペースに追いつかない人材の供給能力、アクセスするにはあまりに特定の地域に人材が集中しすぎている地理的条件によって、多くの企業で制約が生じる」と述べられている。


最後に、「Cloud Life(クラウドライフ)」に関しては、「クラウドを通じて、あらゆる形式の個人データ(金融、仕事、健康、所在地、家族など)を利用できるようになり、人々が日常生活の一部として定期的にやり取りし、更新、共有、管理する、一つのデジタルエンティティとしての管理が一般化する。ビジネスシステムは、一人ひとりの個人的な習慣や好みに関する知識を利用して、エクスペリエンスをカスタマイズし、ほかの人々に代わる信頼性の高いアドバイザーとなる」としている。

それでは、以上の外部ドライバーをふまえた、同社のIT市場10大予測を一つずつ見ていきたい。

●各業界上位20社のうち、3分の1が3年以内に崩壊する?!
DX

2017年末、Global 2000企業のうち3分の2のCEOが、DXを企業戦略の中心に据える

IDC Japanのリサーチバイスプレジデント 中村智明氏は「DXイニシアティブを活用する競合他社の出現により、どの業界でも上位20社のうち3分の1が、3年以内に崩壊に追い込まれる」と示唆した。これに対し、企業はどのように対策する必要があるのか? 中村氏は「Chief Digital Officer(CDO)を設置し、DXイニシアティブを推進する専門の組織をつくるべき」と言う。またITベンダーは「業務改革、人材活用戦略の策定、ビジネスエコシステムにおける協業戦略など、顧客にとってよきコンサルタントになるよう近づいていくことが重要」とした。

第3のプラットフォームIT

2017年には国内企業のIT支出額の33%以上が第3のプラットフォームテクノロジー、ソリューション、サービスに費やされ、2020年には45%を超える

2016年以降、すべてのDXイニシアティブに向けたIT投資は第3のプラットフォーム上での投資となり、第3のプラットフォームへの支出は2020年まで、年平均成長率(CAGR)5%以上で増加する一方、第2のプラットフォーム投資はCAGR3%で減少するという。第1のプラットフォームはメインフレームと端末、第2のプラットフォームはクライアントサーバーシステム、そして第3のプラットフォームは、モバイル、ソーシャル、ビッグデータ、クラウドの4要素で構成されるとIDCは定義している。


このような状況に対して中村氏は、「多くのCIOが第3のプラットフォームへの移行をためらっているが、その懸念は副次的。移行しないという判断ではなく、どう移行するかが課題」とし、ITベンダーに対しては、「顧客のDXイニシアティブに付いていくのではなく、リードしていくことが役目」とした。

クラウドコア

2017年までに、国内IT支出の20%以上はクラウド関連となり、2020年にはITインフラストラクチャー支出の30%以上、ソフトウェアおよびサービス支出の40%以上となる
海外では、すでにすでにクラウドへの支出が50%を占めるという。中村氏は「ITの最良の解はクラウドにあるということを常識にしないといけない。また、すべての企業がクラウドサービスプロバイダになる可能性がある。産業特化型のシステムをつくってうまくいけば、そのシステム自身を同業他社やエコシステムに売って商売しようという話になるだろう。クラウドはIT課題ではなく、経営課題である」と述べた。そして、ITベンダーに対しては、「2018年までにクラウドファーストを完了することが"生き残りの条件"」とした。


イノベーションキャパシティ

2018年には、DX戦略を追及する企業で、ソフトウェア開発能力が今の2倍以上に伸び、コーダー(ソフトウェアプログラマー)の3分の2が、戦略的DXアプリケーションおよびサービスを手がける

中村氏は、「すべての企業がソフトウェア企業の性格を強める」と述べた。また、開発リソース不足によって、今後差別化につながらない、第2のプラットフォームから第3のプラットフォームへの移行については、企業はアウトソースされると予測。この時、ITベンダーは「DXイノベーションプロバイダー」となるのか、「第3のプラットフォームへの移行プロバイダー」となるのかが、重要なポイントだとした。

「どちらも需要があるが、valueが違う。この両方のビジネスに対してどういったポートフォリオを描くかが重要」(中村氏)

社内外の「データパイプライン」

2018年、戦略的なDXイニシアティブを実施する企業では、外部から社内へのデータソースの数が現状の3~5倍以上に増加し、市場へのデータの配信料は100倍以上に増加する

すでに、日本でも大企業の6~7割はなんらかの外部データを購入し、自社内部のデータを組み合わせて、価値を生み出し、外部へ発信していくといった動きになっているという。この時、どんなデータを組み合わせて、どのように配信していくかといったデータの流れ(データパイプライン)をうまく設計することが重要だとしている。

中村氏は「今後はデータが商品、売買の対象となる」と述べ、2019年にはすべての企業が外部データ(Twitter、交通情報、気象情報、販売予測データなど)を購入すると予測している。

●IoT、コグニティブの今後は?
インテリジェントエッジ
2018年にはIoTデバイスの設置台数が国内市場で9億円台となり、20万以上の新しいIoTアプリケーションおよびサービスの開発につながる

2018年にはIoTへのIT投資は2015年比で1.5倍以上となり、企業データセンターの新規サーバのうち20%を占有すると予測された。
また、2018年には、ITネットワークの3分の2以上がIoTベースのセキュリティ侵害を経験すると警告された。

「選択がまだ難しい分野。例えばウェアラブルで見ても、2020年までに生き残れる企業が何社あるのかわからない状況。確固たる地位を築いている企業はまだいない。IoTに関しては、これからいろいろなアイディアが出て、試行錯誤され、誰が主要なプレイヤーになるかはこれから。CxOはIoTデバイスの普及状況に目を光らせていることが重要」(中村氏)

あらゆるものの認知

2018年には50%以上の開発チームが、何らかの認知サービスをアプリケーションに埋め込むようになる(現在1%未満)。2020年には、認知システムによって米国企業にもたらされる生産性向上効果は、年間600億ドル以上になる

中村氏は「認知システムは、2016年の開発リストの最優先事項となる。これにより、DXの差別化システムとなる」とCIOに向けてコメントした。


産業特化型クラウドプラットフォームおよびコミュニティ

2018年には50%以上の大企業が、自社のイノベーションの流通、他社のイノベーションの調達に役立つ、産業特化型クラウドプラットフォームを開発するか導入する

産業特化型クラウドプラットフォーム数は、2018年までに5倍以上(500以上)に増加すると見込まれており、90%以上の産業特化型クラウドは、メガプラットフォーム上に構築されるという。「AWS、Google、IBM、MS、Salesforceなどが利用されていくと思うが、ここに台頭してくる企業があと1社くらいあるだろう」と中村氏は予測する。

大規模な新顧客戦略

2018年にはBtoC企業の80%、BtoB企業の60%が、「デジタルフロントドア」を抜本的に再構築し、今よりも1000~1万倍の大量の顧客および顧客接点をサポートするようになる

BtoB企業は、これまで5000社の顧客を持っていたとすれば、今後は5000万社を顧客にできる能力を持つようになるという。逆に「5000社を5000万社に拡大できないような企業は生き残れない」とまで、中村氏は断言する。

サプライヤーとパートナーの再選別

2020年には、今日存在しているITベンダーの30%以上が姿を消す。そのため、優先すべきベンダー関係を慎重に見直す必要がある

2020年にはPaas分野では前述の6社(AWS、Google、IBM、MS、Salesforceともう1社)のクラウドプラットフォームベンダーが、市場の75~80%を支配し、それ以外のベンダーは市場から撤退するか、補完的な役割を見いだす必要に迫られるという。これに対し、「CIOは、前述の予測1~9をふまえて、現在のパートナーがどのポジションにいるかを確認することが重要」と中村氏は述べた。

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