大阪府立大、ナノ流体チップで1兆分の1mlの水を自在に制御できる技術を開発
同成果は、大阪府立大学 ナノ科学・材料研究センターの許岩 テニュア・トラック講師と、同大学大学院 工学研究科 原田敦史 准教授らの研究グループによるもので、1月20日付けの独科学誌「Advanced Materials」オンライン速報版に掲載された。
ピコリットル以下の流体を自在制御する難しさを克服するための技術として、ナノ流体チップ技術が期待されている。ナノ流体チップとは、内部にナノメートルサイズの流路(ナノ流路)が彫り込まれた数センチ四方のガラス板で、超微小流体実験環境として近年発展を遂げているデバイス。しかし、ナノ流体チップを用いてピコリットル以下の流体を自在に制御するためには、ナノ流路内に流体制御素子、すなわちバルブの構築を必要とするが、ナノ流路が極めて小さく閉じられた空間であるため、このような技術はまだ確立されていなかった。
今回の研究では、精密な分子構造を有するソフトマテリアルと新たに開発された超高精度ナノ集積化技術を使って、ナノ流路に開閉自由な超微小スマートバルブを開発。温度応答性ポリマーブラシをナノ流路内局所的に精密構築することで、ナノ流路内における温度変化によりナノ流路の開閉が自在に制御される。各ナノ流路は髪の毛の数百分の1の太さで50フェムトリットル(1兆分の1ml)の体積を有する。
水および蛍光色素の水溶液を用いた超微小スマートバルブ性能評価の実験により、30.8℃以下の場合はナノ流路が「閉」状態となり、30.8℃以上の場合はナノ流路が「開」状態となることがわかった。同バルブは、「閉」状態となった場合少なくとも200kPaの高い耐圧性を示すうえ、開閉作動速度が早く、長時間繰り返す作動ができることもわかっている。
同研究グループによると同技術は、化学やバイオ、物理、機械、材料、エネルギー、創薬、臨床医学など幅広い分野におけるさまざまな液体プロセスの精度、集積度および処理能力を大幅に向上させるもので、たとえば1個の小さな細胞が含む多くの生体物質および分子情報を、極限の精度で網羅的に定量解析することに役に立つとしている。また、1分子単位で溶液中のたくさんの分子を精密に直接操作することも実現可能となり、従来の常識を覆す未来の化学プロセスへと進化する可能性があるという。
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