Appleスペシャルイベント招待状から読み解く二つの重要なこと - 21日開催
米Appleは3月10日(現地時間)、報道関係者に向けて3月21日午前10時(日本時間で22日午前2時)より米カリフォルニア州クパチーノにある本社キャンパスにて開催されるスペシャルイベントの招待状を送付した。今回はその発表内容について、既報のものも含めて整理してみる。
○トピックの一つ目は新キャンパス建設の進捗報告
今回の発表会についてはYoichi Yamashita氏が初報で解説しているように、現在のApple本社キャンパス(1 Infinite Loop)で開催される最後のスペシャルイベントになる可能性が高い。現在クパチーノ市内に建設中の新本社キャンパスの完成が視野に入りつつあり、メディア向けの事前お披露目を含めて主要なイベント開催はすべて新キャンパスへと移るとみられるからだ。この新キャンパスの完成は2016年末~2017年初頭といわれており、おそらく年内には何らかの形で完成間近のキャンパスが公開されると予想される。
筆者は今回のスペシャルイベントで新製品以外に二つの重要なアナウンスがAppleから行われると考えている。その一つがこの新キャンパス建設の進捗で、招待状にある「Let us loop you in.」には、現在の本社キャンパスの住所である「"Infinite Loop"にご招待」のようなニュアンスではないかと思われる。本社最後のイベントを強調する意味合いではないだろうか。
会場については、おそらく同キャンパス内のTown Hall(4 Infinite Loop)が用いられると思われる。Town Hallは会場としては100名強程度の収容能力でそれほど大きくないが、Appleにとって特に重要、あるいは"難しい"発表や説明を行う場所として、イベント規模が年々拡大傾向にあった新製品発表のスペシャルイベントにおいてもたびたび使われる機会があった。過去には「iPhoneを持つ指の位置によって短絡が発生してアンテナの接続状態が悪くなる」という「Antennagate (アンテナゲート)」の説明がTown Hallで行われたことが知られている。iPhone 4の登場後に大きく騒がれてAppleが追加説明に追われた事案だが、「招待するメディア関係者の人数を絞ってきちんと追加報道を行ってもらう」という場面においてTown Hallは適している。Appleがスペシャルイベントに他会場を借りる場合、なるべく広く報じてもらうために世界中から大人数の報道関係者を招致する関係上、広い会場を選択する必要があった。ただし、これでは報道内容について質を維持できるとは限らず、「信頼できる人を呼びたい」という意図があるのかもしれない。実際、筆者が知る範囲では日本国内のメディア関係者は2~3名しか呼ばれておらず、これは9月のスペシャルイベントと比べた場合に3分の1程度だ。それだけ重要な発表でもあるのだろう。
●重要なトピック二つ目は、IT業界で今最も熱いこの件
○二つ目の重要なトピックは「Apple VS. FBI」
では、人数を絞ってまでTown Hallで行われる重要なアナウンスの2つめはどのようなものかだが、昨今大きく騒がれているFBIとAppleの闘争に関して、Apple側の公式見解が改めて語られるというものだ。昨年2015年12月に米カリフォルニア州ロサンゼルス近郊のサンバーナーディーノ(San Bernardino)において発生した銃乱射事件で犯人が所持していたiPhoneのロック解除を巡り、FBIがAppleに対しロック解除のためのソフトウェアを提供(もしくは仕組みとして導入)するよう要求しており、iPhoneの安全性を脅かすものとしてAppleが真っ向から反対の姿勢を示している。いまのところ先行きは不透明だが、技術系企業や関係者を中心にAppleに賛同の意を示している者も少なくなく、IT業界においていま最もホットなトピックといえるかもしれない。
全世界でテロの脅威が高まるなか、この不安を背景にAppleを含むデバイスベンダーに譲歩を迫るFBIと、自社の信頼性と世界展開における製品戦略に大きな影響を及ぼすことになるAppleという構図だが、この難しい両者の闘争に関して、次は3月22日に公聴会が開かれる予定だ。いうまでもなく、これは今回のスペシャルイベント翌日にあたる。聞き取りを行うためにApple社内の複数の関係者に22日の召喚命令が出ているといわれ、これを前にApple CEOのTim Cook氏が何らかの意見表明を行うことも考えられる。
両者は無関係のようにも見えるが、「21日」という設定は今回の話題にリンクしているという意見もある。実際、Appleは2月上旬の段階では3月15日にスペシャルイベントをセットしており、実際に筆者も複数の関係者からの話で元々の開催日が15日だったことを把握している。
少なくとも2月22日の週までは3月15日開催で準備が進んでおり、同週後半(具体的には2月24日前後)になり急に3月22日への延期が伝達された。理由は不明だが、FBIとの闘争に関してこの時期に情勢が大きく動いており(例えばBill Gates氏がApple支持を表明したなど)、Apple側が何らかの意図をもって21日という日付を選んだ可能性がある。
○発表内容については当初の予想通り
製品発表とは直接関係ない話題が続いたが、当日発表されるのは「4インチ版iPhone」と「新型iPad」の2製品でほぼ間違いないだろう。詳細については過去のレポートと、その追加レポートを参照してほしいが、筆者が把握している各所の動きからみてiPhoneとiPad新製品であると考えていい。このほか、Apple Watch関連で若干のアップデートが行われる可能性がある。製品の発売時期については、スペシャルイベント延期の影響を受けて、18日から1週間後の25日にずれ込んだと考えていいだろう。
いずれにせよ、新製品以外にも注目ポイントがあるということで、22日午前2時よりスタートするスペシャルイベントを楽しみにしてほしい。今回はTown Hallにしては珍しく現地中継がオンライン経由で行われるとのことで、対応環境を持つユーザーで、翌日の行動に差し支えのない人はぜひチェックしてみるといいだろう。