席料なし! 渋谷とは少し違う表参道ヒルズ「森の図書室」に行ってきた
東京・表参道に、誰でも使える"本棚"ができた。好きな本を手に取って読み、ゆっくりコーヒーもビールもワインも飲めて、スイーツも軽食も食べられる。読み切れない本は無料で借りて持ち帰れる……。リニューアルを進める表参道ヒルズ(東京都渋谷区)の地下3階に「森の図書室」が生み出したのは、そんな空間だ。
○誰でも入れるオープンな空間に
3月18日にオープンを迎えた「森の図書室」は、開館10周年を記念して計41店舗のリニューアルを進める表参道ヒルズの本館地下3階にオープン。2014年4月から営業している渋谷区円山町の店舗に続く2店目となる。
渋谷の「森の図書室」は有料の会員制(年間1万円)で、非会員は飲食代に加えて500円の席料がかかるシステムとなっている。今回オープンした表参道ヒルズの「森の図書室」は、席料を取らずに自由に出入りできるシステムを採用。
飲食代以外に料金はかからず、店舗も仕切りが少なくオープンなつくりとなっている。
○いつ来ても新鮮な本棚
本棚にはジャンルもさまざまな本がずらり。店内で読むのはもちろん、一時預かり金を払うことで、最大1カ月間無料で借りることもできる。
棚を眺めていて気づくのは、本の並びにほとんど規則性がないことだ。ハードボイルド小説の隣に子ども向けの絵本が出現することもあれば、思想系の評論のすぐそばに料理雑誌が置いてある一角もある。この無秩序な陳列は、利用者とさまざまな本との偶然の出会いを創出するために、「森の図書室」があえて行っているものだという。
また、利用者が本を取り出したり戻したりすることで、それぞれの位置は微妙に変わり続けていく。本の入れ替わりも順次行われるため、いつきても新鮮な本棚を訪れ、いつもと違う本に出会うことができるのだ。
次のページでは、"物語"を持つ飲食メニューについて紹介する。(→次ページはこちら)
●"物語"を持つドリンクとフード
○テイクアウトメニューも登場
店内で楽しめる飲食メニューにも注目したい。一部ドリンクでは、渋谷店にはない新メニューを導入した。生のクラフトビール(700円~)を常に3種類提供するほか、日本酒(700円)の提供も開始する。
ノンアルコールドリンクでは、テイクアウトにも対応する紅茶とコーヒー(ともに600円)をホット・アイスともにメニューに追加。中でも紅茶は、同店だけのオリジナルブレンドだという。
ちなみに、ドリンクメニューを1つオーダーするごとにオリジナルのコースターが1枚もらえる。コースターは本にちなんだデザインとなっており、裏面にはオーナーによるその本の感想文がびっしり。
渋谷店では6種類の展開だったが、表参道ヒルズ店では24種類を用意。もらえるコースターの種類はランダムだが、1枚(100円)・6枚セット(500円)・24枚セット+オリジナルステッカー2枚(2,000円)での購入も可能だ。
○メニューブックがすごい!
席数は、併設のカウンター席など計32席。席についてまず驚くのは、80ページ以上あるオリジナルのメニューブックだ。とにかくものすごい力の入れようで、どうものすごいかと言うと、全てのフード・ドリンクメニューに1ページずつが割り当てられ、それぞれのメニューにちなんだ本が紹介されている。
本の紹介文もオーナーオリジナルで、1冊1冊への愛を感じる内容だ。時間に余裕がある人は、目移りしてしまう本棚に行く前に、じっくり腰を据えてこのメニューブックを読みながらオーダーするものを決めてほしい。
フードメニューとしては、「自家製ピクルス」(400円)、「オイルサーディン丼」(1,100円)、「チョコケーキ」(600円)、「シフォンケーキ」(600円)、「パパの好きなキッシュ」(600円)など。
「パパの好きなキッシュ」というメニュー名は一見風変わりだが、ある小説のシーンに由来したネーミングとなっている。その作品を読んでいれば味わいもひとしお。自分の好きな作品にちなんだメニューがあると、思わずオーダーしたくなってしまう。
なお、同店の営業時間は11:00~21:00(日曜日は~20:00)で、定休日等は表参道ヒルズの休館日に準じる。渋谷店と比べて非常に開放的なつくりの同店は、買い物の途中にふらっと本を読みに立ち寄りたくなってしまうような魅力に満ちていた。"店舗"や"施設"というより、表参道ヒルズの中に開かれたひとつの"本棚"のような空間だ。たくさんの本と、物語を持つ飲食物に囲まれて、昼も夜も幸せな時間を過ごせそう。
※価格は全て税別