ひと足早く体験した! - カシオのAndroid Wearスマートウオッチ「Smart Outdoor Watch」
かねて噂されていたカシオの新作リストデバイスが、米国ラスベガスで開催されているコンシューマ・エレクトロニクスショー「CES 2016」で、ついに発表。その正体は、なんとアウトドアユースに特化した「Smart Outdoor Watch」(WSD-F10)だった。
スペックなどは別記事『ついに? カシオのAndroid Wearリストデバイス「Smart Outdoor Watch」』を参照いただくとして、CESでの発表に先立ち、国内でプレス向けに行われたプレ発表会をレポート。会場ではCES発表バージョンを実際に装着、操作することもできたので、その様子もお届けする。WSD-F10の本体カラーはオレンジ、グリーン、ブラック、レッドの4色、発売予定は3月下旬、税別価格は70,000円だ。
○アウトドアに特化して、用途を明確化
WSD-F10は、ただ単に「スマートウオッチ」という近年の流れに乗った製品ではない。カシオ計算機 新規事業開発部 新規事業開発部長 南俊二氏は、冒頭で次のように述べた。
南氏「自分自身や周囲の環境の状態を常に把握してしておき、その中から見たいときに見たいものを見る、知りたいときに知りたいことを知る。
そのためにはリストデバイスという形が最も適切であると判断しました」
しかし、これと近い視点を持つ従来のリストデバイス(Android WearやiOSを搭載した、いわゆる「スマートウオッチ」)が成功しているとは言い切れない。理由とカシオのコンセプトについて、南氏はこう述べる。
南氏「現状のスマートウオッチは色々なことができるが、いざ何に使うのかといわれると迷ってしまう。そこで、カシオはそのひとつの提案として、使用シーンをアウトドアに特化しました。そこで求められるタフネス(耐落下、耐振動、耐高温、耐低温)や防水性能は、MIL-STD規格(米国防総省が定める米国軍用規格)をクリアしています」
WSD-F10は、G-SHOCKをはじめとする腕時計開発のノウハウと、各種センサーやBluetooth、Wi-Fiなどエレクトロニクス技術の両方を持つカシオだからこそ実現できた製品だとした。
続いて、カシオ計算機 新規事業開発部 室長 坂田勝氏が登壇。WSD-F10が想定するアウトドアが、主に「トレッキング(山登り)」「サイクリング」「フィッシング(釣り)」の3つを想定していることを説明。WSD-F10は、側面に大型ボタンを装備しているため登山用のグローブを付けていても操作しやすく、リストデバイスゆえに自転車のハンドルや釣り竿を握っているときも邪魔にならない。
しかも、耐振動性能や5気圧の防水性能により、不安なく装着、使用できるという。
●センサー技術とアプリ連携は?
○センサー技術とアプリ連携で、アウトドアの新しい楽しみを拓く
WSD-F10には、アウトドアで便利なオリジナルアプリを搭載。日の出や日の入り、タイドグラフなどを参照でき、自然環境の変化を知ることができる「ツール」、設定したゴールまでの距離やリアルタイムのスピード、走行距離、気圧の変化(魚の釣れやすさに影響する)などを知る「アクティビティ」、ボートの返却時間や到着予定時刻などをセットしておくと通知してくれる「モーメントセッター」だ。
また、2015年12月に発売されたカシオの分離合体型デジタルカメラ「EXILIM EX-FR100」とも連携する。カメラからのスルー画像をWSD-F10に表示し、画面をタッチして静止画や動画を撮影(リモートシャッター)といった操作が可能だ。
このほか、登山の定番地図アプリ「YAMAP」(株式会社セフリ)や、雨雲レーダー「Go雨! 探知機」(日本気象協会)といったサードパーティー製アプリも搭載される見込み。もちろん、スマートフォンと連携することで、GPSで現在地を検出したり、移動ルートのログを記録したりするなど、より便利に使える(WSD-F10本体はGPSを持たない。バッテリー寿命や本体サイズなどとの兼ね合いから、GPS搭載は見送られた)。
●"時計"にもこだわる
○腕時計メーカーが作るリストデバイスは、時計表示にもこだわる
腕時計メーカーらしい思想が表れているのが「タイムピースモード」。WSD-F10は、カシオのアウトドアウオッチ「PRO TREK」でも採用されている2層液晶を備える。1層はカラー液晶、もう1層はモノクロ液晶だ。カラー液晶をシャットダウンして、モノクロ液晶のみで時計を表示することができるのだ。これを時計だけのモード「タイムピースモード」と呼び、通常使用時に比べ、大きく使用時間(バッテリー駆動時間)を伸ばすことができる。ちなみに通常使用時は、1回の充電で約1日の使用が可能だが、タイムピースモードのみの場合、約1カ月使用できるとのこと。ただし、通常使用時で1日というのはCES発表バージョンの仕様で、現在もアプリケーションを作り込むなど、改善研究は続けているそうだ。
搭載OSはAndroid Wear。
これは「中長期的視点においてAndroid Wearが伸びていくと予想されている」(坂田氏)ことによる。連携する端末はAndroid 4.3以上、iOS 8.2に対応予定。iOSのみ一部機能が制限される。なお、WSD-F10にはマイクも搭載されており、音声入力などAndroidの豊富な標準機能も利用可能。余談だが、マイクを搭載して5気圧防水を持つ機器は世界初(坂田氏談)とのこと。
ちなみに、WSD-F10は基本的にスタンドアローン(スマホ連携なし)でも使用できる製品として開発している。あくまで「スマホ連携することで世界観が大きく広がる」(坂田氏)という位置付けらしい。
ところで、「カシオ」「時計」「アウトドア」と来れば、誰もが想像するであろう同社のアウトドア腕時計ブランド「PRO TREK」との競合について聞いてみたところ、以下のような回答があった。
「WSD-F10は時計事業部とはまったく別の新規事業部が開発を担当しており、カシオでは腕時計とは別の製品と考えています。また、PRO TREKは計測機能に特化しており、本格的な登山を行う方にお買い求めいただくことが多いのですが、WSD-F10はアウトドア初心者の方やライトユーザーを想定しています」(カシオ広報)
WSD-F10については、実機(製品版)の紹介や詳細なレビューなども予定しているので、今後の記事にもご期待いただきたい。