ご近所の「生活のサポーター」へ、街の変化に向けたローソンの挑戦
現代の生活において、コンビニエンスストアはなくてはならない存在だ。365日24時間いつでも買い物のできる店というだけでなく、公共料金の支払いやチケットの発券といった各種サービスを受けられる窓口でもあり、最近では宅配便の受け取りサービスも行うようになっている。
「生活全般をサポートして欲しいという方向へお客様のニーズが変化してきており、それに対応する形で店舗側でも提供するサービスが増えています」と語るのは、ローソン コミュニケーション本部 広報室 マネジャーの杉原弥生氏だ。
ローソンでは現在、惣菜や生鮮食品といった、従来はスーパーに行かないと購入できなかった商品を販売したり、ECサイトで購入した商品の店頭受け取りも可能にしている。これは街と消費者のニーズの変化に対応したものだという。
「震災以降、高齢者層や主婦層が増え、特に生鮮食品や惣菜へのニーズが高まりました。また地方では買い物できる場が減っており、都心部では共働き家庭の増加で買い物する時間がないという課題があります。これらに対応するためいろいろな商品を揃えた結果、スーパーの代替になるような品揃えになっている部分もあります。
今後もご近所のお店として、日々変化するお客様のニーズにお応えしていきたいと考えています」と杉原氏は語る。
○介護相談窓口つき店舗など地域の課題を解決する店舗展開
「都心部と地方といった形ではっきり色分けしているわけではありませんが、地域ごとにニーズの違いはあるため、自然と分かれている部分はあります」と杉原氏。多様なニーズに対応する中で、地域ごとの課題や個性に合わせた店舗も誕生している。
「地域によってお客様のニーズはさまざまです。そのためコンビニに求められるサービスや商品も都市部と地方とでは異なります」と杉原氏。多様なニーズに対応する中で、地域ごとの課題や個性に合わせた店舗も誕生している。
ローソンではこれまで、おなじみの青い看板を掲げた通常店舗のほかに、「美しく健康で快適な」ライフスタイルをサポートする「ナチュラルローソン」や、100円均一ショップの形態で小分けにした生鮮食品や惣菜等も扱う「ローソンストア100」といった店舗を展開してきた。最近では、ドラッグストアや調剤薬局を併設しているタイプなど、さらに多様な店舗が登場している。
そして、新たに登場したのが、介護拠点併設型店舗の「ケア(介護)ローソン」だ。
「介護用品や高齢者が必要とする食品なども扱っていますが、基本的にはローソンに介護相談窓口を併設したイメージです。ご近所の方が気軽に介護についての相談ができる窓口が今後必要になるだろうということで、2015年4月に1号店を埼玉に出店しました。その後も地元に密着した介護事業者と連携し、現在は新潟・山口・大阪にも出店し5店舗となりました。アクティブシニアから介護が必要な方も、また、そのご家族も気軽に来られる新たな生活サポートコンビニにしていきたいと考えています」と杉原氏。
地域のニーズに対応するということは、地域の課題に対応するということでもある。年間1000店舗程度を出店する中、各地域のニーズにきめ細かく対応していくため、どの店舗形態で出店するか、品揃えをどうするかといったことは細かく考えられているという。
●ラストワンマイルへの取り組み
近年ECを利用する人が増えている中、それが実店舗の売上に影響している業態もある。
しかしローソンにとっては、ECの台頭はむしろチャンスだという。
「Amazonをはじめとしたネットで注文した商品を受け取れるコンビニ受取サービスは以前から提供していて、忙しくてなかなか荷物を受け取れないという方に利用していただくことで、店舗に来ていただくきっかけにもなっています。また、地域の御用聞き的なサービスを展開して店舗の商品とともに、佐川急便の荷物もお届けするSGローソンも好評です。こうしたラスト1マイルへの取り組みも強化しています」と杉原氏は語った。
生活の支援者としてさまざまなニーズへの対応が求められ、ローソンはそれに対して迅速に対応しているように見える。しかし、サービス業全体で長く課題とされている人手不足という課題はローソンも同じだ。
「確かに人手不足は大きな課題ですが、コンビニエンスストア業界はIT化が進んでいると思います。ITやIoT、AIをどう活用するかなどが今後のカギとなります。
たとえば発注の半自動化など店舗での作業効率を見直して、店舗従業員は接客に専念できるようにするなど、人が少ない中でもきめ細やかなサービスをご提供できるようにするシステムの構築も今後は重要になります」(杉原氏)
すでにローソンでは、2015年からセミオート発注システムを導入。これはPontaカードの購買情報を活用して、お店の発注を半自動化するもの。店舗ごとの購買実績をもとに推奨発注数を提示し、店舗側の発注作業負担を軽減する。
「すでにPonta会員は7,300万人に達しています。ローソンは全国に約12,000店あり、毎日1店あたり約1,000名のお客様が来店され、そのうちの半数以上の方がカードを提示してくださいます。カードの情報からは、同じ方が何度も繰り返し購入されているのかが分かるようになるなど、これまでのPOSデータとは性質の異なる細かい分析ができるようになりました。今後もカードデータを商品開発などに活かすとともに、さらに店舗ではセミオート発注を強化し、お客様のニーズに合った品揃えを実現することで、そのマチになくてはならないお店になっていきたいと思います」(杉原氏)
また、EC荷物の店頭受け取りも年々増えていることから、荷物を一時保管する場所などについて課題が出てくることも見込まれる。
「お客様が時間を気にすることなく荷物を受け取りたいというニーズは今後も増えることが考えられます。
ローソンでは、セミオート発注により店舗の在庫も整理され保管スペースもできています。また、ローソンは他の企業がローソン店舗を受け取り拠点として活用いただけるオープンプラットフォーム戦略を進めています。いろいろな企業と組んで、お客様にとってよりよいサービスをご提供したいですね」と杉原氏は語った。
○健康を意識した商品開発で「マチの健康ステーション」へ
ローソンでは現在「1000日全員実行プロジェクト」を実行している。これは2016年からの3年間で、ローソンの存在感を強化する取り組みだ。
ローソンでは現在「1000日全員実行プロジェクト」と称して、2016年からの3年間で仕事の仕方や仕組みを変革させようとしている。
「売場力強化、商品力強化、加盟店支援強化の質を徹底的に磨いて行くという内容ですが、これは以前より取り組んできたことの延長でもあります。引き続きこれらの基本を徹底し、マチの変化へ対応することで、マチの暮らしにとってなくてはならない存在となることを目指していきたいと考えています。」と杉原氏は説明する。
また、長く掲げてきた「マチのほっとステーション」というスローガンを「マチの健康ステーション」へと一新。以前から糖質を抑えた「ブランパン」や、野菜のとれる「グリーンスムージー」などヘルシー商品を扱うコンビニエンスストアとして認知されてきたローソンだが、今後はより健康面を意識した商品強化を行うという。「今後医療費が増えて行く中で、食を扱うコンビニができることとして取り組んでいます。ブランパンは2012年の登場以来多くのリピーターがついた商品ですし、グリーンスムージーは手軽に野菜を摂りたいという方から評価をいただきヒット商品となりました。10項目の健康テーマを掲げた商品開発が進められており、このような商品から得られたノウハウも活かし、今後は、いろいろなスムージーやカロリーを抑えた食品なども出して行きます。」と語る杉原氏。
コンビニエンスストアに頼り切った食生活というと不健康なイメージがもたれがちだが、今後のローソンの取り組み次第では、健康のためにコンビニエンスストアを上手に使うという人が出てくるかもしれない。