FREETEL、「KATANA 03」はContinuum for Phoneに対応か - プラスワン社長に聞く
プラスワン・マーケティングはWindows 10 Mobile搭載デバイスとして、2015年11月30日に発売したFREETELブランドの「KATANA 01」、2016年1月8日から発売した「KATANA 02」という2つをラインナップしている。現在各社が、Windows 10 Mobile搭載デバイスのリリースを競い合っているため、同社としては"次の一手"が必要となるだろう。その答えを同社が14日に開催した「2016年戦略発表会」でCEOの増田薫氏に聞いた。
○メディア初登場の「KATANA 02」
「KATANA 02」は、2015年12月25日から先行発売を開始すると同時に、希望価格を2万9,800円から1万9,800円へ改定して、市場に大きなインパクトを与えている。
読者のなかには、すでに同端末を使用中という方もおられると思うが、メディア向けに実機をアピールするのは今回の発表会が初めてとなる。本誌では詳しく紹介していなかったので、まずはKATANA 02について簡単に説明しよう。プロセッサーはQualcommのSoC「Snapdragon 210(MSM8909 Quad core 1.1GHz)」を採用している点はKATANA 01と同じ。
内蔵メモリーを2GBに、ストレージを16GBとKATANA 01の2倍に増量している。
また、ディスプレイサイズは4.5インチから5インチ(1,280×720ピクセル)に拡大し、換装可能なバッテリーも1,700mAhから2,600mAhに変更。Windows 10 Mobileデバイスとして、ミドルレンジモデルとはいい難いものの、エントリーモデルとして見ると"Windows 10 Mobileを試したい"と考えるユーザー層には手が届きやすい。
KATANA 02は2枚のmicro SIMカードを挿入できるが、周波数などの問題が遠因で、国内では一方のSIMカードしか使用できない。メリットを享受できるのは海外渡航の際だろう、現地でSIMカードを調達することで、通信費の抑制につながる。海外出張の機会が多いビジネスマンには嬉しい仕様と言えるだろう。
KANATA 02上のWindows 10 Mobileを操作すると、残念ながらKATANA 01と同じ"重さ"を感じる。上位SoCを搭載し、より高額な他社製Windows 10 Mobileデバイスと比較すると見劣りする観があるのは否めないが、約2万円という価格設定は十分魅力的である。あちらを立てればこちらが立たずという状況について、プラスワン・マーケティングCEOの増田薫氏と、同社ビジネスアライアンスグループ担当取締役の野村晴彦氏に伺った。
●KATANA 03(仮称)の展望
○「KATANA 03(仮称)」はContinuum for Phone対応?
価格変更について野村氏は「社内で議論もあったが、まずはエコシステムにつながる(Windows 10 Mobileの)『広がり』が大切と考えた」と語る。増田氏も「我々は『デバイスを安く提供したい』という企業理念が根底にある。デバイスが広まればアプリケーションも充実し、(市場が)面白くなる」と、理由を説明した。その背景には開発工数を省くなど多くの企業努力を伴ったが、多くの人に使ってほしいという存意と、「(Windows 10 Mobileデバイスを)発売は未知数な部分も多かったが、SIMフリー市場を担う弊社はチャレンジする義務がある(増田氏)」という姿勢が大きかったという。
その結果、KATANA 02の販売結果はどうだったのだろうか。野村氏は「初速はKATANA 01よりもKATANA 02の方が上回っている」と筆者に語った。同社は販売実績などは明らかにしていないが、「KATANA 01購入後にKATANA 02も購入したお客様や、フィーチャーフォンからスマートフォンに乗り換え先として安価なKATANA 01を選択したお客様もおられた」(野村氏)という。当初からコンシューマー以外に法人ユーザーもターゲットに加えていた同社だが、「Windowsを社内で使っている企業が実験的に数台から数十台購入して頂くケースも出てきた。
法人向けソリューションも始まっている」と野村氏はビジネスソリューションが始まりつつあることを明かした。今後は日本マイクロソフトなど他社と協力したパッケージメニューの提案なども検討しているという。
話を伺う限りKATANA 01/02は順調のようだが、筆者も本誌にたびたび寄稿しているように、Windows 10 Mobile用アプリケーションは決して多いとはいい難い。その点については増田氏も危惧していた。「だからこそデバイスを高く販売しても市場が萎むよりも、安く販売して市場を盛り上げた方がよい。その結果アプリケーションベンダーなどが購入してくれれば、アプリケーションの増加につながるだろう」と語る。
また、筆者はODM(Original Design Manufacturing)メーカーから調達したデバイスを、そのままリリースするという流れも問題があると考えている。一部のスマートフォンは、ODMメーカーが開発したラインナップから自社が必要とする機能をチョイスし、自社製品としてリリースしている。
その結果、似通ったWindows 10 Mobileデバイスが市場に出回ることになるが、この点について野村氏は次のように語った。
「Androidと異なり、Windows 10 Mobile自体がOEMベンダーにとって差別化が難しいOSだ。我々もデバイスの解像度やバッテリーといった点にこだわりつつも、エコシステムを踏まえた他社との連係を重視した、多彩なパッケージ提供を目指したい」という。
続けて「例えばカラフルな車よりも白や灰色を配色した車を選択するユーザーが多い。24時間常に身につけるスマートフォンも同じく、気兼ねなく使えるデバイスが大事」と、奇をてらったデバイスよりも、スタンダードなデバイスに存在価値があると語った。
気になるのは次期モデルである。増田氏は「KATANA 01/02で終わるつもりは毛頭ない。よいタイミングで次のデバイスをリリースしたい」と説明し、野村氏は具体的な展開を筆者に説明した。
「KATANA 01/02はContinuum for Phoneに対応しておらず、エンドユーザーも法人ユーザーも同機能を前提にされるため、市場状況を見据えた投入タイミングが最大の課題と考えている」という。つまりKATANA 03(仮称)は、Continuum for Phone対応デバイスと想定して構わないだろう。野村氏も個人の意見と前置きしながらも「ユーザーの皆さんが『許してくれない』と思っている」と前向きな姿勢を見せていた。
ただ、Continuum for Phone対応デバイスは自社でイチから取り組む必要性があるため、開発チームの技術力が大きく反映される部分だ。その点について野村氏は「(中国のODMメーカーが)日本の大手キャリアで販売されるデバイスと比較すると、クオリティ面で競争するのは難しい。中国の某メーカーも大手キャリアのラインナップに加わるまでは、相当な努力をしてきた。その結果、東南アジアやアフリカの市場で存在感を示せるようになった」と過去のODMメーカーの努力を引き合いに出しながら、「提携しているODMメーカーの担当者を日本に招き、各社と協力して技術向上をつなげることで、(Continuum for Phone対応Windows 10 Mobileデバイスを扱う)他社との競争を目指す」と、技術的側面の対応姿勢を説明した。
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今回の取材で印象的だったのは、増田氏の「各IT企業で営業責任者を務めてきたが、そこで感じたのが『利益だけを追いかけると、つまらなくなってしまう。
製品に対する愛着を持てなくなる』」という発言である。同氏は個人の利益だけを求めるのであれば起業しなかったと説明しつつ、「よいモノを作って世に広める」という企業理念の上でWindows 10 Mobileデバイスにチャレンジする姿勢は、Microsoftが提唱する"One Windows"を実現する強い味方になるように感じた。