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日本酒の定期購入サイトSAKELIFEはなぜ伸びる? -「居酒屋チェーンの日本酒を飲んだとき『これチャンスだ』と思った」

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日本酒の定期購入サイトSAKELIFEはなぜ伸びる? -「居酒屋チェーンの日本酒を飲んだとき『これチャンスだ』と思った」
●定額制の日本酒販売サイトに行き着いたワケ
昔ながらのビジネスモデルや、廃れつつあるモノやコト――。少しだけ手を加えて“リブート”させると、それが途端、斬新なビジネスに生まれ変わることがあります。そこには多くのビジネスマンにとってのヒントがある、かも。そうしたビジネスモデルにスポットを当て「リブート! “再起業”の瞬間」としてシリーズでお届けします。第2回目は、日本酒の定期購入サイトにスポットを当てます。

○酒とともに「愛で方」を売る

安倍首相が贈れば、各国元首によろこばれる日本酒「獺祭」(だっさい)。このことからわかるように、海外での和食の浸透と相まって、じわじわと日本酒が復活している――。なんとなく、そう感じている人は多いはずだ。


もっとも、数字だけをみるとまた違う景色がみえてくる。

国税庁統計年報によると、直近のデータとなる平成25年度の清酒消費量は581万キロリットルで、10年前と比べると約70%に減少。さらに20年前と比較すると実に約42%にまで減っている。業界や国をあげてのPRが目立っているが、そのわりには日本酒の消費量は、実はいまだ右肩下がりを続けているのが現状だ。

そんな中、名実ともに、じわじわと日本酒の売上を伸ばし、業界の注目を浴びているのが日本酒専門のECサイト「SAKELIFE」である。

ユニークなのは、同サイトが単なるお酒のネット通販ではなく、会員制の「定期購入サービス」であること。いまEC界隈では「毎月定額を払えば自分にあったコーディネートの洋服が届く」といった定期購入サービスに火がつき始めているが、「SAKELIFE」はこれを日本酒で実践しているわけだ。

具体的には月5,000円で全国の蔵元から選び抜いた銘柄の一升瓶が毎月届く「ぐい呑み」コースと、月3,000円で同じくセレクトした四合瓶が届く「ほろ酔い」コースの2つの定期購入サービスを提供している。


「日本酒に興味はあるけれども、選び方が分からないという方は多い。そういう方に、毎月いろいろ試していただけるわけです」と創業者の高橋正典さん(28歳)はいう。

この定期購入ならではの「楽しさ」が支持され、2013年にスタートした「SAKELIFE」は今では1,000名を超える会員を抱える。毎月1,000人が高橋さんのセレクトした銘柄を“くいっ”と楽しんでいるわけだ。

もっとも、高橋さんが定期購入のビジネスモデルを選んだ理由はマーケティング的メリットだけではない。

「約8割と原価率の高い日本酒販売はECには向かない商材だったんです。値下げでアピールするのが難しい。しかし、定期購入スタイルならば、価格だけで選ばれることがありませんからね」。


加えて理由はもうひとつあった。単に酒を送るだけではなく、毎月定期的に「日本酒の楽しみ方」を伝えるコミュニケーションを提供できることだ。

「この『楽しみ方の提供』こそが、日本酒を売るためには不可欠だと思った。実はそれは僕が店で親父の姿を見ていて感じたことでもあったんですよ……」。

●ヒントは代々続いた実店舗にあった

実は、高橋さんは千葉県香取市で室町時代から続く老舗酒販店「油忠」の25代目店主。大学卒業後、経営の勉強を経て、父親の家業を引き継いだ。その際に「SAKELIFE」を立ち上げた。

「だから子どもの頃から店にはよく出ていて、そこで、父とお客さんとのやりとりをもう毎日のように聞いていたんですよね」。


「このあいだ買った酒、おいしかったよ。同じ蔵元で別のはない?」
「いまちょっと切れているんだけど…これなんかうまいよ」

「今日はしゃぶしゃぶなんだけど、あう日本酒って何かね?」
「ああ、それなら三重のあれがいいかな」

こんな店主との雑談や試飲を楽しんでから、お客はようやく購入に至っていた。店にすると自然と客の好みがわかり、お客からすると自然と日本酒の知識が身についた。

一方で、大学時代の飲み会も着想のきっかけになった。

東京の大学に進学したとき、同級生と飲みに行くと、誰も日本酒を頼まないことに衝撃を受けた。聞けば「おいしくないから」と返された。事実、チェーンの居酒屋で日本酒を頼むと、銘柄不明の酒でひどい味だった。「これでは日本酒離れするわけだ…」と思うと同時に「これ、チャンスだな」とも感じたという。


「自分は店で美味しい銘柄に触れていたけれど、ほかの多くの同世代は本当に美味しい日本酒と、その楽しみに触れる機会がなかっただけなんだなと気づいた。裏を返せば、実店舗でのやりとりのようにネットでもしっかりとお酒の楽しみ方を伝えて、本当の日本酒の美味しさを理解してもらえれば、必ず日本酒好きになるはず。そう考えたわけです」。

そのため「SAKELIFE」では、定期購入で毎月1本の酒を送るのみならず「隔月で酒器や酒の肴も送る」サービスを実施した。たとえば日本酒もワインなどと同じように猪口の形や肴によって、同じ銘柄でも風味が変わる。「4種の猪口を同時に送る」などして、それを気軽に実感できるようにしているのだ。

月に4回届く「会員限定のメルマガ」でも、日本酒の楽しみ方をコンテンツとして提供している。「今月の酒」のオススメの飲み方とともに、日本酒の基礎知識やウンチクも伝え、酒を楽しむ“リテラシー”を上げようと試みているのだ。


注目したいのは、実店舗をヒントにした施策は、「パーソナライズ」に徹していることだろう。毎月届く酒は、季節に応じた旬の銘柄が基本。しかし、2回目以降はメールアンケートを元に少しずつ送る酒を変える。例えば「辛口だけがいい」顧客には辛口に絞る。「なるべく珍しい銘柄を飲みたい」という顧客にはユニークな銘柄をできるだけセレクトする、といった具合だ。

「会員1,000名に、今は毎月数10通りの違う銘柄を送っています。機械的にデータマイニングできればいいんですけど、自分の知識も踏まえて手作業でやれますから。大変?
いや。
もともと実店舗でしてきたやりとりだし、突然、店にきて対応しながらオススメするよりは、パソコンの前でやるほうが、ずっとラクともいえるんですよ」。

月2回ほど実施している会員向けのイベントも人気だ。地方の食材メーカーが自社商品をPRするときのコラボ相手として指名され、都内のレストランで試飲会を開くなど、会員限定もしくは優待で、リアルの場で日本酒を楽しみつつ交流できる場を用意しているという。
「うちの酒屋でも、気がつけば数名のお客さんが店の横のスペースで酒を飲み始めて、語っていることが多かった(笑)。このあたりも店で父がしてきたことを『SAKELIFE』ではネットを通じて行っている感じですね」。

こうして「SAKELIFE」は、20~30代の若い世代がボリュームゾーンとなる希有な酒飯販店となった。冒頭で記した若者の日本酒離れは、「SAKELIFE」に限っては無縁のようだ。こうした懐かしくも新しい試みが原動力となり、日本酒の真の復活は進む。しかも、じわじわと。

○【連載】リブート! “再起業”の瞬間
【第1回】「頼り合える関係」をネットで復活 -1000人の声で磨いた500円“子育てシェア”
【第2回】日本酒の定期購入サイトSAKELIFEはなぜ伸びる? -「居酒屋チェーンの日本酒を飲んだとき『これチャンスだ』と思った」
【第3回】赤ちゃん・子ども用品に特化 - 学生起業家が日本の伝統産業を救う

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