宇宙開発秘録 - 夢敗れたロケットや衛星たち (1) 宇宙から人の目でソ連を監視せよ - 軍事宇宙ステーション「MOL」(前編)
アポロの月面着陸、火星探査機の活躍、国際宇宙ステーション――。数々の華々しい成功に彩られている宇宙開発だが、その栄光の影には、失敗の歴史が連なっている。
多くの人から望まれるもさまざまな事情により実現しなかったもの。あるいはごく少数からしか望まれず、消えるべくして消えたもの…。この連載では、そんな宇宙開発の"影"の歴史を振り返っていく。
国際宇宙ステーション(ISS)に約141日間滞在した油井亀美也宇宙飛行士が、2015年12月11日に地球に帰還した。油井さんの滞在中、ISSは宇宙飛行士の滞在開始から15周年、また最初の打ち上げから17周年を迎えた。地球上では何かと対立している米国とロシアだが、ISSの運用には影響なく、平和の象徴として今日も地球のまわりを回っている。
だが、米国とソヴィエトが対立していた1960年代。宇宙ステーションが平和の象徴としてではなく、宇宙の軍事利用の象徴として使われる可能性が存在した。
本連載の第1回では、米国が1960年代に計画していた、軍事目的の有人宇宙ステーション「MOL」(モウル)を取り上げる。
○宇宙から敵を見下ろす
冷戦の中で、米ソの間には常に緊張の糸が張りつめていた。