●ディープラーニングが生まれるまで
現在、IT業界のみならず、さまざまな産業界で最もホットな話題のひとつである「人工知能(AI)」。かつてSFの夢物語だった「考える機械」が、今、さまざまな産業界において、急速なピッチで現実のものになろうとしている。人工知能の進化の裏には、技術面での進化が欠かせないものだった。
○人工知能のレベルを引き上げた「ディープラーニング」
人工知能というと、映画「2001年宇宙の旅」の「HAL」のように人類に反乱を起こすちょっと危険なコンピュータ、あるいは「鉄腕アトム」や「ドラえもん」のように人間臭い感情を持ったロボットのことを思い出す人が多いのではないだろうか。現実の人工知能はこういったレベルには達しておらず、画像認識や音声認識など、限られた処理において、「人間が正確に条件を入力しなくても、自分で推測して答えを導き出す」という程度のものにすぎない。しかし、技術の進歩に伴い、その精度と速度は人間を上回るものになろうとしている。
たとえば、画像の中に何が写り込んでいるかを見つけ出す画像認識については、2011年ごろまでは「機械学習」という手法で鍛えられた人工知能は長年、80%程度の正答率を超えることができなかった。