Cortanaがユーザーの秘書になる日 - 阿久津良和のWindows Weekly Report
もともとiPhoneで通話する機会が皆無な筆者には、デバイスに話しかけるという習慣がない。Siriも仕事で試す以上のことはしてこなかった。iPhone版のCortanaにも、さほどの期待を持っていなかったが、ある日電車で都内を移動していたところ、iPhoneから通知が送られてきた。Cortanaのテスト中に登録したリマインダーである。
以前、MicrosoftのWindows&Devices Group Cortana担当パートナーグループプログラムマネージャーのMarcus Ash氏にインタビューした際、彼は「プロアクティブな(先を見越した)情報提供がCortanaの核となる」と語っていた。その概念が、Cortanaからの通知でようやく腑に落ちた。
そもそも人の記憶は不確実である。大事な用事や思いついたアイデアも書き留めなければ、忘れてしまうことがある。そのため我々は、ToDoのようなタスクリストやメモを活用してきた。だが、それらは後で確認しなければ意味をなさない。Cortanaのリマインダーはユーザーが自らアクションを起こさなくても、忘れていた用事を思い出させてくれる。これがプロアクティブな情報提供なのだろう。
筆者はWeb版のGoogleカレンダーでスケジュールを管理し、同期したiPhoneアプリで参照してきた。日々の執筆活動もGoogleカレンダーのタスク機能を使用している。Googleカレンダーに統一することで、スケジュールとタスクを簡単に確認できるからだ。
Microsoftは2015年6月にToDoアプリのWunderlistを買収したが、現時点でMicrosoftからタスクアプリケーションがリリースされる気配はない。だが、WunderlistがWindows 10のカレンダー(Outlook.com)と融合すれば、Cortanaが次の予定やその日の作業を教えてくれるため、日々のスケジュール管理は容易になるはずである。だが、長年使い込んだツールから移行するには誰しも踏ん切りが必要だろう。残念ながら、Cortanaのリマインダーが面倒な移行作業を経てまで、Googleから乗り換えるほどのモチベーションを与えてくれるとは言い難い。
その一方で、ここ数年はGmailにしてもGoogleカレンダーにしても「使いやすくなった」という印象を持てないのが筆者の正直な感想だ。
ビジネスツールとして停滞の兆しを見せるGoogleと、後を追うMicrosoft。ユーザーがどちらを選ぶかは、最終的に普段から身につけているスマートフォン次第だが、Microsoftが自社プラットフォームに閉じこもらない姿勢を見せてから、選択肢は大きく広がっている。
普段使いのスマートフォンはiOSもしくはAndroid搭載デバイスでも、使うアプリケーションはMicrosoft製に統一することも可能になった。このままCortanaが成長し、各人が必要とする機能を備えた時は、頼りになる秘書的な存在になりそうだ。その時を待つために本稿を書き終えたら、GoogleカレンダーのデータをOutlook.comにインポートしてみようと思う。
阿久津良和(Cactus)
提供元の記事
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