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総務省の携帯料金に関する会合が終了 - 全5回の話し合いで見えてきたこととは

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総務省の携帯料金に関する会合が終了 - 全5回の話し合いで見えてきたこととは
●首相の要求には応えられたか
総務省が2カ月にわたって開催してきた「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」が終了し、取りまとめ案に基づいた総務省の取り組み方針が決まった。総務省は、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクのキャリア3社にスマートフォン料金の負担軽減、端末販売の適正化、その取り組み状況の報告を要請しており、今後さらにガイドラインの策定などを進めていく方針だ。

○なんとか首相の要求に応えた形

タスクフォースでは3社に対して、ライトユーザー向けに月額5,000円以下の料金プランの検討を求めていたが、「ライトユーザや端末購入補助を受けない長期利用者等の多様なニーズに対応した料金プランの導入等により、利用者の料金負担の軽減を図ること」とされており、具体的な施策はキャリアに委ねられている。

今回のタスクフォースは、安倍晋三首相が携帯電話料金の家計負担軽減を口にしたことからスタートした会合で、10月19日の第1回会合以来、わずか2カ月で取りまとめとなった。具体的な数字などは後回しとなり、要請でも報告を求めるのみで、なんとか「年内」という安倍首相の要求に応えた形だ。

取りまとめ案では、以下の3点について検討が行われ、それぞれ方向性(案)が示されている。

(1)利用者のニーズや利用実態を踏まえた料金体系
(2)端末価格からサービス・料金を中心とした競争への転換
(3)MVNOサービスの低廉化・多様化を通じた競争促進

(1)では、キャリアのスマートフォン向け料金がライトユーザーにとって割高で、生活インフラとしてのスマートフォン普及に必要な料金プランを検討すべきとして、年齢や機種を限定せずライトユーザー向けプランを検討する方向性が示された。さらにキャッシュバックや端末購入サポートの高額化に歯止めをかけ、長期利用者などの負担軽減に繋がる料金プランを検討すべきとしている。


例としては、より少ないデータ通信料のプランを創設する、低廉な国内通話カケ放題プランと少ないデータ通信プランの組み合わせの柔軟化、低容量のデータ通信プランの低廉化、SIMのみの低廉なプランの提供、買い替えしない長期利用者への割引、といったものが挙げられる。

ただ、これらの例のほとんどはすでにMVNOが提供しているサービスだ。MVNOは、キャリアと比べ料金が安いことがメリットとして知られるようになり、ようやく普及の途についたところ。ライトユーザーであればMVNOに移転して自分に合ったプランを選ぶこともできる。MVNOへの流出が無視できなくなれば、MNOであるキャリア側もそれに対抗する措置は必要になるはずで、本来はそうした方向性を目指すべきだったはずだ。

ここでMNOに低廉な料金プランが打ち出されると、もともとMNOからの移転を当てにしているMVNOにとっては打撃が大きい。しかも、MVNOは今、ようやくビジネスが立ち上がり始めたところで、まずはこれを育てる方策を練るべきだろう。

検討の(3)でMVNOについて触れられているが、「MVNO自身が大手携帯電話事業者との差別化を図りつつ、より多くの利用者から選ばれるような戦略をとっていくことが望まれる」という方向性が示されたのみで、正直なところ、「それができれば苦労しない」という思いがあるはずだ。


もちろん、CCCと組んだトーンモバイル、自社の動画サービスと連携できるU-mobileといった特色を打ち出せるMVNOもあるが、それは「MVNO同士の差別化」であり、一番の武器である「MNOに対する価格優位点」を奪うと、MVNOビジネスに影響が出かねない。

●MVNOが普及するには
○MVNOが普及するためには

取りまとめ案ではMVNOの通信品質、サポートへの不安があげられ、「スーパーやコンビニと連携するなど、地方でも店舗を拡充することが望まれる」という意見が出されたが、すでに店舗を展開するMVNOもあるし、キャリア並みのサポートを望めない代わりに低価格化する、というのはMVNOの特徴でもある。

逆に、MNOはサポートに多大なコストをかけているわけで、そのサポートを利用しないユーザーもそのコストは負担している。例えば「キャリアの店頭サポートを有料化してその分通信料金を下げる」という「不公平を解消する」考え方だってできてしまう。キャリアは手厚いサポートを売りにしている分、そういうことはできないだろうが、MVNOはそれを抑えているため安くできている、という面は無視できない。

MVNOが普及するほど、MVNOは独自サービスを提供しやすくなる。その中で、MVNO同士の淘汰も始まるだろうが、それが自然なはず。MVNOが一定のシェアを獲得すれば、キャリアもそれに対抗する必要も出てくるだろう。
もちろん、MVNO普及のために必要な措置はある。MNOの接続料は必要に応じてさらに下げることは検討すべきだろうし、HLR/HSSの開放といった問題も、さらに検討すべきだろう。MVNOへの移転をしやすくするために、2年間の契約拘束後のMNPを簡単にできるようにすることを求めてもいい。「2年契約をしないでいつでもMNPできるようにする」ことは現時点でも可能だが、料金が高くなるので、現実的ではないだろう。2年契約なしで料金を現状並みに下げた場合に、携帯3社の経営にどれだけのインパクトがあるのかは、改めて検証すべき事柄ではあるはずだ。

とはいえ、ライトユーザーであれば、月額5,000円ならMVNOに移転した方が安くなる場合が多い。あまり使わないがサポートは手厚い方がいい、という使い方なら、サポート費用込みと考えて5,000円程度というキャリアのプランを選んだらいい。

KDDIが有料の手厚いサポートサービス「auスマートサポート」を提供しているが、一定以上のサポートは有料化するというのも一つの方針だろう。
逆にMVNOが、「有料サポートが2年間込みで月額3,000円」といったプランもありえる。実際、ソフトバンクはワイモバイルに対してサポート面での手厚さによって差別化できるという話をしており、MVNOに比べると料金は高く、サポートは手厚い、というあたりに落ち着きそうだ。

こうした意味で、料金プランの新たな取り組みが生まれてくる可能性はある。一時期、複雑化した料金プランが批判されたことで定額制に一本化され、今度は容量別に複数プランが用意されるようになったが、結局、ユーザーは、多少複雑でも自分に合ったプランを選びたいということなのだろう。

●サービスで勝負するキャリア
○端末代金の不公平を是正するには

(2)の端末購入補助に関しては、同じく総務省による2007年のモバイルビジネス研究会の議論を経て、現在の「端末代金は定価で分割払い」「その分を通信料金から割引」というプランが生まれた。MNPのスタートによって、MNP獲得のためにその通信料金割引が変動して、販売奨励金を使った販売店のキャッシュバック競争といった売り方も生まれたが、それが異常であることは間違いない。

方向性案では、「不公平を是正する方向で適正化」という方針を示したが、携帯電話を売り切らなくてはキャリアの不良在庫になる。しかし、端末または通信料の値引きができないとなると、ますます売れなくなる。
普通の電気製品であれば、旧機種は値引きして販売されるのだから、適切な値引きであればこれを認める方向性もあっていいだろう。

キャリアが売れ残った在庫を中古市場に販売する、というパターンもあってもいいかもしれない。未開封で中古よりは高いが、新品で買うよりは安いし、これを購入した人が持ち込み契約をすれば、端末補助金も必要ない。これであれば、方向性案が求めた「中古市場の活性化」にも繋がるだろう。

キャリアも「下取り」という形で、旧機種の回収を進めており、この下取り額を増やすことで中古市場に流通させられれば、流通量が増える。さらにユーザーが「中古市場で購入する」ことを一般的に行うようになれば、中古市場は活性化する。ユーザーの意識改革も必要だろう。

何しろ、「端末は売れなければ意味がない」のだ。
会合では「新機種を作りすぎ」というようなニュアンスのコメントもあり、どうもキャリアとメーカーを一体化して考えている節があるが、メーカーが端末を作るのは一定の利益が望めるからで、売れない市場であればメーカーは撤退するしかなく、方向性案の「国民の生活インフラとしてスマートフォンを普及させる」という方針にそぐわない。

PC業界のように一定のビジネスは成り立つかもしれないが、そもそも日本はPCの普及率が低く、同列に並べるのであれば「生活インフラ」レベルには達しないだろう。ただでさえ、日本市場では技術基準適合証明(技適)のような規制や日本固有の周波数帯、日本語への対応など、独自のコストが必要になる。

結局、誰かがコストを負担するわけで、それは広く浅くならざるをえないため、「ライトユーザー“だけ”、長期利用者“だけ”優遇する」というわけにもいかない。最も優遇されるのは「最も収益性が高いユーザー」のはずで、端末補助金を削減しても収益性の高いユーザーの優遇になるだろうし、それがライトユーザーであるとは限らない。

○キャリアはサービスで競争

方向性案では、端末価格での競争ではなく、通信料金・サービスでの競争への転換を求めているが、すでにMNOは差別化と新たな収益源として、コンテンツサービスを開始し、最近はポイントサービスや電子マネーといった決済系、O2Oといったビジネスにも力を入れている。
これは利益があるからこそできるわけだが、それにはインタフェースとなるスマートフォンが不可欠で、やはりMNOにとっては人々にスマートフォンを使ってもらいたい。しかし、AmazonのKindleのように低価格で売ることはできない、という状況になると、新たな方策を考えざるを得なくなる。


すでに、端末購入で現金の代わりにポイントで還元するという売り方が販売店では出ているが、こうした方策が一つだろう。囲い込みとしては一般的なやり方だが、このあたりを総務省がどう判断するかという点もあるだろう。

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基本的に、総務省からの要請に対して、各キャリアは対応を迫られることになる。ライトユーザーや長期利用者向けに何らかの施策を打ってくることは間違いないが、端末を購入したいユーザーに対しての不利益も避けたいところだろう。MNPよりも複数契約に対する優遇策の強化も考えられる。

今後、各社の施策と総務省のガイドライン策定に向けての取り組みが注目される。

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