2015年12月24日 09:00
インバウンド観光客を「虜」にする日本の“文化財ランドマーク”【前編】
●悲願の国宝指定を受けた松江城
島根県・宍道湖の北東部に雄々しくそびえる松江城。大きく張り出した入母屋屋根と漆黒の板壁による質実剛健な天守閣がなんとも印象的だ。この松江城天守閣が2015年7月8日に国宝に指定された。天守閣が国宝に指定されるのは、実に63年ぶりのこと。姫路城、松本城、彦根城、犬山城に次ぐ、5番目の国宝天守閣ということになる。指定から半年、何か変化はあったのだろうか?
○もともと国宝だった松江城に降りかかった不運
そもそも松江城は、1935年(昭和10年)に国宝保存法に基づき「国宝」に指定された。だが、1949年(昭和24年)に発生した法隆寺金堂の焼失により、文化財保護法が制定。これにともない国宝保存法は廃止され、それまで国宝と称されていた文化財は、すべて一律「重要文化財」とされる。
そして1950年(昭和25年)、この重要文化財の中から“きわめて価値の高いもの”が抽出され、再度、国宝に指定された。そのため、混同を避けるため1950年以前のものを“旧国宝”、それ以降のものを“新国宝”と呼ぶ場合がある。
松江城にとって不運だったのは、新たに国宝を選定する1950年当時、天守閣が解体修理を受けていたこと。