「インクで儲ける」終了? - エプソン、新型インクジェット「エコタンク搭載プリンター」発表会
○既存のビジネスモデルを打破
エプソンは1月12日、新カテゴリープリンタに関する説明会を開催。新カテゴリーの製品群「エコタンク搭載プリンター」、および「カラリオ V-edition」「カラリオ」の新モデルを発表した。
スペックなど製品の概要は、別記事『エプソン、インクジェットの弱みを改善する「エコタンク搭載プリンター」』『エプソン、「カラリオ」複合機/プリンタの新モデル - 小型機など3製品』を参照いただきたい。
特にエコタンクモデルでは、インクジェットプリンタ市場のビジネスモデルを大きく転換する製品となっている。
エコタンク3製品(EW-M660FT・PX-M160T・PX-S160T)は、消耗品としてのインクカートリッジを排し、プリンタの右側に設置されている大型インクタンクにインクを継ぎ足す仕組みだ。また、従来の「(高価な)純正インクカートリッジで儲ける」というビジネスモデルではなく、本体価格は従来よりも高いが、インクのランニングコストは圧倒的に安いという特徴を持っている。
EP-10VAをカラリオ V-editionと位置づけ、こちらも本体価格は値上げするが、インクカートリッジは値下げ。さらに、2015年秋の新製品に追加するかたちで、カラリオ新製品(3モデル)も投入し、ほぼ全モデルのインクカートリッジについて値上げのアナウンスがあった。
●コンシューマー向けプリンタを3カテゴリーに
○コンシューマー向けプリンタを3カテゴリーに
説明会ではまず、エプソン販売の佐伯社長が新製品の概要やエコタンクの意義について述べた。
コンシューマーユーザーのヒアリング調査によって、「消耗品切れ、交換の手間、印刷コスト」の3点に不満があると判断。比較的印刷枚数の多いユーザーに対し、ランニングコストとTCOを解消するべく投入するのが、エコタンク機とカラリオ V-editionであるとした。
エコタンク機は当初3製品、カラリオ V-editionは1製品でスタートする。反響によって、今後のラインナップ拡充に含みを持たせていた。
新製品に関する説明は、セイコーエプソンの久保田氏から。今回の発表はエコタンク3製品とカラリオ3製品だ。エコタンク機はインク交換の手間を大幅に減らし、圧倒的な低ランニングコストを実現した。
カラリオは高画質・多機能・コンパクトを継承した新モデルとなる。さらに、スマホ向けの新アプリを投入するという。
エコタンク機に関しては、もともと新興国から提供を開始していた。2013年までに100カ国まで拡大し、2014年には西欧、2015年には北米市場でも投入している。圧倒的な印字コストだけでなく、カラーで6,500ページ、モノクロで6,000ページという大容量タンクを搭載しており、インクを「交換」ではなく「補充」することで、常時印刷可能な状態を維持できるとした。
今回のエコタンク機には、2回分(8本)のインクボトル(ブラック140ml、CMYカラー各70ml)が同梱される。購入時とインク減少時に補充することで、A4カラー文書なら11,300ページ、モノクロでは11,000ページの印刷が可能。補充用のボトルも、ブラックが1,800円、カラー各色が900円(エプソンダイレクト販売価格)と、圧倒的な低コストを実現した。
また、カラーモデルにはPrecisionCoreヘッドを採用し、5万ページの耐久性も持っている。ラインナップは、カラー複合機のEW-M660FT、モノクロ複合機のPX-M160T、モノクロプリンタのPX-S160Tとなっている。
カラリオの新製品は、2015年秋モデルに搭載された画像補整機能「オートファイン!EX」を備え、写真・テキスト画質を向上させた。6色染料インクを採用するEP-708A、4色顔料インクのPX-048A、そしてカードやロール紙に対応した小型モデルのカラリオ ミー PF-71となる。
オートファイン!EXは、従来は写真の明部のみを補正したものを、暗部の黒潰れも補正するように。テキスト画質は、コピー時の地紋色を消去する背景除去モード(EP-708Aのみ対応)と、細線を強調してわかりやすくする細線強調モード、文字を強調する文字くっきりモードが加わっている。
●互換インクはどうでる?
エプソン販売の鈴村氏は、価格やプロモーションについて説明。エコタンクに関しては、「(印字コストを気にせず)気兼ねなく印刷」できる商品を提供するとした。
ターゲット層には、(同社のプリントチャージまでは使わない)SOHO/中小企業のほか、カラー機はファミリー層、モノクロ機は小規模事務所やモノクロA4レーザープリンタユーザーを想定している。広告のキャラクターは米倉涼子さんが務め、インク交換の手間削減や圧倒的な低ランニングコストを訴求していく。店舗展開だが、全国の主要家電量販店とカメラ量販店の1,300店舗で展開する。うち200店舗では専任の説明員を配置し、ビジネスモデルの違いを説明するという。保証体制も見直し、ユーザー登録すると無償保証期間が2年に延長、さらに引取修理の受付を2年間追加する。
○互換インクはどうでる?
これまでエプソンは、互換インク対策としてインクカートリッジに特許を取ったり、ICチップを取り付けたりしてきたが、エコタンクにはこうした対策はない。
互換インクビジネスが成り立つ背景は、「安い本体を供給してインクカートリッジで儲ける」というビジネスモデルだったので、純正よりも割安のインクカートリッジが売れる余地があった。
エコタンクには互換インク対策がない一方、インクの原価を考えると、ユーザーが互換インクを利用するのはリスクが大きい。
なぜなら、互換インクを使用していることで無償修理ができなくなったり、印字品質が落ちたりする可能性があるからだ。エプソンが打ち出した「エコタンク」は、プリンタ市場にとって大きな転換になるかもしれない。
一方、エコタンク機は本体が高いため、あまり印字しないホームユーザーにはメリットが少ない。こうしたユーザーは、引き続きカラリオを選ぶメリットがあるだろう。専任説明員を店舗に配置するのも、この辺りの説明を行うためと思われる。