新たなアリアドネーの糸、欧州の次世代ロケット「アリアン6」の設計固まる - 【前編】紆余曲折を経て決まったアリアン6
欧州が開発を進める次世代ロケット「アリアン6」。検討中の紆余曲折を経て、今年1月に設計が完了し、いよいよ開発が本格化する。
アリアン・ロケットを運用するアリアンスペースは現在、世界の商業衛星打ち上げ市場において約半分のシェアを握っているが、米国スペースXの「ファルコン9」ロケットが、その安さを武器に、徐々にシェアを広げつつある。また世界各国でも、今後数年のうちに続々と新型ロケットが登場し、アリアン6は生まれる前から大きな課題を背負わされている。
果たしてアリアン6は、この難題を解決できる「アリアドネーの糸」となれるのだろうか。
○アリアドネーの糸、みたび
ギリシア神話によると、地中海に浮かぶクレーテー島にはかつて、ミーノータウロスという怪物が棲んでいた。この怪物に脅かされていたアテーナイ国のテーセウス王はこの怪物を倒すことを決意し、いざクレーテー島に乗り込む。しかしミーノータウロスは脱出不可能な迷宮の中におり、テーセウスが生きて帰れる保証はなかった。
そこに、テーセウスに惚れた、クレーテー島の王の娘アリアドネーが現れ、彼に糸を手渡す。迷宮の入り口に糸をくくりつけて垂らしながら進み、帰りはその糸を辿ることで、迷わずに帰ってこられるのではないかという機転のきいたアイデアだった。