佐久間宣行、“千鳥のすごさ”を改めて実感「二人ともがトップクラス」
●Netflixのオファーに驚き「期待に応えたい」
Netflixコメディシリーズ『トークサバイバー! 〜トークが面白いと生き残れるドラマ〜』(全世界独占配信中、全8話)が、3月7日・3月14日週のNetflix国内シリーズ部門で2週連続1位を記録するなど注目を集めている。
同作では、間宮祥太朗や東出昌大をはじめとする実力派俳優陣が脇を固める本格ドラマに、千鳥・大悟と若手からベテランまでセンス抜群の話芸を極める芸人たちが参戦。千鳥・ノブがMCとして見守るなか、ドラマ内にあるフリートークゾーンで突然与えられるお題に沿ったエピソードトークを披露し、面白くないと判断されれば即ドラマから降板となる、生き残りをかけたトークバトル番組だ。
トークとドラマの両パートを牽引した大悟と、MCとして番組全体を見事にまとめ上げたノブ。企画・演出を担当した佐久間宣行氏は、同作を通して改めて「千鳥のすごさ」を実感したと言う――。
○■千鳥の快諾が「すごく嬉しかった」
――世界190カ国の国と地域で配信されるという非常に注目度の高いプラットフォームでの番組制作となりました。最初にオファーがあった時の率直な感想を教えてください。
最初にお話を頂いた時は、やっぱり驚きましたね。
テレビ東京を退社してすぐにお声がけいただいて、しかも、普通のお笑い番組ではない、色々なものが組み合わさった一番チャレンジングな企画を選んでいただいたことにも驚きました。だから、期待に応えたいと思って作ったし、その気持ちに乗っかって、千鳥が出てくれたこともすごく嬉しかったです。
千鳥との付き合いは7、8年になりますが、最初からずっと面白かったですし、天下取りに近い存在に絶対になるだろうなと思って、千鳥の東京初冠番組を作ったんですけど、実際にそうなってますからね。その千鳥がこの大変な企画に「やります」と言ってくれたのは、すごく嬉しかったです。
――佐久間さん自身が「チャレンジ」だと思うポイントは、どういったところでしょうか?
分かりやすいバラエティ番組というよりは、連ドラの中でトークパークが訪れて、しかも降板していく人がいるという、ストーリーと芸人の面白さ、両方を追い求めたところですね。でも、あくまで「芸人がこの場でトークするのはどうなんだ?」っていうのを大事にしていて、そのためにフリを大きくしようと思って、あの規模のドラマを用意しました。ドラマパートにノブさんのツッコミを入れることは最初から決めてたんで、ノブさんのツッコミがあるんだったら、このくらいフリを大きくしたほうが面白いのかなと思っていたのですが、「やっぱりノブさんすごいな」「こんなに上手くツッコんでくれるんだ!」と改めて実感しましたね。ノブさんが本当に楽しんでくれていたのもすごく良かったです。
●改めて感じる“千鳥のすごさ”とは
――大悟さんはドラマパートとトークパートの両方に出ずっぱりで、相当負担も大きかったのかなと。
大悟さんもやっぱりすごいですよね。みんなが話しづらいって時には自分から率先して切り込むし、絶対に逃げないで、最後まで面白いトークをして。
――そしてドラマパートでは、大悟さんの演技が絶妙でした。
『千鳥の大漫才2017』で、『大悟魂(だいごこん)』っていう、大悟さんがお芝居をして、ノブさんがツッコむっていう構図の長編芝居企画があって、その時の大悟さんの芝居がちょうど良かったんですよ。マジでやってて、ボケてないんだけど、ノブさんがツッコんだら、めちゃくちゃ面白くて。この企画に近いテイストのものをどこかでやりたいなと思っていたので、今回、ドラマのなかでその要素を入れたら、やっぱり上手くハマったって感じですね。
――『トークサバイバー!』はそこに、千鳥さんと佐久間さんがタッグを組んだ『NEO決戦バラエティ キングちゃん』の企画「ドラマチックハートブレイク王」の要素もありますよね。
『ドラマチックハートブレイク王』は元々、トークを『テラスハウス』みたいにカッコよく撮ったら、ドラマの構図になっているので、みんなが笑いを堪えなきゃいけなくて面白いんじゃないかなと思って、トークの部分から思いついた企画で、ドラマは本当にフリの部分として付けただけなんです。
『トークサバイバー!』ではそのドラマの部分を大きくして、大悟さんの芝居の面白さを生かしながら、「トークをドラマ調でやるっていう面白さを足せないかな?」という考えから作りました。
○■「二人ともがトップクラスに面白い」
――『トークサバイバー!』は、佐久間さんが千鳥のお二人を信頼しているからこそ生まれた企画だと思います。改めて、佐久間さんが思う「千鳥のすごさ」を教えていただきたいです。
千鳥のすごさはまず、二人ともがトップクラスに面白いということですね。ボケもツッコミもすごく高いレベルで二人とも面白いから、どの企画もどの角度からでも成立する。
ノブさんから切り込んでいくこともできるし、大悟さんから切り込んでいくこともできる。二人一緒にツッコむこともできるし、大悟さんがめちゃくちゃボケてノブさんが振り回されることもできるし、ノブさんが回して、大悟さんが変な角度をつけたりすることもできる。
あとは、二人そろって酷い目に遭うこともできて(笑)、現場をどんな形でも面白くしてくれます。
それとやっぱり、二人とも優しいですよね。面白くて優しくてカッコいいです。だから、『トークサバイバー!』の現場でも、千鳥の前ではみんな「この人たちに『面白い』と思われたいから頑張ろう」と思ってくれたんじゃないかな。
大悟さんがこんなに出ずっぱりで頑張ってるんだったら、俺たちも面白いことを言わなきゃダメだよっていう空気が流れてるから、みんなトークを振り絞ってくれた。千鳥は、人の本気を出させることができる芸人だと思います。
●キャスティング秘話「『ほらな』と言いたい(笑)」
○■キャスティングに手応え「当たったな」
――『トークサバイバー!』は豪華キャストも見どころです。出演者の方々をキャスティングする上で軸にしたことはありますか?
自分が本当に面白いと思う芸人さんたちにせっかくなら出てほしいし、千鳥とスイングしそうだなと思った人と、一見そんな風に思われていないけど、サプライズ的に「こんなにトーク面白いの!?」と思わせる人を選びました。
狩野(英孝)くん、向井(慧)くんもそうだし、錦鯉の渡辺(隆)さん、峯岸みなみさん、アンミカさんとか。実はオードリー・春日(俊彰)のエピソードトークが面白いことも知っていたので。
キャスティング段階では、渡辺さんは『M-1』獲ってないし、向井くんだってラジオの帯番組が発表される前。そういう意味で言うと、「当たったな」と思います(笑)。
――今まさに注目を集めているキャストを集結させたんだと思いました。それくらい今大活躍中の方ばかりです……。
「えっ、向井がトークなの?」「パンサーなら、菅じゃない?」と言う人もいました。周囲を説得して向井くんに出てもらったんですけど、半年後にこの状況を見ると、「向井なの?」と言った人には「ほらな」と言いたい(笑)。
「すごいキャスティングですね!」と言ってもらったり、今キャスティングした番組みたいに見えているんだったら成功ですね。――俳優陣も錚々たるメンバーで、ドラマに登場しただけで笑ってしまいました(笑)。こちらのキャスティングにはどのような意図があったんですか?
この企画って大変で、役者の皆さんは本気でお芝居をしないといけないけど、ツッコミを入れられてフリになるので、お笑いが好きな人じゃないと分かってもらえないだろうなと。だから、お笑いに愛のある役者さんにやってほしいと思いました。
間宮くんは千鳥のこと大好きだし、高橋ひかるさんは自他ともに認めるお笑い好きだし、実は東出さんもお笑いが好きなので、お願いしたっていうのが一番大きいですね。
○■ドラマパートもお笑いのフリに
――ドラマパートでは、ノブさんが「怖い!」とツッコミを入れるようなシリアスな展開もあり、ハラハラしました。あくまでもトークがメインとおっしゃっていましたが、ここにはどのような狙いがあったんですか?
視聴者の皆さんは基本的に面白いトークを聴きたくて観てると思うんですけど、それだけじゃなくて、全8話観ていただいた方へのボーナスみたいなものを渡したいなと。あと、ドラマのストーリーもマジでやってるのも、お笑いのフリになると思って。
あとは、芸人がコント衣装として制服を着ることに違和感はないと思うんですけど、普通のドラマだったらできないじゃないですか? だっておかしいから(笑)。でも『トークサバイバー!』では、それが違和感なくできる。しかも、お笑いがメインなんだけど、最後まで観ていただくと、そういう仕掛けも伏線として生きてくる……という構造になっています。
●『マジ歌』で気づいた“笑いの構造”
――佐久間さんがプロデューサーを担当した『SICKS〜みんながみんな、何かの病気〜』(テレビ東京系)も単なるコント番組ではなく、大筋のストーリーでも魅せる構成でしたよね。
自分の強みを考えた時に、多分バラエティを作ってる人の中ではかなりドラマの知識があるほうだったり、ドラマに対する愛情も深いのかなと思っていて。
今までもお笑いの中にドラマを組み込む構成はありましたが、そのほとんどがパロディだったと思うんですよ。だけど、僕は『ゴッドタン マジ歌選手権』をやってみて、ネタ元はあるけど、あくまでもマジで音楽作ったほうが面白いという笑いの構造もあるんだと。
それをドラマでもやりたいと考えていたものが『キス我慢選手権』の映画になり、そこから発展して、もっとお笑いとドラマのストーリーを融合させたいと思って、『SICKS』を作りました。そしてお笑いとドラマのストーリーを融合させたもののもう一つの形が、配信ドラマあるあるも入れながら、見せどころはお笑いにするものを作りたいと思ってできた『トークサバイバー!』なんです。こんな風に右往左往しながら作っていて、これからもそうなっていくんだろうなと思います。
――では最後に改めて、『トークサバイバー!』の見どころを教えていただけますか?
まずはやっぱり千鳥がめちゃくちゃ面白いです。大悟さんがかっこよくて、芝居もトークも面白い。そして全部にツッコミを入れるノブさんが面白くて、出てる芸人もみんな面白くてかっこいいです。
その芸人たちが途中からどんどん消耗していって、ドキュメンタリーみたいになってトークを絞り出していくと、面白いトークをしてるのか、本音を吐露してるのか分からないような状態になって。みんな大変だから、全員の連帯感ができて、「なんとかこの現場を乗り切ろう」という空気になっていくのが面白いですし、あまり見たことがないものになっていると思います。
その中で「この芸人さんってこんなにカッコよかったんだ』『この芸人さんってこんなに面白かったんだ』と驚いたり、あとは芸人さんだけじゃなくて、『この人こんなに面白かったんだ』という人も出てくるという、発見に満ちた全8話になっています。
あとは、こんなに壮大だけど馬鹿馬鹿しくて、くだらない企画に本気で付き合ってくれた俳優の方々のことも好きになる企画が作れたんじゃないかなと思うんですけど、それは見終えたあとで感じていただけたら。1話からゲラゲラと笑って観られると思うので、嫌なことがあった人とかに本当に何も考えずに観ていただきたいです。
■プロフィール
佐久間宣行
1975年生まれ、福島県出身。早稲田大学卒業後、99年にテレビ東京入社。『TVチャンピオン』『ピラメキーノ』『トーキョーライブ22時』『青春高校3年C組』『SICKS~みんながみんな、何かの病気~』『ウレロ☆シリーズ』などを担当し、21年に退社。引き続き『ゴッドタン』『あちこちオードリー』『考えすぎちゃん』とテレ東番組のほか、『佐久間宣行のオールナイトニッポン0』(ニッポン放送)、『サクマ&ピース』(福島中央テレビ)、『佐久間宣行のNOBROCK TV』(YouTube)に出演もする。2022年、企画・演出を担当したNetflixコメディシリーズ『トークサバイバー! 〜トークが面白いと生き残れるドラマ〜』が全世界独占配信中。