LINEニュースに新機能 - LINEの狙いは? ユーザーにはどんなメリットが?
LINEは17日、ユーザーとニュースの接点を増やす5つの新たな試みを発表した。数多くのポータルサイトが存在するなか、LINEニュースではどのような特色を打ち出していくのだろうか。また、利用者にはどのようなメリットがあるのだろうか。都内で開催された記者説明会で、担当者がその狙いについて語った。
LINEでは「LINEニュース/ LINEアカウントメディアプラットフォーム」の運営を通じて、ユーザーにニュースを配信している。同社が今回、そのプラットフォームにおいて取り組む新たな試みは、1)パーソナライズ配信機能「FOR YOU」、2)LINEタイムライン最上部へのニュース枠の新設、3)計22メディアの新規参画、4)「友だち限定記事」機能、5)「分析ツールの強化」の5つだ。まずはこの中で、解説が必要なものをピックアップして紹介していこう。
○読みたいニュースを配信
パーソナライズ配信機能「FOR YOU」は、LINEユーザーの属性・関心軸を推計して、個人に最適化したニュースをレコメンドするもの。
例えばポータルサイトを訪れたとき、関心のない見出しが並んでいたとしたら? 途端に興味はそがれ、ニュースを読む気持ちは萎えてしまうことだろう。FOR YOUは、そうした読者とメディアのミスマッチを未然に防ぐ機能となっている。
では、どのようにユーザーの関心軸を推計するのだろうか。同社メディア担当の島村武志氏によれば、使用したスタンプ、利用しているアプリ、興味のあるコンテンツのほか、どんな公式アカウントをフォローしているか、過去にどのような記事を閲覧したか、といった傾向をもとに分析するという。
ここで当然ながら、セキュリティが確保されているのか気になる。何しろユーザーは、友人とのトーク内容はもとより、クレジットカード情報を含むあらゆる個人情報をも、LINEに預けている。記事のレコメンド機能のため、個人の主義・趣向・ステータスが第三者に漏れるようなことがあっては困る。その点、島村氏は個人情報がしっかり守られていることを改めて説明した。
例えばLINEのトーク内容をキーワードで抽出して参考にするようなことは、一切ないという。
では実際には、どのような仕組みでニュース記事がレコメンドされるのだろうか。”企業秘密”とのことで詳細はぼかされたが、おそらく(個人が特定できない範囲で)ユーザーには年齢、性別などの属性と、関心のあるメタ情報が順次付与されていくようだ。そのキーワードを組み合わせることで、個々人に最適なニュース記事を導き出しているものと思われる。
●ユーザーのメリットは?
○”鍵付き記事”も配信可能に
「友だち限定記事」は、該当メディアの公式アカウントを友だちに登録すると、記事全文が閲覧できるという、いわゆる”鍵付き記事”の配信を可能にするもの。島村氏は、同機能により「ニュースメディアとユーザーのエンゲージメント(engagement)を高められる」と解説する。ここでいうエンゲージメントとは、親密さ、結びつきという意味。友だちになったメディアから鍵付きの新着ニュースが配信されれば、確かに嬉しいし、読みたくもなる。
またメディアに愛着が沸けば、購読率も高まるだろう。なおLINEでは「友だち限定記事」を発展させた形で、将来的には「課金記事」も実現させたいようだ。
「分析ツールの強化」は参画メディア向けに提供される、ユーザー満足度をフィードバックする試み。このユーザー満足度は、記事の閲覧時間、接触回数などを総合的に勘案して導き出されるという。島村氏は「長く愛される媒体になるための手助けになりたい」と解説した。
○LINEの勝算と狙い
当日の説明会では、地方紙や専門媒体などを含む22のメディアが新たに参画することも発表された。これにより、ユーザーは全60メディアのニュースをLINEで閲覧できるようになる。同社ではこれからもメディア各社と連携し、プラットフォームのさらなる拡大を図っていくとしている。
ところで、市場にはすでに数多くのポータルサイトが存在している。LINEニュースでは今後、どのような特色を打ち出していくつもりだろうか。
ここで話は少々さかのぼる。LINEがニュース事業に乗り出した時期は、決して早くなかった。いわば後発ながらYahoo! Japan、SmartNews、グノシー、antennaといったポータルサイトに競合できた理由は、どこにあるのだろうか。本来であればポータルサイトを訪れるのは、ニュースに関心のある利用者。購読者は限られているため、競合サイトによるパイの奪い合いは避けられず、開始時期が遅ければそれだけシェア争いも不利になる。ところがLINEニュースでは、その顧客基盤ゆえに、ニュースに関心のない利用者をも取り込むことが可能だった。
同社によれば、これまであまりニュースに接触してこなかった若年層を取り込み、ニュースサイトに誘導することに成功しているという。
これがLINEニュースの強みで、同社がポータルサイトを運営する意義とも言える。従来なら接触しにくかった属性の読者へニュースを届けることができるとあれば、今後も参画するメディアは増え続けるだろう。配信できるニュースが増えれば、利用者により最適な情報を届けられるようになる。この好循環が、今後もプラットフォームの成長を促していくことは想像に難くない。もちろん、これは利用者のメリットにもつながっている。これまでなら能動的に調べなければ知り得なかった情報が、LINEニュースなら受動的に得られるわけだ。
ちなみに過去の閲覧履歴をもとに、関心のありそうなニュースをレコメンドする機能自体は新しいものではない。
繰り返しになるが、利用しているアプリ、興味のあるコンテンツ、どんな公式アカウントをフォローしているか、といった情報を活かせる点が、従来のポータルサイトでは実現し得なかった、LINEニュースならではの強みになっていることは言うまでもないだろう。日常生活のインフラとして、利用者には欠かせないツールとなりつつあるLINE。ニュース配信の分野においても、その存在感を増してきている。