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ThinkPad史上最も薄くて軽い2in1 PC「ThinkPad X1 Tablet」はいかにして誕生したか

マイナビニュース
ThinkPad史上最も薄くて軽い2in1 PC「ThinkPad X1 Tablet」はいかにして誕生したか
●開発者に聞くその裏側

既報の通り、レノボ・ジャパンは9日に同社の法人向けPC「ThinkPad」の新シリーズ「ThinkPad X1」ファミリーを発売した。いずれも薄型・軽量のプレミアムモデルだが、中でも特に注目モデルである12型Windowsタブレット「ThinkPad X1 Tablet」について、開発コンセプトや採用された技術の詳しい話を聞くことができた。その様子をお届けする。

「ThinkPad X1」ファミリーは、2016年1月に米国ラスベガスで開催されたCES 2016で発表さらた製品群。正統派クラムシェルの14型モバイルノートPC「ThinkPad X1 Carbon」、ディスプレイが360度開く14型マルチモードPC「ThinkPad X1 YOGA」、そしてキーボード着脱式の12型タブレット「ThinkPad X1 Tablet」をそろえる。これに23.8型オールインワンPC「ThinkCentre X1」を加えて、「X1」ファミリーとして訴求する。

「ThinkPad X1 Tablet」は、解像度2,160×1,440ドットで、アスペクト比3:2の12型ディスプレイを搭載したタブレット。本体の厚さは8.45mm、重量や767g。
トラックポイント付きのキーボードが付属し、キーボードとあわせた状態でも厚さは13.7mm、重量は1.07kgと薄型軽量に仕上がっている。

○"Tablet"だけどマルチモードPCとしての完成度を追求

「ThinkPad X1 Tablet」の前身となったプロダクトは2つある。1つは「ThinkPad Tablet」、もう1つが「ThinkPad Helix」だ。

どちらもいくつか世代を重ねてきた製品だが、キーボードをドックやカバーという形で用意するといったことに加え、ペン入力への対応など、ビジネスツールとして優れたユーザー体験を提供すべく設計されてきた。これは「ThinkPad X1 Tablet」でも変わらない。

そのため、製品名こそ"Tablet"と付いているものの、タブレットとしてのユーセージがメインではなく、キーボードと組み合わせたクラムシェル型ノートPCとしても、高い次元で使うことができる「マルチモードPC」であるというのがレノボの主張だ。「ThinkPad X1 Tablet」のシステム設計を担当した木下秀徳氏によると、「ThinkPad X1 Tablet」の開発にあたり、「ThinkPad史上もっとも最適化されたビジネスツールであること」「ThinkPad史上もっとも拡張性を秘めたデザインであること」「ThinkPad史上もっとも斬新なユーザー体験をもたらすこと」の3つをビジョンとして掲げたという。

そしてこのビジョンを実現するために、「拡張性を持たせた新しいコンセプトデザイン」「ファンレスながら高いパフォーマンスの達成」「最適化されたシステムパッケージング」の3つについて技術的なチャレンジがあったとのことだ。


○キックスタンドによるマルチモード展開

「ThinkPad X1 Tablet」が持つ特徴としてキックスタンドがある。最近ではMicrosoftのSurfaceシリーズを筆頭に、キックスタンドを備えたタブレットタイプのPCがさまざま登場しているが、本体の中央を支点として開くものが多いが、「ThinkPad X1 Tablet」のスタンドは本体の下に支点があるタイプとなる。

これは後述するモジュラーシステムとの兼ね合いだが、「ThinkPad X1 Tablet」では機能拡張用のモジュラーを本体に装着することができる。モジュラーを装着するとディスプレイの高さが変わるが、本体の中央を支点とすると、スタンドの角度が付きすぎてしまうのだという。これを吸収するために現在のスタンドになった。また、レノボが「スタイラスモード」と呼ぶ形状にした際の安定性も上がるというメリットもあったという。

○着脱可能な3つのモジュールで機能を拡張

「ThinkPad X1 Tablet」のユニークな点として、独自のモジュール設計がある。着脱可能な「モジュール」を用意し、用途に合わせて交換することで幅広いユーザーニーズに対応するというものだ。


木下氏によると、初期のコンセプトでは本体に筒状のエリアを設け、そこにさまざまな機能を持ったモジュールを挿入して使うことを想定していたが、モジュールを使わないときにそのエリアが無駄になってしまうことから、モジュールごと着脱するアイデアが生まれたという。

用意するモジュールは、追加の内蔵バッテリとUSB 3.0やOneLink+、HDMIといったインタフェースを増設する「プロダクティビティーモジュール」、HMDIや2m先に60型の投影が可能なプロジェクタを追加する「プレゼンターモジュール」、Intel RealSense対応の3Dカメラを搭載した「3D イメージングモジュール」の3種類だ。「プロダクティビティーモジュール」は、インタフェースを増設することで、「ThinkPad X1 Tablet」をよりPCライクに使うためのモジュールだ。レノボ独自のOneLink+コネクタを搭載するため、OneLink+対応のドックにも接続することができる。

「プレゼンターモジュール」は、投射口が回転式のプロジェクターを増設できる。また、こちらにもバッテリが内蔵されているが、1セルしかないのためタブレット本体側への電源供給はできない。あくまでプロジェクタを使った分の電力消費を補うものだという。

「3D イメージングモジュール」は、Intel RealSense対応の3Dカメラを備える。
Intel RealSenseは、まだまだ対応アプリも少ないが、顔認証など今後に向けた取り組みも見据えたものとなっている。

これらのモジュールの取り付けには、「エアータイトコネクションデザイン」という方式を採用する。これはスーツケースのラッチからヒントを得たもので、フックと連動したレバーをモジュール側に搭載する。レバーを下げることでフックがスライド、本体を引き込む力がかかり、本体とモジュールの一体感を高めることができる。

「ThinkPad X1 Tablet」は、ThinkPadシリーズならではの堅牢性ももちろん維持しなくてはならない。これはスタンドやモジュールがあっても当然で、おなじみの拷問テストの基準もモジュールがある状態とない状態で変わらないという。スタンドの開閉試験も通常のクラムシェルノートPCのLCD開閉試験と同じ回数を実施。さらにスタイラスモードでユーザーが手をついた場合を想定した試験を新たに追加した。


●ファンレスでもCore mのパフォーマンスを引き出す工夫
○ファンレスでもCore mのパフォーマンスを引き出す工夫

さて、「ThinkPad X1 Tablet」は、CPUに第6世代Core mを搭載したファンレス仕様の製品だ。Core iプロセッサとファンによる冷却機構を搭載した他社製品と比べ、静粛性が高いことに加え、消費電力も抑えられる。

一方で気になるのはパフォーマンスだが、レノボが実施したベンチマークテストによると、ゲームを想定したテスト(3DMark)では、それなりに差が出るが、オフィスアプリを想定したテスト(PCMark)での差はわずかで、ファンレスながらCore mの性能を引き出している。「問いたいのは、通常の使用に問題なく、静かでガソリン(電力消費)も少ないハイブリッドカーがいいか、パフォーマンスは高いがうるさくて、ガソリン食いのスポーツカーがいいかということ」と木下氏。

ファンレスでもプロセッサのパフォーマンスを引き出す技術として、「ベイパーチャンバー」と「インテリジェントクーリング」を採用する。冷却機構としてよく使われるのがヒートパイプだが、ヒートパイプは冷却効率を上げようとすると厚みが必要になるため、薄型モデルには向いておらず、「ベイパーチャンバー」が使われている。

ThinkPad Helixでも「ベイパーチャンバー」を使ってファンレスが実現しているが、「ThinkPad X1 Tablet」では水路を最適化したほか、チャンバーの構造を2層から3層にすることで熱伝導率を上げている。

一方の「インテリジェントクーリング」は、使用している状態に応じてTDPを調節する仕組みで、タブレットとして使っているときはTDPを4.5Wで設定し、キーボードと組み合わせてノートPCとして使う場合や、モジュールを付けている場合には、TDPを上げてパフォーマンスを向上させる。


○薄さと"赤いポッチ"の両立

ThinkPad Helixでは、トラックポイントとバッテリを内蔵した「Ultrabook Pro keyboard」と、それらがなく薄さと軽さ重視の「Ultrabook keyboard」を用意していた。

これはつまり、トラックポイントと薄いキーボードの両立が難しかったということだ。しかし、ThinkPad X1 Tabletでは、できるだけ薄いキーボードとしながらもトラックポイントの搭載という大きな技術的挑戦をしている。

薄くてもそれでいてThinkPadらしい打鍵感を実現すべく、キートップの下にあるラバードームを20種類以上試作し、微調整を繰り返すことで最適なキータッチを追及。加えて、キートップが下に当たる際の衝撃を吸収して底付き感を低減するソフトランディングデザインを採用している。

トラックポイントについては、通常はモジュールをキーボードがあるベースプレートに貼り付けて固定するが、ThinkPad X1 Tabletではそれが使えない。そこでキーボードカバーの外壁に付けることで剛性を持たせている。

また、トラックポイントは高さが低くなればなるほど、感度が鈍くなってしまうが、さまざまな形状のキャップを作成。
シミュレーションやユーザーテストを繰り返し、専用のキャップを新たに開発したほか、メカとソフトウェアの両面からチューニングを施して、最適な感度設定を施したという。

○インタフェースも最新に

このほか、ThinkPad X1 Tabletでは、USB Type-CやWiGigなど最新のインタフェースを搭載している。USB Type-CはPower Deliveryに対応しているのが、この調整はかなり苦労したとのことだ。「USB Type-Cの仕様策定が遅かったことや、仕様もあやふやな部分があり、そのまま鵜呑みにしすぎると痛い目をみる」と木下氏は語る。

WiGigについてはタブレットとして使うだけではなく、PCとして使う場合、本体がどういう状態にあるかなど、さまざまな使用環境を考慮してアンテナレイアウトを決定したいう。

また、指紋リーダーも最新のタッチ式を採用。これまでよりもセキュアに指紋認証が行える。リーダーは本体のカバーと基板の間ぎりぎりのところに収めているが、ほかの部分の強度を落とすことなく入れるのに苦労したという。

○内部の様子も公開

説明会では本体を分解した様子も公開。薄型の本体に合わせて基板も相当な薄さとなっていた。

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