「VAIO Phone Biz」がWindows 10 Mobile市場を切り拓くか - Continuumのファーストインプレッションも
VAIOは4日、Windows 10 Mobile搭載スマートフォン「VAIO Phone Biz」を4月より発売すると発表した。これまで登場したWindows 10 Mobileスマートフォンと異なり、法人市場をターゲットに含めた同端末について、VAIOの大田義実社長は「ビジネスを加速させるスマートフォン」とアピールしている。
○VAIOブランドのWindows 10 Mobileスマホ
2015年10月14日に日本マイクロソフトが開催した発表会では、Windows 10 Mobileスマートフォン開発を表明したパートナー企業として、VAIO、日本エイサー、トリニティなどの名前が挙がった。既に日本エイサーは「Liquid Z530」の発表を行い(発売時期は未発表)、トリニティの「NuAns NEO」は発売済み。Windows 10 Mobileデバイス先陣組の最後を飾るのが、VAIOの「VAIO Phone Biz」だ。
VAIO Phone Bizは、製品名が示すように、法人市場を念頭に置いたWindows 10 Mobileスマートフォンである。大田社長も「法人中心の製品として企画設計した」と語っているが、その背景や狙いを説明する前にデバイスの基本的なスペックから確認しよう。CPUはQualcomm Snapdragon 617を搭載し、メモリー容量は3GB。
ストレージは16GBだが、microSDによる最大64GBの増設が可能だ。
ディスプレイは5.5インチ(1,080×1,920ピクセル)。サイズについてVAIO商品企画の岩井剛氏は「手元で(標準搭載の)Officeを使うには、この程度のサイズが必要と考えた」と説明する。SIMフリーの端末でスロットサイズはmicroSIM。対応するバンド数は3G、4G合わせて7バンド。同氏は「VAIO Phone Bizは日本市場向けに開発したスマートフォンのため、国内の主要なバンドに対応した」と語り、NTTドコモのキャリアアグリゲーションへの対応や、安定通信の実現を証明するNTTドコモのIOT(相互接続性試験)の実施も予定している。
●Continuumを試す
○Continuum for Phoneに対応
前述の通りVAIO Phone BizはSnapdragon 617を搭載している。「NuAns NEO」に続いてContinuum for Phoneをサポートする、国内では2機種めのWindows 10 Mobileスマートフォンだ。
タッチ&トライ会場には試作機が並んでおり、筆者も試してみたところワイヤレスのためか、操作時に一拍置くような遅延が発生していた。
キー入力は"少々遅い"程度だが、画面描画などはもたつきを感じた。ただし、会場には多くの人が群がり、その数だけ通信デバイスが存在するため、ネットワーク状態は芳しくなかったはずだ。
他方でVAIO Phone Biz本体の動作自体は快適である。NuAns NEOを除く多くの国内Windows 10 MobileスマートフォンはSnapdragon 210を搭載し、その分動作も緩慢な場合がある。筆者は以前、Qualcomm Snapdragon 400を搭載するWindows 10 Mobileスマートフォンに触れ、快適な動作に喜んでいたが、VAIO Phone Bizはそれ以上だ。
ユニバーサルWindowsアプリの起動やスクロール、タスク切り替えといった細かなアクションが快適に動作し、CPU性能の差を改めて感じさせられた。手にした感触も心地よく、バッテリーは2,800mAhと容量多めだが、本体重量は約167gだという。
担当者によれば現在のVAIO Phone Bizは開発途中で、一部のアプリ起動が遅くなるなど問題が確認されているそうだ。それでも高いパフォーマンスを見せるVAIO Phone Bizは、かなり魅力的なWindows 10 Mobileといえる。
●VAIO Phone Bizの狙い
○VAIO Phone Bizを法人市場に特化する理由
個人利用でも魅力的な端末だが、VAIO Phone Bizは法人市場をメインターゲットとしている。今回の発表会に同席したNTTドコモ法人ビジネス部や、日本マイクロソフトと提携するダイワボウ情報システムを通じて法人向け販売を行う予定だ。コンシューマー向けには販売チャンネルとして、VAIO直営オンラインストア「VAIO STORE」やビッグローブ、楽天モバイルなどのMVNO、一部量販店が用意されており、そこから購入できる。
このような戦略を選択した理由として考えられるのは、Windows 10 MobileとWindows 10という組み合わせが、ビジネスシーンでもっとも有用なソリューションとなるからだ。日本マイクロソフト平野拓也社長は「Microsoft Intuneなどと連携することで、ワークスタイル変革や生産性向上、セキュリティ対策や管理性向上といった多くのメリットを享受できる」と説明した。
NTTドコモの取締役常務執行役員法人ビジネス本部長である高(「高」は「はしごだか」)木一裕氏も「Continuum for Phoneを実現するミドルレンジクラスのデバイスはビジネスと親和性が高い。
自信を持って薦めていく」と語る。
日本マイクロソフトは2015年8月にダイワボウ情報システムと共に「Windowsモバイルビジネスセンター」を設立し、2015年10月にMDM(モバイルデバイスマネジメント)分野に強いアイキューブドシステムズと協業するといった準備を進めてきた。平野社長は「(以前のWindows Phone日本市場撤退を踏まえて)当時と比べても高いレベルで法人顧客のニーズを満たせるタイミングだ」と現状を分析し胸を張った。
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本誌読者の大半はコンシューマーのため、このようなビジネス戦略には興味を持たないだろう。だが、今回のVAIOとNTTドコモ、そして日本マイクロソフトが協業するビジネスプランが成功すれば、コンシューマー分野でもWindows 10 Mobile市場は大きく加速する可能性が高い。VAIOの担当者は次期モデルについて市場動向を見ながら判断するとしているが、コンシューマー向けモデルの登場も期待できるはずだ。
提供元の記事
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