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真の狙いはゲーム以外に? スマホメーカーはVRで何を目指すのか

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真の狙いはゲーム以外に? スマホメーカーはVRで何を目指すのか
●モバイルイベントでは"VR"が話題に
スマートフォンでVR(仮想現実)を提供しようという動きが急加速している。VRの市場自体がまだ立ち上がっていない段階にありながら、スマートフォンメーカーは何を見据えてVRに力を入れ始めているのだろうか。

○モバイルのイベントでVRが注目を集める

2月22日より、スペイン・バルセロナで開催されていた、携帯電話・モバイルに関する世界的な見本市イベント「Mobile World Congress」(MWC)。そのMWCにおいて、今年最も話題になったテーマを1つ挙げるならば、それは「VR」ということになるだろう。

先にも触れた通り、MWCはあくまでモバイルに関するイベントだ。にもかかわらず今年のMWCにおいては、スマートフォンメーカーを中心として、VRに関する新製品や発表が相次いだのだ。中でも、そのことを象徴しているのがサムスン電子。同社は今回のMWCに合わせて、新しいスマートフォン「Galaxy S7/S7 edge」を発表したのだが、その発表会イベントでの主役は、スマートフォンの新機種よりもVRがメイン、という印象であった。


というのも、発表会会場にはサムスンが発売しているVRヘッドマウントディスプレイ(HMD)の「Gear VR」が全席に設置。発表会のイベント中には随所でヘッドマウントディスプレイを用いたデモが実施されたほか、会場にはフェイスブックCEOのマーク・ザッカーバーグ氏がサプライズゲストとして登場。VRに向けた取り組みや可能性について語るなど、VR一色というべき内容となっていたのである。

VRに関する発表をしたのはサムスンだけではない。LGエレクトロニクスも、同社の新機種「G5」の発表に合わせて、G5に接続して利用できるVR HMD「LG 360 VR」を発表。Gear VRのようにスマートフォンをHMDに装着するのではなく、ケーブルでスマートフォンとHMDを接続して利用するなど、VRを手軽に体験できる点に力が入れられている。

また、「ALCATEL ONETOUCH」ブランド(今後「alcatel」にブランド変更予定)で日本に進出しているTCLコミュニケーションも、新機種「IDOL 4S」のパッケージがVRゴーグルとして利用できる仕組みを用意。スマートフォンを用いて簡易的なVRを実現する、グーグルの「Cardboard」プラットフォームを活用しており、Cardboardのコンテンツが利用できるのが特長となっている。


MWCではこの他にも、いくつかのスマートフォンメーカーが、HMDを用いたVRに関する発表や展示を実施していた。モバイルに関するイベントで、まだ市場自体が立ち上がったとは言い難く、しかもどちらかといえばモバイルとは縁が薄いように思えるVRが、これだけ大きなテーマとなったことには驚きがある。

●スマホVRは本格VRとは違う?
○スマートフォンのVRは良質な体験を提供できない?

HMDを用いた没入感のあるVRは、元々ゲームの分野で大きな注目を集めているものだ。フェイスブック傘下となったOculus VR社の「Oculus Rift」や、ソニー・コンピュータエンタテインメントの「PlayStation VR」、そしてHTCの「HTC VIVE」などが、ゲームの分野で高い注目を集めているVR HMDの代表的存在といえるだろう。

これらのVR HMDが注力しているポイントは、高精細なCGを用いた臨場感のあるVR体験を、快適な形で提供することである。というのも、VR HMDは視界をディスプレイが完全に覆い、そこに映し出された世界がユーザーの視界のすべてとなる。それだけに、非常にリアルなVR体験を提供できるメリットがあるのは確かだが、一方でいくつかの問題も抱えることとなるのだ。

代表的な問題として挙げられるのが"VR酔い"と呼ばれるもの。
VR HMDは実際の動きと、ディスプレイに映し出される映像の動きにずれがあると、脳が違和感を引き起こして乗り物酔いのような症状を起こしやすいのである。そうしたことから快適なVR体験を与えるには、VR HMDの動きを正確に、かつ細かく検出するセンサー技術と、それに合わせてグラフィックを素早く描画する性能が求められることから、高いハード性能が求められるわけだ。

だが、高いハード性能が必要なぶん、高額になりがちでありユーザー体験の幅が狭いのが、現在のVRの弱みにもなっている。実際、一般発売が決まっているOculus Riftは599ドル、日本では送料込みで94,600円となっているほか、HTC VIVEも799ドル、日本では112,000円と決して安いとはいえない額だ。しかも、これらのVR HMDはパソコンに接続して初めて利用できる上、そのパソコンにも高い処理能力が求められるため、さらなる高額な投資が求められる。個人が容易に手を出せるものではないことが、理解できるのではないだろうか。

裏を返せば、そうした高い性能がなければ、仮想空間を用いた快適なVR体験を提供することはできないし、スマートフォンを用いたVR環境が、そこまでの性能を実現できているわけではない。実際、MWC会場でいくつかのHMDを用いてVRデモを試してみたが、性能やコンテンツ共に、Oculus RiftやHTC VIVEのVR体験とは大きく異なるものだと感じた。


良質なVR体験を提供するには高性能なハードが必要だが、現状のスマートフォンではそれが難しい。なのであれば、スマートフォンメーカー各社は性能の劣るVR環境で、一体何を提供しようとしているのだろうか。

●スマホメーカーはVRで何を目指すのか
○360度カメラと動画が普及の鍵を握るか

そのヒントとなるのが、先のサムスンの新製品発表イベントに、ザッカーバーグ氏が登壇したことにあるといえよう。ザッカーバーグ氏はその檀上で、「VRは次のプラットフォームになる」と話し、フェイスブックでは今後、ソーシャルVRアプリに力を入れていくことを打ち出している。

そもそもフェイスブックがOculus VRを買収して傘下に収めたのは、スマートフォンの次となる新しいプラットフォームをVRに見出したためとも言われている。フェイスブックはVR HMDを、ゲームなどのコンテンツを楽しむプラットフォームとしてだけでなく、新しいコミュニケーション体験を実現するプラットフォームと捉え、システムやデバイスの開発に投資を進めているわけだ。

またOculus VRは、自社でHMDを手掛けるだけでなく、サムスンと共同で、スマートフォンを用いたVR HMDのGear VRも開発している。このことからは、仮想空間での良質なVR体験を提供するだけでなく、普及しているスマートフォンを活用することで、より幅広い層に対してVR体験を提供することを狙っていると見ることができる。


そして、現状のスマートフォンを活用したVRを広める鍵として、サムスンやフェイスブック、そして他の多くのメーカーが期待しているのが"動画"ではないかと考えられる。実際、サムスンやLGは今回、HMDだけでなく360度撮影可能なカメラも発表しており、カメラとスマートフォン、そしてVR HMDを用いたVR体験の提供に力を入れようとしている。またFacebookも、昨年9月より360度動画の投稿を可能にするなど、VRで動画を楽しめる仕組みの構築に力を入れている。

ゲームなどのインタラクティブなコンテンツを動作させるには確かに高いハード性能が必要だが、360度カメラで撮影した動画の再生であれば、そこまでの性能は必要ない。それでいて、360度カメラによる映像をVRで再生すれば、あたかもその場にいるかのような臨場感ある体験を手軽に得ることができ、距離や時間を超えた共通体験の実現に一歩近づくこととなる。そうした360度動画がSNSに広まってくれば、VR HMDがコミュニケーションツールの1つとして認識され、広まっていくと考えられよう。

もしVRがゲームの範囲内でとどまってしまえば、その広がりは限定的なものとなってしまう。スマートフォンという誰でも持っているデバイスで、しかも日常的なコミュニケーション用途を主体としてVRが利用されるようになれば、その広がりは非常に大きなものとなり、可能性も大きく広がることになるだろう。
VRの可能性を広げる上でも、スマートフォンを用いたVRがユーザーにどのような体験を与え、それが受け入れられるかどうかが大いに注目されるところではないだろうか。

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