農業のディズニーランド!? 「なめがたファーマーズ・ヴィレッジ」の遊び方
2015年10月茨城県行方市に、日本初のさつまいものテーマパーク「なめがたファーマーズ・ヴィレッジ」がオープンした。"農業のディズニーランド"とすることを目指し、企業とJAと農業生産法人の三者で設立された同施設は、TPPに揺れる日本の農業の中にあって今注目の取り組みとなっている。今回はこの魅力と楽しみ方をたっぷり紹介しよう。
○ただの加工工場ではなく体験型テーマパークを
ヴィレッジは茨城県南東部に位置する行方市、北浦と霞ヶ浦の2つの湖の間にあって水と緑に恵まれた一大農業地域に位置する。茨城県はさつまいもの三大産地のひとつで、鹿児島県に次ぐ国内第2位の収穫量を誇り、行方市は県内有数のさつまいもの産地として知られている。
ヴィレッジの建設は、おいもさんのお店「らぽっぽ」で知られ大学芋で国内販売シェア8割を有す白ハト食品工業が、さつまいもの加工工場を目指して実現したもの。その誘致に際し、地元JAなめがたは単なる工場でなく地元農業の魅力を知る体験を入れ、地域貢献につながる場にすることにこだわった。
両者は話し合いを重ね、ここを「見る」「食べる」「育てる」体験型農業テーマパーク、いわば"農業のディズニーランド"を構想。
そこに、地元農家300人の出資も得た農業生産法人が事業運営を行うという、三者のつながりの中でヴィレッジは設立された。
ヴィレッジは総敷地面積33万平方メートル。廃校となった小学校跡地を活用したさつまいもの加工工場やミュージアム、ショップ、レストラン等が集まる商業施設を核とし、その周辺には東京ドーム7個分といわれる、らぽっぽのお芋畑や貸農園、和栗の森、クワガタ・カブトムシの森などの田園風景が広がる。隣接して白浜少年自然の家やレイクエコー等、宿泊やキャンプ、各種体験ができる県の施設があり、滞在型体験観光を楽しむことも可能だ。
ヴィレッジではゲストとして食事や買い物、各種体験を楽しめるほか、さつまいもの「おいも株オーナー制」や様々なプレミアム特典が用意されている貸農園「ロイヤルファーム・オーナーズクラブ」のオーナーとなることもできる。
○小学校の趣をそのままに
ヴィレッジの入り口にはセントラルガーデンがあり、シンボルの農夫のオブジェが印象的。外観がほぼ小学校当時の姿をしているのは、「地元の愛着ある校舎を残したい」という想いに応えたもので、門扉や校庭もそのまま残されており、一見すると学校にしか見えない。どこか懐かしい風景で、昔の記憶を呼び覚まされる場所だ。
門をくぐるとさつまいもや地元野菜、地元の特産品などが並ぶオシャレな商業施設がある。中には日本に40種あると言われるさつまいも品種から季節の銘柄を集めた「日本のさつまいも」や、らぽっぽの人気商品スティックポテトの詰め放題コーナー、ファームベーカリーやカフェなど、多彩なコーナーやショップがある。
●農家が見えるパンに親子で遊べるミュージアム、身体においしいビュッフェも
○さつまいも以外の地元食材も
さらに地元農家のコーナーには、朝採り新鮮野菜が集まる「ファーマーズ・マルシェ」と地元のお米を使ったおにぎりとお惣菜を提供する「なめがた農家キッチン」がある。野菜コーナーには初めて見るイタリア野菜や希少野菜も多く、実に色鮮やかだ。しかも、それがお手頃価格ときている。とにかくどれも魅力的で試してみたいものばかりだが、一日ではとても味わいつくせない気がするほど、ショップはバリエーションが豊かだ。
近年、健康志向でスムージーも人気になっているが、ヴィレッジ内の「さくらカフェ」では、季節の新鮮野菜やフルーツをふんだんに使ったオリジナルのフレッシュスムージーやジェラートをいただくこともできる。
「らぽっぽファームベーカリー」では、大人気のポテトアップルパイはもちろん、食物繊維豊富なさつまいもに旬の野菜を加えた不老長寿のコンセプトとしたパンを多数そろえている。
オススメはなめがた限定、ここでしか買えない茨城県産の焼き芋を丸ごと使った「まるごと焼きいもパイ」に「おいもミニタルト」や「季節のミニタルト」だ。関西大学と共同開発ののどごしツルんな「おいもぬくもり」パンもぜひチェックしたい。
○至高の干し芋がここに
個性的なところでは干し芋バーを併設した「おいも熟成蔵」がある。燻製やチョココーティングされた個性的な干し芋や幻の干し芋と呼ばれる至高の干し芋が集められ、テイスティング(有料)もできる。お土産にさつまいもから抽出した芋蜜なんていうのはどうだろう。また、親子で遊びながらさつまいものことが学べるミュージアムでは、工場見学やスイートポテト作りやステックポテトの試食もできる。そんな中でもイチオシなのが、2階にあるイタリアンビュッフェレストランの「ファームトゥザテーブルなめがた」だ。実はここ、フードプランナーが監修したおなかいっぱい食べてもダイエットできるという「ビューティベジタブルビュッフェ」が自慢。
その名の通り、畑からそのまま食卓に届けられた地元の新鮮野菜やパン、スープが食べ放題となっている。それだけでも食べきれないほど充実しているのに、メインのパスタやピザ、肉料理もボリュームたっぷりで男性も大満足だろう。肉料理では、つくば鶏や常陸牛、瑞穂のいも豚など、茨城が誇るブランド肉を使用。22時まで営業しており、ランチだけでなく、ディナーでも楽しる。
最後にプレミアム特典多数の「ロイヤルファーム・オーナーズクラブ」について紹介しておこう。コースにより特典は異なるが、オーナーになると自分の畑を持つことに加え、栽培に関してはプロの農家の指導を受けることができ、和栗の木やブルーベリーのオーナー権、オーナー専用のBBQ施設の使用権が与えられる。行方市のふるさと納税の返礼品にもなっており、随時見学会も行っている。今春にはどろこんレンコンファーム・ザリガニファームの開園も予定している。
一度、遊びに行ってみてはどうだろうか。
※記事中の情報は2016年2月のもの
○筆者プロフィール: 水津陽子
フォーティR&C代表、経営コンサルタント。地域資源を生かした観光や地域ブランドづくり、地域活性化・まちづくりに関する講演、企画コンサルティング、調査研究、執筆等を行っている。著書に『日本人がだけが知らないニッポンの観光地』(日経BP社)等がある。
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